きみへの想い | ナノ

▽ 仲間たちの声


月で出会った月の民フースーヤ。
彼の話を聞き、あたしたちは全ての元凶であるゼムスの存在を知った。

ゼムスの思惑を食い止めなくては。

そのためにあたしたちは再び魔導船飛ばして青き星…あたしたちの星へと戻ってきた。
そして向かうはエブラーナ地方にあるバブイルの塔。
魔導船は飛空艇としても機能する。だからセシルはそのまま真っ直ぐにバブイルの塔へと舵を切った。





「バブイルの塔が!?」





塔が見えてきたその時、セシルが大きな声を上げた。

だけど、その異変はその場にいる全員が気が付いていた。
空にいてもわかる大地の揺れる感覚。地響き…。





「遅かったか!バブイルの巨人が誕生する!」





そう声を上げたフースーヤに全員の視線が集まり、そして塔を見る。
塔が光る。そして塔からまるで何かが召喚でもされるように、巨大な何かが大地に現れた。

大きな、大きな…兵器のような、巨人。
あれが、バブイルの巨人…。

解き放たれたそれは、ゆっくりと大地を進み出した。
山岳ももろともしない、大きな一歩。

そして、自分の周囲に向かいビームを放った。





「…っ…」





それは圧倒的な力だった。
その光景に思わず息を飲んでしまうくらい。

な、なにアレ…。

草木が、一気に吹き飛んでいく。
まるで大地が抉れていくみたいに。

巨人は一歩一歩進むごとにそんなビームを放っていた。





「酷い…」

「ちッくしょおお!!」





リディアはショックで口元を押さえ、荒らされるエブラーナの大地にエッジは魔導船の壁にダンッと拳をぶつけた。

あれが月の力なの?

あんなの一体どうすれば…。
魔導船内はそんな空気に包まれた。

でもその時、あたしは遠くの方から何かがこちらに向かってくるのを見つけた。





「あ…っ!セシル…!!」





その、何か。いや、あれは…!
それの正体に気が付いて、あたしはセシルに呼びかけた。

向かってくるのは、いくつもの飛空艇。それと戦車だった。
そしてそれは全部見覚えのあるもの。

皆もきっとハッとしただろう。
その瞬間、ジジッ…と魔導船内の通信機に反応があった。





『ドワーフ戦車隊、見参!母なる大地の為、我々も戦う!』

『ラリホー!』



『私だけ寝ているわけにもいくまい!』



『ワシが来たからにゃ、心配要らんぞ!エンジン全開じゃあ!!』

『はいッ!』



『久しぶりだな!あんちゃん!ナマエねーちゃん!』

『長老に助けて頂きましたの!』

『そなたたちだけではない!この大地に生きとし生けるもの全ての 命の戦いじゃ!』



『セシル、君たちに教わった勇気を見てくれ!』





各戦車や飛空艇から聞こえてきたいくつもの聞き覚えのある声達。

ドワーフたち。ヤン。シド。
それにパロムとポロム。ギルバートも。

この旅の中、共に旅して、そして時に辛い別れ方をした仲間たちの声だ。





「皆…!」

「ヤン!シド!怪我はもう!?パロム!ポロム!石化解けたんだ…!それにギルバートも回復したんだね!」





セシルの感極まったような声と、あたしの興奮気味な声。
でもそれは素直に感動的だった。

皆が、皆が助けに来てくれた…!

戦車と飛空艇は、バブイルの巨人に集中的に攻撃を開始した。





「巨人が…戸惑っている!」

「うん!かなり効いてる!」





その威力は絶大だった。

あの巨人にも意思ってあるのかな。
ローザが言うように、巨人は戸惑っているみたいに見えた。

あたしは皆が来てくれた事と抜群の効果に自分でもだいぶ気持ちが盛り上がってるのを感じた。





「今のうちに内部に入る!」





その時、この好機を逃してはならないというようにフースーヤがそう言った。
それを聞いたエッジはヘッと強気に笑った。





「なーるほど!奴の心臓を叩くってワケか! 」





この隙に巨人の内部に入って、中から壊してしまう。
確かにそれは手っ取り早そうだ。

その意見に皆異存はない。





「シド、頼む!」





セシルはシドの飛空艇に通信を入れた。
それを聞いたシドはすぐさま魔導船に自身の飛空艇を寄せてくれた。

そしてあたしたちはシドの飛空艇に移り、バブイルの巨人に向かって欲しいと伝えた。





「奴の口に近付くのだ!」

「誰じゃ?」





シドは初めて見るフースーヤの姿に顔をしかめた。

ああ、なんだか前にもこんな感じのことあったような。
そうだ、確かテラさんとかエッジの時もこんな反応してたような。





「月の民、フースーヤ」

「つきのたみー?」





セシルが簡潔に紹介するとシドは訝しそうな声を出す。
でも今は言い争っている場合も悠長に紹介する暇も無い。





「シド!いいから巨人!!」

「できるか?」

「ワシを誰だと思っとるんじゃ!飛空艇のシドじゃぞ!任しとかんかい!」





あたしはビシッと巨人を指差し、フースーヤは近づけるかと尋ねる。
するとシドはいつものごとく自信満々にそう答えてくれた。

勿論、出来ないだなんて思ってない。
そうわかってるから、早くって指差したんだもん。





「みんな、掴まっとれ!」





他の艦隊が足止めしてくれている隙をシドは見事に突いてバブイルの巨人に一気に近づいた。
この操縦技術は流石のものだと思う。

さあ、入り口は見えた。

こっから先はあたしたちのお仕事。
巨人さんの心臓を中から一気に叩く!!

あたしたちは飛空艇からバブイルの巨人内部へ飛び込んだ。

その時、あたしは気合十分だった。
何故って皆の声を聞いたからだ。

自分でも単純なものだと思うけど、聞こえた皆の声援は何より大きかった。

全部終わったら皆とたくさん話がしたい。
そんな希望がふと胸に浮かぶ。

だから、あとひとり…。

ゼムスを止めれば、きっと…。

それは間違いのない、揺るがぬすべき事だ。
必ず止める。そう、胸に確かな決意を刻み付けた。



To be continued

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