きみへの想い | ナノ

▽ 夢を現実に


「ナマエ…!ナマエ…!」





誰かの呼ぶ声がする。

でも、そんなの気にならない。





「うふふふー…コレ全部食べていーの…?」






目の前にあるのは女の子の幸せ、甘いモノ。

聞くとローザが微笑んでる。
それを見てカインが呆れ気味に、でも笑ってる。

セシルは…。





「ナマエ!」





何故かあたしの手を掴んで妨害してくる。

この呼んでくる声、セシルだ。
なんだ、あたしからお菓子を奪う気か…!
なんの拷問ですかそれ!!!





「ナマエ…!」

「もうなにセシルッ!!!」

「…うわ…!」





ちょっと文句を言おうとして、セシルに向かって飛び起きた。

…ん…?
飛び起きた…?

目の前のお菓子は消えた。

今あるのは驚いてるセシルの顔。





「…………………………え…?」





…軽く混乱した。












「本当に本当に本当にごめんねっ…!セシルー…!」

「はははっ…、いーよ。ちょっとビックリしたけどね」

「本当面目ないです…」





あたしはセシルに思いっきり頭を下げて謝った。

ふとして、思い出した。
あたしたち…リヴァイアサンに襲われたんだってこと。

それで、そのあとどうなったか…よくわかんない。
でも状況から察するに、たぶんどこかの大陸に運よく流れついたんだと思う。

それで気絶してたあたしを、先に気がついたセシルが起こそうとしてくれてた…ってわけで。

…本気で申し訳ないと思った。





「ねえ…セシル、他の…リディアとヤン…それにギルバートは…?」

「…わからない。ここに流れ着いたのは…僕とナマエだけみたいだ…」

「…そーなんだ…」





セシルが居てくれてよかった。
そう思うと同時に、皆がどうなったのか…。

皆もどこかに流れ着いていればいいんだけど…。

確かめる術はない。
無事を祈るくらいしか、出来ない…か。





「ね。でもよくあたしたち同じところに流れ着いたね。これってすごい確率じゃない?」

「ああ、ナマエは…船の上で手を掴んだの、覚えてる?」

「え?あー…そういえば」





言われて思い出した。

そういえばセシルが手を伸ばしてくれて、あたしもとっさにその手を掴んだんだっけ。

…え?まさかそれ…?





「ええ!?まさかそのおかげ!?普通放しちゃうような気がするけど…」

「ははは…そりゃそうだよ。コレのおかげさ」

「え…?」





そう言ってセシルが見せてくれたのは、一本のロープだった。





「これで咄嗟に、君と僕の体を縛ったんだ。でも…それくらいしか僕には出来なかった…」

「セシル…」





セシルは悲しげに、悔しそうに目を伏せた。

守れなかった…。
そう言う思いに締め付けられちゃってる…。

あたしだって…やるせない。けど…。





「ありがとう、セシル」

「え?」





あたしは笑みを浮かべてセシルに礼を言った。

だって、これ、本当の気持ちだし。





「あたし、セシルと一緒で良かったよ。ロープなんて機転、あたしじゃとても回んないし!一人じゃたぶん途方に暮れちゃうし」

「…ナマエ」

「ありがと、セシル!助けてくれて!」





にっこ、と笑った。

そもそも…こんなとこでしょんぼりしてても仕方ないし。

それに、あたしにとってセシルも頼りにしてるお兄ちゃんだもん。





「ね、セシル。あたし、今…皆でお菓子食べる夢見てた」

「皆?」

「うん。セシルとローザと…カインと、一緒に」

「……そっか」





さっき見た夢。
多分、あの光景を望んだからこそ、夢に見たんだと思う。

ローザを助けたい。

…カインに会いたい。

そう言う気持ちの表れ。





「じゃあ…進もうか。向こう、ほら、村見えるだろう?」

「あ、本当だ」





セシルは立ち上がって、東の方角を指にさした。

確かにそこには村が見えた。

あたしもセシルにならって立ち上がって、うーん…と目を凝らした。





「あれ、なんて村?ていうか此処どこ」





地図を見たって、流されちゃったんだから位置の特定とか無理だ。
無人島とかに流されなかっただけラッキーかもだけど。

だけど…なにげなく聞いた質問だった。

でも…なぜかセシルは…、少し辛そうな顔してるように見えた。





「セシル…?」





不思議になって、顔を覗き込む。

するとセシルは眉を下げた。





「ついこの間…来たんだ」

「え…?」

「あの村は…」





また苦しそうな顔。
その目で、見つめる。

そして、村の名を呟いた。





「ミシディアだ」

「え…!」




それを聞いて、あたしは目を見開いた。

ミシディアって…。
ついこの間、赤い翼がクリスタルを…。

そっか…だからセシル…。

ローザも言ってた…。
セシル、ミシディアでのこと凄く気にしてるって。





「…行こう」

「え、セシル…?!」





でもセシルは歩き出した。

え、え、え…!
い、いいの…かな?!

セシル、気にしてる。
それはあたしにもわかる。

だって本意じゃなかったわけだし…!
だけど…攻め込んでしまった事実は変わらない…。

なのに…ミシディアに行ったら…。

そうやってあたしは「ううううー…」と悶々してた。
そんなあたしを見て、セシルは小さく、ふっと笑った。





「さっき、ナマエの見た夢」

「…夢?」

「現実にしよう」

「セシル…」

「僕も、ナマエと一緒で良かったよ」




優しい微笑み。

なんか、嬉しかった。





「…うん!」





だからあたしはそっと笑って、頷いた。

こうして、あたしたちはミシディアに歩き出した。



To be continued

もはやセシル夢になってる…。(笑)

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