きみへの想い | ナノ

▽ 大好きの意味


「カッイーン!!!」

「ぐッ…!?」





きらきらなびく金色の髪。
その背中に向かって思いっきり飛びついた。

すると振り向く彼と目が合う。





「ナマエ…!」

「おはよ、カイン!」





彼こと、カイン・ハイウインド。

抱きついたまま。
にっこり笑ってご挨拶。





「お前はいつもいつも…飛びついてくるな!」

「やー、カイン。今日も格好いいねー!」

「…人の話を聞け」





朝から早速褒め殺し。
するとカインは「はあ…」とため息をついた。





「朝からため息?幸せ逃げるよ?」

「…誰のせいだと思っているんだ」

「えー、誰のせい?」

「……。」





じとっと睨まれた。

おおっと。
じゃあ、おふざけはこのくらいにしておきますか。

ぱっ、と手を離せばカインは「それでいい」とでも言いたげに頷いた。





「でもさー、これって言わば毎日の恒例行事じゃん?日課日課」

「勝手におかしな行事を作るな。だいたいお前の中でだけだろう」

「え!そうだったの?」

「…当たり前だろう」





カインは頭を抱えた。

あらー。それはびっくりだわー、なーんてね!

でも、あたしの中ではこれが1日のはじまりだからね。
これがなきゃ、はじまらない!はじまったー!って感じしないんだよねー。

ていうか癖。
ちっちゃい頃からの勢いがこのまま続いちゃってるって感じ。





「仕方ないよー、あたし、カインのこと大好きなんだもーん」

「フッ…飽きんな、お前も」





にっこにこ笑う。

でもカインも結局は慣れてるんだと思う。
釣られるように小さく笑ってくれた。





「あ。ナマエ、カイン」





するとそんな時、呼びかけられた。
と、同時に聞こえてくる足音がふたつ。





「セシル!ローザ!」





振り向くとあったふたりの姿。

セシルとローザ。
あたしはひょいっ、とふたりの前に出てまたまたにっこり笑った。





「ふふっ、ナマエってば、またカインに飛びついたのね?」

「ナマエは本当に昔からカインに懐いているね」

「もちろん!これ、あたしの日課ね!」





するとにっこり、ふたりも笑顔を返してくれた。

セシル、ローザ、カイン、そしてあたし。
あたしたち4人は、幼い頃からバロンで育った。いわば幼馴染み、ってやつだ。

そんな4人組の中で、あたしは一番年下。
つまり自然となんとなく、妹みたいに扱われる。
あたし自身、3人に頼りっぱなしだから別に良いんだけど。

その中でも一番年上のカイン。あたしとは3つ離れてる。
だから小さい頃はそれこそ本当、カインがよく面倒見てくれてた。
そのせいか一番彼に懐いてると自他ともに認めざるを得ない。ていうか懐いてる。

セシルは暗黒騎士。
カインは竜騎士。
ローザは白魔道士。
あたしは黒魔道士。

進む道は違うけど、あたしの中の3人を慕う気持ちはずっと変わらない。

でも…。
その中でも、時間が流れれば変わっていくものは…勿論あるわけで。





「あ、セシル。頼みたいことがあるんだけど…あとで時間貰えるかしら?」

「ああ、構わないよ」





ローザが隣のセシルに微笑む。
セシルもそんなローザに笑みを返した。

この2人は、きっと…お互いを大切に思ってる。
お似合いだと思うし、なんとなく憧れる。

…だけど。





「……。」





あたしはその時、気づいてた。
そんな2人を…カインが少しだけ、苦しそうに見ていたこと。

うん、ずっとずっと前から知ってる。
カインが…ローザに想いを寄せてるってこと。

でも、セシルは親友で。2人のことが大切だから。
だから言葉に出来なくて…ずっとずっと1人で気持ちをしまいこんでること。





「じゃあ、僕はシドのところに行ってくるよ。だから…」

「わかったわ、私も白魔道士団の部屋に顔出してくるから、そのあとシドの部屋に行くわね」

「俺も竜騎士団の様子見に行かねばな。ナマエ、お前は…」

「んー…お昼寝?」

「…黒魔道士団に顔を出して来い」





修行が面倒でさぼっちゃおーかなー、なんて思ってたらカインに叱られた。
その様子を見てセシルとローザには笑われた。

こうして、それぞれ散っていく。
その背中を眺めながら、あたしはふと思っていた。


…あたしは、カインが好き。
いっつも馬鹿に一つ覚えみたいに、抱きつきながらそう笑う。

でもそれは、妹として。
小さなころから、ずっとずっと懐いてる延長線。

セシルもローザも、もちろんカインも。そう思ってる。
あたしもそう思ってた。

…でも、いつからかな。
これが恋なんだ…って気づいたのは。

いつから、「大好き」の意味が変わったのだろう。
…あたしは、カインが好き。

わー、なんという一方通行!
なんかむしろ笑えてくるよねえ。

…うん、叶わないことは知っている。
だから、伝わるのは今の「大好き」の意味でいいんだ。

伝える必要なんて、きっとどこにもないから。

だけど、今はまだ…。
甘えることは許しいてほしいな。





「…ふああ…」





あくびが出た。ああ眠た…。

なんか呑気だ、あたし。
でもこれは素だからどうしようもない。

それに…、カインに比べたらあたしなんて全然マシでしょ?
想い合ってる2人を見てる方が、ずっと辛いもんね。

あーあ…、なんか世の中って上手くいかないもんだよねーえ。


そんなことを考えて。
ううーん…と伸びながら、あたしも黒魔道士団の間に足を動かした。



To be continued

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