異国の地


「やってきましたー!異国の地ー!」





ばんざーい!と喜ぶ。
後ろではうるせえなって顔してるシドと、もはや慣れてやれやれって顔してるクラウド。

ユフィを追いかけ西の大陸を歩いたあたしたちは、異国の地ウータイへと辿り着いた。





「はーっ、この雰囲気…!いいよね、クラウド!」

「まあ…確かに独特な感じはあるな」

「ね!!」





ウータイは和の国というか、この世界でもちょっとまた特別な文化のある国だ。

あたしはこの世界ならどこでもテンションMAXだけど、今回はクラウドにとっても物珍しさがあるようでなんとなく共感が返ってくる。

おお!
共感されるのはなかなか嬉しいモノね!

ま、このまま色々見て回りたいところだけど、とりあえずやることはやらないとね。





「さてさてー、と」





あたしは少し進み、きょろっと辺りを見渡した。

するとそこで、見覚えありまくりの忍者娘発見!!





「あッ!!」





向こうもこちらに気が付いた。
こんな町の入り口近くにいたって事は、まさかこんな早く追いつかれるとは思ってなかったって感じ?

目が合った瞬間、パッとユフィは逃げていく。





「ああ!てめえっ!!」





それに気づいたシドは慌てて追いかけた。

けど、ユフィは身軽だ。
しかもここの土地勘もある。

あっという間に、その姿を見失ってしまう。

シドはチッと舌打ちした。





「くそ…すばしっこい奴だな」

「まーまー、シド」





あたしはシドに駆け寄り、肩をぽんぽんと叩いた。

シドはイライラ顔で振り返る。
おーう、めっちゃ機嫌悪そう!

まあそれも無理ないだろうけど。

あたしは隣にいるクラウドに声を掛けた。





「ねー、クラウド。とりあえず、そこ入っていい?」

「そこ?なんだ…亀道楽?」





あたしが指さした先を見上げたクラウド。
そこに掲げられていたのは《亀道楽》という看板。

あたしはにんまり笑った。





「そうそう!亀道楽!ささ、入ろー!!」

「相変わらずテンション高いな、あんた…。まあ店に逃げた可能性もあるか。シド、構わないか」

「けっ、好きにしろ」





ふたりの許可は貰った。
では、いざ!!

本物の亀道楽ですよ!!
ウータイと言えば亀道楽!!

亀道楽きちゃったね!!

いやあテンション爆上がりだわ、本当。

ああ楽しくて仕方ない。

こうしてあたしたちはまず居酒屋亀道楽の中に足を踏み入れた。





「お、お前たち!?」





入ってすぐ、扉の音でひとりの女の人が振り返った。
金髪の彼女はこちらを見てぎょっとする。

見覚えのある顔。

クラウドはちらりとあたしを見て顔をしかめた。

これ、あんたわかってただろって顔である。
あたしはテヘッと軽く舌を出した。





「なんでこんなところへ…、そ、そんなことどうでもいいわ。私たちタークスに会ったのが運のつき。さあ、覚悟しなさいっ!!」





金髪の彼女こと、そう言ってきたのはまあイリーナである。

仲間に加わったばかりのシドはなんのこっちゃって感じで「なんだコイツ」と聞いてきた。
あたしが軽く「神羅だよ〜」と答えると「敵じゃねえかよ!」と怒られる。

でも今回に関しては別になーんも問題ないからなあ。

あたしがまた「まあまあ」となだめていると、向こうも落ち着いた声でレノがイリーナをなだめた。





「……イリーナ、うるさいぞ、と」

「せ、先輩!?」

「俺たちがこんな田舎に来てるのは、何のためだ?」

「そ、それは、休暇をとって日頃の疲れを癒すため…です。で、でも…」





イリーナは納得できなさそうにこちらを睨んでくる。
目が合ったからひらひら〜と手を振ってみたら余計睨まれた。えへ。





「……せっかくの酒もマズくなる」

「…はい…」





最後の一言はルード。
流石にふたりの先輩に止められればイリーナも従うしかない。





「フン、運がよかったわね。さっさと消えなさい!この次に会った時は容赦しないからね!」





イリーナはそう言いながらぷりぷり席に戻っていった。
でもそれと交代で今度はレノがちらりとこちらに視線を向けてきた。





「おー、そういやあんただよな、噂の異世界娘」

「へ?」





声を掛けられた。
ちょっとビックリしながら私ですかい?と自分の顔を指さすと、レノは「そーだぞ、と」と頷いた。

う、噂の異世界娘…。
なんかへんちくりんなあだ名をつけられてるわ!





「こいつに何の用だ」





すると前に男の人の腕が出てきた。
見ればそれは隣にいたクラウドのモノ。

おっまえ本当イケメンだな!

あたしが「あらまー」なんて暢気にしてると、レノはくっと小さく笑って首を横に振った。





「いんや?特に用はないぞ、と。そもそも非番だ。会社に何か言われてても探る気はない。完全に俺の興味だぞ、と」

「興味…あたしに?」

「おう」






あたしがへえ…と呟く一方、めっちゃ睨んでるクラウド。

会社云々ではなくレノの個人的な興味…か。
いや、この言い方だと会社から何か言われてる可能性も無きにしも非ずだけど。

でも今の非番モードだとあんまり話してくれなさそうだ。

まあ、レノが知ってるってことはルーファウスがタークスに話したってことだろう。

ビルの屋上で「異世界人」だと口にした。

あの時はふっつーにスルーされたけど…。
ていうか今だってアタマオカシイ奴がいた的な雑談の一つとして話されてるだけかもしれないけど。





「しっかし異世界て、随分ぶっとんだ発想だよなあ。しかも神羅の社長相手に名乗るか、普通」

「んー、発想っていうか、事実だから仕方ないの」

「へー。ずいぶんあっけらかんと。あんた、面白いな。どうだ、良かったら一緒に飲むか?奢ってやるぞ、と」

「先輩!!!」





くつくつ笑いながら奢ってやる。
その言葉には流石にイリーナが切れた。

まあこっちもすんげークラウド睨んでるし。

んー、タークスと話すのもすっごい面白そうなんだけど!
聞いてみたいことたっくさんあるし!

出も仕方ない。
今回は我慢しますか。

ユフィも追いかけなきゃだし、そこはね。





「んふふ、あたしもレノ達には興味あるけど、残念。やめておくよ。後輩ちゃん嫌だろうし、こっちも連れが睨んでるし」

「そこはレノ達じゃなくレノにって言っておくべきだぞ、と」

「ふふ、嘘はつけませんので」

「手厳しいな。んじゃ、またそのうちな」





レノは視線をテーブルに戻し、ひらっとこちらに手を振った。
あたしはクラウドを見る。





「ほい、クラウド。いこ!」

「…ああ」





声を掛けるとクラウドは頷く。
話の流れがいまいちわかってなさそうなシドは退屈そう。

そんなふたりの肩を叩き、あたしたちは亀道楽を後にした。





「タークスが中にいること知ってたんだろ」

「うん。だから入ったんだよ。非番だから別に戦う事もないけど、一応知っといた方がいいでしょー」





クラウドに言われ、へらりとそう返す。

そう。
でも本当、そんな軽い気持ち。

ただ、レノとの会話で気になることは出来た。

一応タークスもあたしが異世界から来たって言うのは把握してるんだなあ。
いや、あの感じだと自称異世界人の痛々しい奴感ありそうだけど…。

あとはリーブさん…ケット・シーがそれを話してるかどうかだよなあ。

未来がわかる事とか、そのへん含め。

神羅に筒抜けになるのは、デメリットもあるのかもしれない。
だけどそれでもケット・シーにだけ話さないっていう選択肢はあたしの中でないし。

それに、正直メリットもある。

神羅が気にしてくれるなら、それが帰る方法の判明にも繋がるかもしれない。





「ふむ…」

「ナマエ、どうした?」

「ん?ううん!」





考え事をしてたからか、クラウドが不思議そうにこちらを見る。
あたしは適当に首を振った。

帰る方法…探して行かないとな、って。

今、頭にちらついたのは、そんな話だ。



To be continued

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