鬼が強すぎるかくれんぼ


「んじゃま、鬼が強すぎるかくれんぼ、スタートしますか!」





亀道楽を出た後、あたしはクラウドとシドにそう言って笑った。

さてさて、ここに来た目的。
ドロボー忍者ユフィちゃんからマテリアを取り返さないとね。

ここはパパっと、ちゃちゃっとやっちまいますかね!





「ほいほい、クラウド。そこに宝箱あるよ」

「ああ…開けろって?」





まずは道具屋さんの宝箱。
クラウドがそれを開ければ、その瞬間にどこからかユフィが現れ、中身をヒュッと掻っ攫っていく。





「…速攻で取られてんじゃねえかよ」





シドから冷めた突っ込みが入った。
だけどあたしはにんまり笑う。





「まあまあ、次はあっちの民家ね」





次に向かうは町の入り口付近にある民家。
お邪魔するとお子ちゃまに「変な人がきた」言われたけどすぐ出ていくのでご容赦を。





「クラウド。あれ。あの屏風の裏」

「屏風?」





今度、あたしは家の中にあるひとつの屏風を指さした。
クラウドは屏風に手を掛け、サッと軽くそれをずらす。

すると裏に隠れていたユフィが一目散に退散していった。





「お前…すげえな。かくれんぼの天才か?」

「ふっふっふー、違うよー。言ったじゃん、物語として知ってるの!こういうことよ!」

「そこに繋げるのかよ…」

「繋げるじゃなくて繋がるの〜♪」





別にそういう設定作ってるんじゃなくて、事実の話なので。
シドはまだちょっと信じがたいみたいだけど、でも凄いと思ってくれたなら一歩前進だよね!

そしてお次は亀道楽前の壺。





「シド、そっちの道塞いで。あたしはあっちを塞ぐから。んでクラウドは壺を叩くでも殴るでもとりあえず揺らすって感じで」

「挟み撃ちか」

「わーったよ、やってやる」

「よーし、じゃあ配置につけーってね!」





亀道楽の通りはふたつの橋しか逃げ場がない。
となればここは追い詰めるには絶好の場所ってことで。

ここでとりあえず一区切り。

あたしとシドが配置につくと、クラウドは壺を揺らしだす。
ガタガタされて、ユフィはすぐさま飛び出してきた。

さて、ここでシドとあたしの出番です!





「てめえ!もう逃がさねえからな!」

「わっ、とと…!」





逃げた先、ユフィはシドに行く手を塞がれて逆方向に逃げる。
でもそこにはあたしがスタンバってるわけですよ!!





「やーい!ユフィー!追い詰められてやんのー!」

「っ、ナマエ!」





バッと両手を広げてユフィの前に立ちふさがる。
そして後ろにはクラウドとシド。

囲まれたユフィは完全に逃げ場なし。





「もう逃げられないぞ、ユフィ」





クラウドにそう言われ、ぐぬぬ…と悔しそうな顔をするユフィ。
するとユフィはぐるっとあたしに振り返り、わーっと文句を垂れてきた。





「ナマエ!さっきから何なんだよ!ことごとく隠れ場所当ててくれちゃって!邪魔しないって言ったじゃん!!」





ウータイに来る前。
タイニー・ブロンコの上で、確かにユフィと話はした。

あたしの持ってるマテリアに手を付けないなら、何も言わないし邪魔もしないよってね。

でも…。





「確かにお好きにどうぞーとは言ったけど、追いかけないとは言ってないね!!」

「はああああああ!?!?ふざけんな!屁理屈!!裏切者!!」

「なんとでもいいなさいなー」





喚くユフィにしれっとする。
するとクラウドがガシッとユフィの首根っこを掴んだ。





「ユフィ」

「わ…わかったよ…。…あたしが悪かった…。あんたたちの勝ちだ。マテリアは全部返すよ…」





降参、というように両手を上げたユフィ。
クラウドとシドはこれで一件落着とホッとしたかな?

こうしてあたしたちはユフィに連れられ、ひとつの民家に案内された。





「わかってるよ、マテリアだろ?ちゃんとしまってあるよ。……こっちきて」





ユフィは案内する。
階段を下りて、地下へ。

そうして通されたのは、何やらレバーのある一室。

そこでユフィは語り始めた。





「……小さい頃から聞かされてた。あたしが生まれる前のウータイはもっとにぎやかでもっと強かったって…。見たでしょ、今のウータイを。これじゃただの観光地だよ…。戦に負けて、平和を手にいれて、でも、それと一緒に何かをなくしちゃったんだ。今のウータイは…。だからあたしは…マテリアがいっぱいあればきっと…。だから、だから…」





背を向き俯き、少し涙の滲んだ声で話すユフィ。
その姿にはクラウドやシドも思うものがあったらしい。





「……悪いがユフィ。ウータイの歴史にもお前の感情にも興味はない。俺たちに重要なのは、今俺たちのマテリアをお前が持っているということだ。マテリアさえ返してくれればそれ以上お前を責めるようなことはしない」

「わかってる。そんなのあたしだってわかってるよ…」





興味はない、と言いつつクラウドはやっぱり優しいわけで。
さっきまでキレ散らかしてたシドももう責めるような言葉を掛けない。

そんな姿を見てあたしが思う事は…女優よのう〜!って感じなんだけど。





「そこのヒック……スイッチ……左のレバー……マテリア、ヒック……隠して…」





泣くのを耐えながらレバーを操作すればマテリアが出て来ると言うユフィ。
それを聞いたクラウドはレバーの方に向かっていった。

そして、言われた通りに左右あるレバーの左に手を掛ける。

あらまー、素直ー!
なんて思っていれば、クラウドはそのままレバーを引いた。


ガシャーンッ!!!!!





「オオッ!?」





その瞬間、突然天井から落ちてきた檻。

勢いに驚いたシドが隣で大声を上げる。
うっ…ちょっと耳痛い。

あたしがシド側の耳を抑えると、檻の向こうでユフィがくるっと振り返った。





「ハッハッハーッ!そう簡単に人を信用するなってこと!マテリアはあたしのもの!残念でした!」





高笑いするユフィ。

さっきの涙はどこへやら?
いやま、背中向けてたから涙出てたのか知らんけど。

そしてユフィは檻の中にいるあたしを見て、にんまりと笑った。





「てゆっかー、しつこくいけばナマエも出し抜けるって事じゃん!ふっふっふー、これがユフィちゃんの実力ってもんだよねー!」





どうやらユフィはあたしがこの未来を知らず、罠にはめられたと思ってるらしい。

ふーむ。
まあさっきまでことごとく隠れ場所当ててたわけだし?

それがこんな風に檻の中にいたならそう思うのかもしれない。

でも。





「本当に出し抜けたと思う?」





あたしはにんまり、笑って返した。

するとそこでユフィの笑みが「へ…」と消える。
でもユフィはすぐにそれを振り払った。





「へんだ!負け惜しみ!マテリア取りかえしたかったら自分たちでさがしてみれば?そう、マテリアを見つけるにはカネにものを言わせなきゃ。エヘヘ……カネだよ、カネ。わっかるー?じゃ〜ね〜!」





ユフィはその場から去って行った。
クラウドはレバーを戻し、檻を戻してくれる。





「ナマエ…」

「んふ、どっちだと思うー?」





クラウドが見てきたから、あたしはまた笑みを向ける。

まあ、ユフィが本当に出し抜けたとしたなら。
それはちょっと面白かったかも。

そうしたら、未来は動いたってことにもなるから。

けど、今回はバッチリ知ってる展開だったわけだけど。





「ま、お灸は据えてあげないとね」

「え?」





クラウドはきょとんとする。
「あ、その顔可愛いー!」とか言ったら睨まれたけど。

まあ、わざと檻に捕まったのは、それが物語の流れだから。

それに、ユフィにお灸を据える展開にも、このままでなるわけだしね。





「じゃ、また追いかけますか!」





何とも言えない顔のクラウド。
シドは再びブチ切れる。

そんなこんなで、あたしたちはまたユフィを探しに街へ出たのだった。



To be continued

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