君が来るまで



クラウドはひとり、その場を去るセフィロスを追いかけていた。

クラウドの事も心配だし、アバランチのヘリももう上空を飛んでいるはず。
だからあたしたちもクラウドを追い、再び屋上に出ることにした。





「クラウド!」





クラウドは屋上の奥の方にいた。
だから姿を見つけたあたしは気づいてもらうように彼を呼んで手を振った。

するとクラウドはこちらに駆け寄って来てくれたので、あたしたちの方からも駆け寄り全員合流した。





「大丈夫なのか?」

「おう。で、奴は?」

「…逃げられた」





クラウドは刺されたバレットの調子を聞きつつ、少し悔しそうにセフィロスを逃したことを教えてくれた。

逃がしてしまったならどうしようもない。
詳しい事はわからないけど、今これ以上深追いしても仕方がない気がするし…。

とにかく目的だった屋上まで来られたのだから、今はもう帰る事だけを考えたい。





「俺たちもとっとと逃げようぜ」





バレットはそう言って空を見上げた。

そこにはバラバラ…というプロペラのヘリの音。
ウェッジが頭を下げて頼んでくれたと言うアバランチのヘリが上空を飛んでいた。

結構ほっとしてた。
だけど次の瞬間、その安心は一気に吹き飛んだ。



ドォン…!!!



響いた爆音。その時、ヘリが銃撃された。
プロペラから火花と煙を散らしたヘリはバランスを失い落下していく。

嘘…!なんで…!

そう思い空を見渡せば、そこにはもう一機…神羅のヘリが飛んでいるのが見えた。

アレに、墜とされた…。





「…残念だ」





呆然としていると、咄嗟に状況を判断したクラウドが短くそう言いその場を引き返して行った。

そうだ…ここでボーっとしてても、もうどうしようもない。事態は一刻を争う…。
クラウドのおかげでハッとして、あたしたちも彼を追うようにその場を離れることにした。

今銃撃してきたヘリは、屋上に着陸する。

見ていればそこから降りてきたのは、数人の兵士と真っ白なスーツに身を包んだ金髪の男の人。





「ルーファウス神羅。プレジデントの息子だ」

「ああ」





バレットとクラウドがその男を見てそう話してるのが聞こえた。

ルーファウス…?
プレジデントの、息子…。

それを見たバレットはその男の方に向かって行こうとした。

でもクラウドはそれを止める。





「退くぞ」

「ああ?馬鹿言え!神羅をブッ潰すチャンスだろうが!」

「エアリスを家に帰す!」





プレジデントが死んだ今、神羅を継ぐのはあの人なのだろうか。
だったら確かに、あの人を倒せば神羅の未来はガタガタかもしれない。

でも当初から言っていた。
あたしたちの目的は、あくまでエアリスの救出。

もうエアリスは傍にいる。

だけど脱出の道が立たれた今、またこれからどう逃げるかを考えなきゃならない。

こうしている間にも、ルーファウスと一緒にヘリを降りた兵士がこちらに向かってくる。
それを見たクラウドはひとりで兵士たちの方に歩き出した。





「俺が時間を稼ぐ」

「だったら俺も残るぜ」

「…行ってくれ、バレット。頼む」





自分も此処で戦うと言ったバレットにクラウドは一度だけ振り返りそう言った。

頼む…。それは信頼の言葉だったと思う。
そんな風に言われてしまえば、バレットは何も言えなくなる。

バレットは後ろ頭を掻き、舌打ちした。





「わあったよ!お前もすぐに来い!」





そしてクラウドの頼みを了承し、こちらに駆け出してきた。

男手の話なら、バレットがこちらについてくれた方がいい。
それはあたしも納得だ。

でも…やっぱりここにクラウドをひとりで残すのは…!





「クラウド!」





だからあたしはクラウドに声を掛けた。

だったらあたしが残って一緒に戦うよ、と。
でも、その声を聞いたクラウドは首を横に振った。





「ナマエ…あんたも先に行け」

「でも…っ」

「あんたは俺の助手、だろ?」

「えっ?」

「だから言ってるんだ。エアリスの事、任せた」

「っ…そういう事、今言うのずるいなあ」





バレットの気持ちがわかる。
ああ、本当…そんな風に言われたら、頷くしかないじゃんか。

任せる、なんてさ。

でも、そう言われちゃったら応えるよ。
あたしは頷いた。





「わかった!任せて、クラウドが来るまで絶対守るから!だから、クラウドも早く来てね!」

「ああ」





クラウドは小さく笑い、頷いてくれた。
それを見たあたしは彼に背を向け、クラウドもまたルーファウス達の方に向き合った。

もう、ここまで来たら信じて突き進め!

こうしてあたしたちはクラウドを残し、屋上から飛び出して機能するエレベーターを探した。

だけどその時、ティファだけはクラウドを少し待つと言ってその階に残った。
ティファはさっきこそ何も言わなかったけど、でも気にしてたのは気が付いてた。
後ろ髪引かれるような感じ、ずっとあったんだろう。

あたしは皆と一緒にエレベーターに乗りこんだ。

だって、あたしはクラウドに任されたからね!





「あいつらは大丈夫なのか」





エレベーターに乗っている時、レッドは残ったふたりを心配していた。

それを聞いたあたしはふっと笑う。
そしてレッドの傍らにしゃがんで言った。





「大丈夫!クラウド、ちゃんと頷いてくたれたから!さっさと片付けて追いかけて来るよ!」

「信頼しているんだな…」

「もっちろん!」





にっと笑う。

そうそう。
早く来てって言ったらちゃんと笑ってくれたんだから。

するとバレットも賛同してくれる。





「ま、そんな簡単にくたばる奴らじゃねえ。だから…」





でもそんな時、ぐらっとエレベーターが揺れた。

いやこれ…揺れたのはエレベーターじゃなくてビルの方だ。
衝撃は上の方からだった。

今乗っているエレベーターはガラス張りで景色が良く見える。

そうして見上げた瞳に映ったのは、屋上で何かが爆発した…そんな悲惨な光景だった。





「嘘だろ!?」

「クラウド…!」





バレットとエアリスが狼狽える。
あたしも、息を飲んだ。





「おい」





だけどその時、レッドがそう声を掛けてきた。
あたしは「え、」と振り返り、目を見開いた。

このエレベーターは2台で並んで動いていた。
ガラス張りになっているから隣のエレベーターの様子も良く見える。

そして、そんなガラスの向こうには…。





「ば、バレット…!」





あたしも慌ててバレットを呼んだ。
でもバレットは「助けに行かねえと!」って上を見たまま。

だからレッドがもう一度強く呼んだ。






「おい!」

「なんだ!」





そこでやっとバレットとエアリスが振り返った。

隣のエレベーターに乗っていたモノ。
それは人では無く、ゴツイゴツイ…マシンガンの搭載された機械兵器。





「伏せろ!」





バレットが咄嗟に叫び、あたしたちは身を伏せた。

バババババッと物凄い勢いで銃撃が降り注いでくる。

ちょちょちょちょ…!
こんな身を隠せないようなところでこんなんあり!?

ただ、ガラスにそれなりの強度があるのと高低差のおかげでなんとか助かってる感じだ。

って言っても恐ろしい事この上ないけど!!!

だからあたしたちは伏せながらただ祈る様に早く下に辿りつく事を願ってた。





「ぐうううっ…!」





しばらくするとエレベーターは止まった。

もうボロボロ。扉はガタガタ。
バレットが力づくでこじ開ける。





「けほっけほ」

「うう…げほっ…」





銃弾のにおいと煙にエアリスとあたしはむせてた。
とりあえず辿りついたのは、一番最初のカードキーで来ることが出来たスカイフロアだった。





「おい、生きてるか」

「なんとか…ね」

「うーむ…」

「あーもう…いくつか寿命縮んだ気がするよ…!」






空気が悪いから、文句を言いつつこじ開けて貰った扉からさっさと出る。

うえっ…本当、もう最悪すぎる…。
はあ…とため息が出た。

幸い、何故だか隣のエレベーターは止まり、あたしたちは銃撃から逃れることが出来た。

スカイフロアには追っ手の気配も無い。
これならちょっとはホッとできるかな…。

そう今度は安堵の息を零しながらあたしたちは歩き出す。

だけどその安堵はつかの間。

隣のエレベーターの扉の前を通った時、あたしたちはそれがまた動いている事に気が付いた。
そして到着する、さっきの機械兵器。





「ばっ、ちょーー!!?」

「おいおいおいおい!?」





あたしとバレットは叫んだ。
だって兵器はまたマシンガンによる銃撃を始めてきたから。

ちょ、マジで馬鹿じゃないのか!?

息つく暇も無い。
あたしたちは大慌てでエレベーターから離れる。

なんとか銃撃が届かないところまで走ったけど、そうすると今度は別の機械兵器が壁を壊しながら現れた。

そんな会社ぶっ壊してまで来ます!?

建物の中だってのに容赦が無さ過ぎるだろ!
しかも今度現れた兵器はパワーを溜め、こちらにビームを放って来ようとしていた。





「おい!ナマエ!」

「はいはいはい!!」





バレットに呼ばれる。
あたしはわかってますー!と慌てて返事をした。

それは飛び降りろという合図。

スカイフロアは吹き抜けであり下の階が見えた。
あたしたちが今いるのはちょうど欄干で仕切られた端っこのところ。

迷ってる時間なんかあるか!!

バレットはエアリスを抱きかかえ、あたしとレッドはそれぞれ高出力攻撃から逃げる様に下の階へと飛び降りた。

うう…着地は失敗しなかったけど、ビルってひとつひとつ天井高いからちょっとおっかなかった…!
天望荘とは大違いよ!!

でも、うかうかはしてられない。
その機械兵器もあたしたちを追うように上から飛び降りてきた。





「野郎!」

「来るぞ」

「もう!こうなったらやるよ!ぶっ壊してやるっ!!」





きっと、倒さない限りはずっと追いかけてくる。
こんなんじゃ出口なんて探せない。

あたしたちは覚悟を決めて、ここで機械兵器と戦う事を決めた。





「ビームはこいつが壊した瓦礫を盾にすればいい!!倒すよ!!」

「おうよ!やってやらあ!!」





気合を入れる。
もうやるしかない!

クラウドとティファはいないけど、大丈夫。
皆強い!絶対勝てる!

ぎゅ、と剣を握りしめて、あたしは先陣を切った。





「バレット!飛んでるのお願い!」

「おう、任せとけ!」

「エアリス!魔方陣張って!とにかく雷!あと回復も任せていい?」

「うん!大丈夫!ナマエは、思いっきり、ね!」

「ありがと!レッド!一緒に突っ込んで!」

「ああ、背中は守ろう」





分担は決めた。
こいつは高出力のビームを放ってくるから、それだけ注意して攻め続けろ!

比較的今のメンバーは遠距離型だ。
前に出られるあたしやレッドも魔法は苦手じゃないから、適度に距離を保ちつつ戦っていく感じ。

そうして兵器を破壊していき、あともう一歩と言うところまできた。

でもそれはチャンスでもあり、同時にピンチでもあった。





「全部、飛んでっちゃった!」

「次が来たら終わるぞ!」

「その前に終わらせる」

「そう!それで勝ち!全員で一撃必殺、狙うよ!」





今までビームの盾にしていた瓦礫や柱は全て粉々に飛んで行ってしまった。

もうあとがない。
次にビームが撃たれればひとたまりもないだろう。

でも、だったら撃たせるな。
その前にこちらがトドメを刺せればそれで終わり!





「エアリス!レッド!一緒にガ系魔法お願い!」

「わかった!」

「ああ」

「バレットはヘビーショット!!」

「おうよ!最大級のお見舞いしてやるぜ!!」





撃たれる前に討て!!
あと一撃、こちらの最大火力を持って仕留める!

あたしたちは攻撃を揃え、一気に放出した。
攻撃は真っ直ぐに敵を捉え、穿つ。



ドガァン…!!!



大きな爆発音。
ビームは不発に終わり、そして、大破した。





「よし…!」





倒した!それを確認したあたしはぎゅっと拳を握りしめる。

全員、無事…よかった。
クラウド…一先ず、なんとかなったよ。

そして少しだけ安堵して、上を見上げてほっとした息をついた。



To be continued


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