守っているのは世界の運命
「クラウド、ありがと!助けに来てくれて」
「いや、遅くなって悪かった。大丈夫だったか?」
「うん。ちょっと厄介な兵器に追いかけられたけど、皆で何とかした!そっち、お坊ちゃんは?」
「悪いな、逃げられた」
「そっか。全然!クラウドが無事ならOKだよ!」
神羅ビルを脱出したあたしたちはハイウェイを駆け抜けていた。
クラウドはルーファウスにトドメを刺せなかったと言う。
でもこうして無事に合流して脱出出来たんだから大成功でしょ。
「ほんと、無事でよかった」
「ナマエ…」
きゅっ…と腰に抱き着いた。
どさくさである。
いやでもこれが一番安定はするんだもん!
クラウドも「掴まっててくれ」って言ってくれたし!
それならお言葉に甘えさせていただきますともって話だろ!
ああ、正直すっごい幸せだ。
さっき、ハイデッカー達を蹴散らしたと時はバタバタしてたから余裕なかったけど、今改めてみると幸せすぎる。
クラウドのバイクの後ろ。
あたしはその夢のシチュエーションを密かにぎゅっと噛みしめていた。
「そういえば、チーム分け、はじめて一緒だね」
「ああ、そうだな」
「あ、覚えてた?」
「バイクとパラシュートだろ」
「ふふっ、うん!」
何気なく振った話。
クラウドは覚えてくれていた。
話したのは前に一緒に上の七番街に言った時。
あの時、何度か二手に分かれることがあったけど、あたしとクラウドはことごとく別チームだったんだよね。
縁無いね〜なんて、あたしはその時笑ってたっけ。
だから今は、待望の同じチームなんだよねー!
まあでも、そんな幸せタイムも長くは続かない。
いや、あんま浮かれてていい状況じゃないってのは勿論わかってるんだけどさ。
「おいおいおいおい、なんだよあれ!」
その時、トラックの荷台に乗るバレットがそう叫んだのが聞こえた。
バレットが見てるのは、後方。
だからあたしたちも後ろに振り返った。
そこにあるのは、今脱出した神羅ビル。
でもそれを見ると、すぐに異変に気が付いた。
「クラウド…あれ」
「ああ」
クラウドはバイクを止めた。
トラックも止まり、皆も降りてくる。
あたしとクラウドもバイクを降りて、その異様な光景を見上げた。
そこにあった光景…。
それは神羅ビルを埋め尽くすように覆い囲う…大量のフィーラー達の渦だった。
「今までで一番…沢山…」
あたしは呆然と呟いた。
今までも大量にフィーラーが発生したことはある。
でも、そのどの時よりも比べ物にならない。
あの高い高い神羅ビルが、すっぽりと覆い隠れてしまう数。
それは誰がどう見ても異様な光景としか言いようが無かった。
「ウェッジは巻き込まれてねえだろうな」
「無事、だといいけど…」
バレットやティファはさっきビルの中で手助けしてくれたウェッジの身を案じた。
確かにあんな様子だと、ビルの中の方もどうなってしまってるんだろう。
中には入りこんでないと良いんだけど…。
そうして見ていると、その時ぴくりとレッドが何かに反応した。
「来るぞ」
それを聞いて気が付いた。
来る。
それは神羅ビルからの追っ手だ。
かすかに聞こえたバイク音。
「逃げるぞ」
クラウドが声を掛ければ皆トラックに戻っていく。
あたしもすぐバイクに戻り、クラウドはエンジンを掛けた。
「ナマエ」
「わかってる!待ってましたってくらいだよ!」
「ああ、頼む」
あたしがバイクに乗っているのはクラウドと一緒に追っ手を対処する為だ。
出番到来!腕が鳴るね!
「あたし、魔法メインでいくね。近づかれたらそっちも対処するけど」
「ああ、それでいい。基本、周りは俺がやる。接近してくる数を減らしてくれるだけでだいぶ助かる」
「了解!」
大まかな分担をチャチャっと決める。
そうこうしていれば追っ手も近づいてくる。
ティファが「エンジンが悲鳴あげてる!」なんて叫んでた。
トラックの方は今が全力スピードっぽい。
まああっちはあっちでバレットとレッドが見てくれるとは思うけど、なるべく近づけさせないようにしなくちゃ。
「貴様ら!逃げられると思うなよ!」
バイク兵がこちらに叫んでくる。
さて、じゃあやりますか!
そうしてあたしたちは追いかけてくるバイク兵達を蹴散らしながら走った。
「はっ!」
「クラウド、ナイス!」
ガンッ、とクラウドが近づいたバイクを仕留める。
ある程度は蹴散らせただろうか。
ちょっと落ち着いた?
そんなことを思った。
でも実際そうでもないらしい。
「ただちに車両を停止しろ!停止しなければ容赦はしない!」
後ろからスピーカーを通したような声がした。
振り向けば今度はトラックが追いかけてきていた。
その周りにはまたバイクもいる。
うわあ…またゴッツイの来たなあ。
まああんなバイク兵数台で終わるとは勿論思ってなかったけど。
「クラウド、トラックに近付いて!バイク兵はあたしが見るよ。クラウドはトラックをそのまま壊して!」
「わかった」
トラックはスピードを上げてティファたちのトラックに体当たりをしようとしていた。
でも、そんなことはさせない。
クラウドもスピードを上げて一気に近づき剣をぶつける。
あたしはその邪魔をさせないように周りにいるバイク兵に魔法を撃ち続けた。
「はあッ!」
ガンッ!!
クラウドがまた一撃を叩きつけた時、敵トラックがボッと火を噴いた。
どうやら部品の一部がショートしたらしい。
ちょっと動きが鈍くなった。
でも、あまり安心している余裕はない。
「クラウド」
「ああ」
あたしが先を指差せば、クラウドもわかってると頷いた。
進む先にあったモノ。
それは道を塞ぐバリケードだった。
どうやら先回りされていたらしい。
はあ…道の端から端までびっしり塞がれてるや。
「ナマエ、掴まってろ」
「え?」
クラウドはいつものトーンで言った。
なんか、クラウド凄く冷静?
まるでこんなの大したことないって言ってるみたいに。
まあ、掴まれと言うなら素直に従う。
あたしはぎゅっとクラウドの腰に抱き着いた。
するとそれを確認したクラウドは、グンッとアクセルを全開にした。
その理由はその勢いを剣に乗せる為。
クラウドは勢いを乗せた剣をさっきの敵トラックのタイヤへと引っ掛ける。
するとトラックは見事に引っくり返り、そのままバリケードに突っ込んでいった。
「わ、さすが!」
一瞬で道は開けた。
クラウドのおかげでなんなくあたしたちはバリケードを突破することが出来た。
そのままトンネルに突入する。
でも、そのトンネルにも神羅側は先回りして仕掛けをしていたらしい。
「罠だ!!」
それにいち早く気が付いたクラウドが叫ぶ。
その瞬間、ボンッとトンネルの天井が爆発した。
「くそったれええ!!!」
天井に仕掛けられていた爆弾。
バレットが天井を撃ってそれを壊していったけど、でもすべてを破壊するなんてのは無理だ。
そう思った時、ふわっと頭上を黒い何かが横切った。
「えっ…」
見上げたそれは、フィーラーだった。
フィーラーが横切ると、爆弾は作動しなかった。
そのままあたしたちは無事にトンネルを抜けきることが出来る。
フィーラー、あたしたちを助けてくれた…?
でも、それを考えている余裕はない。
トンネルを抜けたことで、今度は空からヘリの追撃が始まった。
「上は俺がやる!援護頼んだぞ!!」
ヘリを見たバレットはそう言って上を撃ちはじめた。
横からは相変わらずバイク兵が追って来てる。
あたしとクラウドはバレットの邪魔をさせないようにそのバイク兵を蹴散らし続けた。
「いい加減落ちやがれ!!」
ある程度バイク兵が片付いたところで、バレットは隙をついてヘビーショットを放った。
そしてそれは見事ヘリに直撃する。
「やったか!?」
ヘリからは煙が出て、少しだけ下降した。
でも、流石は神羅製の兵器。なかなかしぶとい。
ヘリは落ちながらも搭載されたマシンガンをこちらに撃ってきた。
ああもう、鬱陶しい!
そう思った時、あたしは前方に台があるのを見つけた。
「クラウド、あれ使えそう!!」
「ああ!」
言えばクラウドも同じことを考えていたらしい。
あたしはまたクラウドの腰にぐっとしがみ付く。
クラウドはまたアクセルを全開にして台に向かって一気に走り出した。
「はああッ!!」
台に乗り上げたバイクはそのまま宙へ浮く。
それは下降したヘリに十分届く高さ。
クラウドは思いっきり剣を振り、ヘリのプロペラ部分を切り落として見せた。
「やった!…って」
目論見は成功した。
でも、そうしてヘリが落ちた先はティファ達のトラックの前。
ティファは急いでハンドルを切ったけど、とてもじゃないけど間に合わない。
「きゃ!!」
「うわああっ!!」
バイクが地に降りたと同時に聞こえた爆発と皆の悲鳴。
「っ…!」
「皆…っ!」
クラウドとあたしは慌てて振り返った。
上がる真っ赤な炎…。
でもそれは一瞬にしてフッとその場から消え、何事も無いトラックの姿が現れた。
「無事か?」
「うん」
クラウドがスピードを落としトラックに並んで声を掛ければエアリスが窓からコクンと頷いてくれた。
エアリス、ティファ、バレット、レッド…全員、ちゃんと無事。
あたしも自分の目でそれを確認して、ホッと息をついた。
そして、宙を見上げる。
「また、助けてくれたの…?」
そこには皆を助けてくれた正体…フィーラーがふわりふわりと漂っていたから。
「俺ら、愛されてんのか?」
「フィーラーが守っているのは我々では無い。この世界の運命だ」
バレットとレッドの会話を聞く。
もう、ここにきて何度も助けてくれているフィーラー。
でもそれはあたしたちを助けているわけじゃなくて、行動は全て世界の運命の為…。
あたしたちを助けることが、世界の運命に繋がるの…?
あたしは、自分がそんな大層な人間じゃないって知ってるよ。
だから、それは途方もなさすぎて…。
そう言われてもピンとこない…それが、今のあたしの正直な感想だった。
To be continued
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