自己紹介


「…一応、情報としてわかったのは…名前はナマエ」

「はい!ナマエと申します!」

「「………。」」





セブンスヘブン。
FF7でアバランチを語るには欠かせない、七番街にある小さなバー。

そこであたしはティファとバレットを前にして、クラウドに自分の紹介をしてもらった。

ティファはポカーンと、バレットは警戒心丸出しだったけどね。

まあ、紹介してくれるのだから、あたし自身もピシッと決めて笑顔を浮かべて名乗ってみた。
クラウドには、すっごく微妙な顔されたけども。

いやしかし、今のあたしってば物凄いテンションがハイなのだ。
どうも落ち着いていられない。だから、そこのところは多めに見て欲しい。

まぁ、ぶっちゃた話クラウドに関しては、ここまで一緒にいた分あたしのテンションに慣れてきたののもあるんだろう。だから実は、さほど気にせずさらっと流して話を続けてくれていたりする。

いやあ、こういう対応は有り難いもんです。





「…列車に乗る前、俺の連れかと勘違いされて一緒に神羅兵に襲われかけた。発砲もされたし、単純に見れば神羅とは無関係そうだ」

「本当か?ポーズってことはねえのか」

「…さあな。けど、見ての通りペラペラとうるさいからな。自分のこともよくまあスラスラと語ってくれた。その中で、まあ…素っ頓狂なことも口にされたんだが…」

「あん?素っ頓狂?」





素っ頓狂。
クラウドの言ったそれは多分違う世界から来たって事と、この世界が物語だという話だろう。

バレットは顔をしかめてた。

けど、うん。
確かに素っ頓狂だ。あたしも皆の立場なら絶対にコイツ何言ってんだって思うだろう。
まあ、流石にね。それくらいの自覚は持ってます。





「…コイツの言い分によると、自分はこの世界の人間ではない。それどころか、この世界がコイツの世界では物語のひとつであるそうだ」

「あ?」

「え?」





溜息まじりに、簡素に説明したクラウド。
これ以上に無いほどシンプルに、わかりやすく。

それを聞いたバレットとティファは、思わず声を漏らし、きょとん顔。

まあ、予想通りの反応だった。





「…おい、待て…ティファ、俺は頭がおかしいのか?まったく理解出来なかったんだが」

「やめてよ、バレット。…その理論でいくと、私も頭がおかしいことになっちゃう」

「おい、クラウド…てめえ、ふざけてんのか?」

「本人の言い分と言っただろう。俺はナマエに言われたことをそのまま伝えただけだ」





困惑するふたりにクラウドがそんなこと言うもんだから、視線が一気にあたしに集まってしまった。

ええ、そういうの勘弁して欲しいなあ。
ここっていっちばん怪しまれるっていうか、説明するの難しいところじゃんね?

だけど集まってしまったものは仕方ない。
あたしはひとつ深呼吸をすると、少しでも理解をしてもらえる努力をすることにした。





「今、クラウドが言ったことは本当です。まあ本当、意味わかんないこと言ってるな〜とは自分でも思うんだけど。その自覚くらいはありますよ。嘘ならもっとマシな嘘つけってね。でも本当のことだからしょうがないんです」

「ええっと…じゃあ、もしかして…さっき私やマリンの名前を当てたのは、物語の世界だからだって、貴女は言うの?」

「あ!そうそう!さすがティファ!話が早くて助かっちゃうよ〜!」

「…え、ほ、本当にそう…なの?」





パン、と手を叩いて喜んだ。

ティファはバレットほど突っかかっては来ないから、彼女の方が話は通しやすいのかもしれない。
っていっても、困惑されてるのは確かなんだけど。ま、それはしょうがないね。

こうなったら、クラウドにやったように何か知識をひけらかすのが手っ取り早いか。
その人しか知りえないような、到底調べられそうもないような事実。

さて、ティファとバレットと言えば…っと。
あたしはうんと唸り、FF7の記憶をいくつか辿っていった。





「んーと、じゃあ色々当てていくよ。まず名前は、ティファ・ロックハートにバレット・ウォーレス。出身は…ティファはニブルヘイムで、バレットはコレルだよね」

「…え、ええ…」

「……。」





ティファはクラウドと幼馴染みだから、この話題は正直インパクトはそんなにないかな?

バレットの方は、コレルという地名を聞いて少し眉間にしわをよせてた。
クラウドはバレットの故郷なんて知らないだろうし。

それと多分、過去のことが関係あるのかも。
とすれば、この辺の話題はちょっと注意かもしれない。

そんな理由と、あと突っかかりが少ないという意味も踏まえて事を考える。
だからあたしはまず、ティファの方の情報から攻めていくことにした。




「んー、ニブルヘイムはクラウドとティファを合わせて当時5人子供がいたよね。あと、村の給水塔、ふたりにとってはちょっと思い出があるんじゃないかな?」

「え…!?」

「ちなみに、クラウドにはカンニングしてないよ?ね、クラウド」





流石に、給水塔の思い出を持ち出したら結構ビックリされた。
淡い星空の思い出にお水を差して御免よ…!

で、念には念をでクラウドにも尋ねておく。

するとクラウドは記憶を遡られせるように顎に手を当てた。





「…村の、給水塔…?」





そして…疑問符をつけて、そう首を傾げた。

まるで何の話だとでも言いたそうな顔だ。

おう、ありがとよ。
それで私のカンニング疑惑は払拭されたぜ。





「クラウド…忘れちゃったの?」





だけど一方で、ティファは寂しそうな表情を見せていた。

でもまあ、そうだよなあ…。

…クラウドってさあ、やっぱちょっとボケてるのかなあ。
いやまだ魔晄中毒で記憶あやふやなんだろうけど。

でもそれにしたってボッケボケだよねえ…。
ちょっと憐みの表情を向けると「なんだよ」って睨まれた。





「思いだして?あれは、7年前よ」

「…7年前」

「…やっぱり忘れてる…。あの約束も…忘れちゃった?」





すっかりボケているクラウドにため息をつき、ティファは彼にヒントを与えた。
するとその助けも功を成したか、しばらく考えた末…どうやらクラウドもその約束を思い出したみたいだ。





「ああ…あの時か。ティファ、なかなか来なくてちょっと寒かったな」





もっとも…クラウドがその約束を忘れるわけはないんだろうけどね。

7年前。ニブルヘイムの給水塔。
クラウドとティファのふたりにとって、そしてFF7を語る上で絶対忘れちゃならないキーワードだ。





「もう…やっと思い出したのね。…でも、クラウドがこの調子ってことは…ナマエ、貴女…」

「うふっ、まあ、こんな感じですよってね!」





給水塔の思い出は、どうあってもクラウドとティファしか知りえない事だ。
だってあの場にはこのふたりしかいなかったんだもの。

これでティファへの信憑性はグーッと上がったはずだ。

あとはバレットか。
でも、話の内容こそわからずとも、バレットも今のティファの様子を見ていて何か思う事はあっただろう。





「えーっと、じゃあ次はバレットのこと。うーん…何がいいかなあ」





ティファに向けていた視線を、バレットへと向ける。
そして、彼しか知らないであろう過去の出来事を考えた。

バレットの過去。
ゲーム中のストーリーで語られた部分を考えると、何だか苦い思い出ばかり出てくる。

まあ、そこはクラウドとティファにも言えた事なんだけど。





「…例えば、その銃のこと…」

「!」





ちらっと、彼のギミックアームに目を向けると、ギクリと反応された。
多分、何を言われるのかと身構えたんだろう。

この辺は、やっぱまだ触れない方がいいよなあ…。

流石に空気を呼んで、あたしはそのことには言及することなく頷いた。





「その腕は、神羅とか故郷とか…色々な貴方の心情のあらわれ、ですよね?」

「……お前」





近からず、遠からず。
ほのめかす程度。

だけどバレットにはその意図が伝わったようだ。

確かに、あたしは知っている。
でも別にそれをむやみやたらに話したりはしない。

それっていいことだとは思わないし。

クラウドやティファも、そういったことを立ち入ったりするタイプではないから、バレットの件はこれで終わり。

最後に、クラウドの一言があたしの助け舟となった。





「…俺が、ナマエと出会った時…こいつは何もなかったはずの空間から突然に現れた。それも、本当に…どこか別の世界から来たみたいに、な」

「「…………。」」

「わあお!クラウドありがとう〜!そういうの助かるよ〜!さっすが〜!」

「………。」





ガン無視された。
わあ、この数時間で随分あたしへの対応に慣れたもんで。

ふん、いいもん、照れてるってことにしておくもんね!

だけどまあ、とりあえず、これで少しは信憑性は上がっただろうか。





「あはは、まあ、信じろって方が難しいのは本当にわかってるの。ただ一応、嘘はついてないんだ。とりあえず頭に入れといてもらえれば。なんか、色々ごめんなさい!」





振り回してる自覚はある。
だから一言は謝っておいた。

さあ、どんなふうに思われるかなあ?

結構暢気なものだけど、こう色々話してて、あたしも今の状況に実感が出てきて。
この先の身の振り方とか、考えなきゃなあって、そんな考えが浮かび始めてた。



To be continued

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