ひみつごと
神羅の追っ手が怖すぎてマジで死ぬかと思ったハイウェイ。
なんとか命あるままに駆け抜け、果てまで辿りつけば皆は決意を固めた。
それは、旅をはじめる覚悟だ。
クラウドは言った。
セフィロスは生きている。俺は…あのときの決着をつけなくてはならない、と。
それを聞いたバレットはそれが星を救う事になるのかと尋ね、共に行くことを決めた。
エアリスも頷いた。
知りたい事がたくさんある。いろいろ、本当にたくさん。
星を救うため。過去との決着をつけるため。
知りたいことを知るため。
理由はそれぞれだけど、それは全部旅という答えに繋がっていた。
「はー…!解放感〜…!」
ハイウェイからロープを伝いミッドガルのゲートの外に出る。
このロープを伝う作業もなかなか骨が折れたけど、その前に迫ってくる神羅の追っ手から逃げるあの命がけのハイウェイレースは本当寿命縮んだ感じがある…。
バレットとレッドXIIIが盾になってくれる…なんてふざけて言ってみたりしたけど、実際にふたりとも荷台の上ではかなり気遣ってくれて感謝の気持ちでいっぱいだ。
クラウドが戦いながら逃げたとはいえ、襲いかかってくるあの勢いは凄かった。
だから、今のこの状況はただただひたすら清々しい。
あたしは体をうーん…と伸ばしてこの平和な空気を堪能していた。
「ねえ、レッドXIIIもしばらくは一緒にいてくれるんでしょ?」
そして、その穏やかな解放感からあたしは今までなかなか話せていない相手に夢中だった。
レッドXIII。あたしは彼に視線を合わせる様にしゃがみ、にっこり笑って話しかけていた。
「私は故郷に帰るつもりだ。それまではいっしょに行ってやる」
「ほんとー?ふふふ、それは有り難き幸せ〜」
嬉しいなあ〜なんて、にへらと笑う。
…って、こんなお芝居続けるのもアレだよね。
もうここからは彼もしっかりと仲間なわけだし。
異世界の事、記憶の事。
ちょっと前から考えてたんだけど、この旅で行動を共にする…というか、ゲームで仲間になる9人には仲間に加わった時点であたし自身のことはきっちりと話すことにしようと思った。
メインメンバーである9人は変に考えず素直に信用を置いて大丈夫だしね。
まあ、ひとりだけ仲間になった時点だと引っ掛かる人もいるけど…そこはまた少し先の話しだし、彼だって本心を見れば信頼に値するだろう。
さてどう説明しようかなあ…。
そんな風にジッとレッドXIIIを見つめていると、その視線が気になるらしい彼の方から声を掛けてきてくれた。
「…私の顔に何かついているか」
「ううん。なんにも。ん〜、しいて言うならその話し方、疲れないのかなって」
「!!」
そう言えば、レッドXIIIはわかりやすくびくっと反応した。
それを見たら、思わずふっと笑ってしまった。
まあ、実際はこっちが彼の素なわけなんだけども。
結構ストレートに突っ込んじゃったけど、まあ切り口はこれで充分だろう。
ここからは少し小声で、あたしは彼に話をした。
「…あのさ、結構無理してるでしょ?その話し方とか、私とかさ」
「…何のことだ」
「ふふふー。隠そうとしても無駄無駄〜♪…なんて、ごめんね。でも本当、あたしにとっては意味ないんだ、それ。あたし、この世界の色んな事情ちょこちょこ知ってて、君の事も結構知ってるの」
「…私を、知ってる…?」
怪訝そうな顔になるレッドXIII。
まあ当然の反応だ。そろそろこんな反応にも慣れてきましたとも。
でも、これがきっと最後のトドメだ。
あたしは彼の耳にそっと口を寄せて、小さな声でそっとひとつの名前を囁いた。
「本当の名前はナナキ、でしょ?」
「…!!!」
さっきのなんて比べ物にならない。
それを聞いたレッドXIIIは目を見開き、物凄く驚いた顔してあたしを見てきた。
それを見たらあたしはまた笑っちゃったけど。
だって本当に驚いて、言葉もなんかどもっちゃってたから。
「な…、う…」
「ああ、大丈夫大丈夫。皆には言ったりしないから。そこは安心してくれて大丈夫だよ」
ぽふぽふっと頭の赤い毛に触れながらにっこり笑った。
とりあえず嫌がる様な素振りはなく大人しく撫でられてくれている。
うふ、これはなかなか嬉しいもんです。
するとレッドXIIIはおずっとあたしを見上げて尋ねてきた。
「…皆はってことは、ナマエしか知らないって事?」
「お。口調直ったね」
彼の口調は先程とは打って変わり、180度ぐるりと真逆になった。
冷静沈着で寡黙な雰囲気は消える。
それは幼さの残る、可愛らしい喋り方だ。
彼は諦めたようにため息交じりに言った。
「…だって、無駄なんでしょ?」
「うん、無駄。ふふ、そっちの方がいいのに〜」
「…オイラにも色々あるんだよ」
「わかってるわかってる。勇敢な戦士だもんね」
「え…」
「ああ、ごめんごめん。えっと、あたししか知らないか、だよね。うん。そうなるよ」
「…どういうこと?」
「ん〜。まあ話すと色々長くなるからさ、道中で話す感じでもいい?多分ここから一番近い街にこれからすぐ行くことになるだろうから」
「…わかった。あ、でも…あのさ、皆の前で本当の名前で呼ばないで欲しいんだけど…」
「素が出ちゃうから?おっけ!その辺は心配しなくてもバラす気ないから大丈夫だよ〜」
任せとけ、とでも言うようにトンっと胸を叩いた。
レッドXIIIが自分のことを話すのはまだまだ先の話。
彼の故郷であるコスモキャニオンについてからだ。
その前に皆にこれをばらすのは野暮ってもんでしょう。
だからもともと、レッドXIIIに言われるまでも無く余計なことを言うつもりはさらさらなかった。
「なにをこそこそとふたりで話しているんだ」
「お?」
その時、しゃがんでいた頭上から声を掛けられた。
レッドXIIIと見上げれば、そこにいたのはクラウドだった。
「おーう、クラウドさん!ご機嫌うるわしゅう?」
「何を言ってるんだ…。お前たち、話聞いていたのか?」
「え?」
「…その様子は聞いてなかっただろ…」
きょとんとしたあたしの顔を見たクラウドは「はあ…」とため息をついた。
何でも、これからここから一番近い町であるカームに向かう事と、6人でぞろぞろ向かうのもなんだからと二手に分かれていくことにしたと言う事らしい。
うん、まあゲーム通りの展開だね。
「そっか。二手に分かれるならあたしレッドXIIIと行きたいな、クラウド」
「え?」
「まだ出会ったばっかだし、色々話してみたくてさ。ね!」
先程道中に話そうと言っていたこともあり、レッドXIIIと行動できるようクラウドに頼んでみた。
レッドXIIIにも同意を求めてみれば、彼も賛成するように頷いてくれた。
「ああ。私も、彼女と話したい事がある」
「ねー!」
あたしはそうしてポフポフとまたレッドXIIIの頭を撫でた。
すると、それを見ていたエアリスとティファが少し驚いたように言った。
「あ。凄い、仲良くなってる。いつの間に?」
「本当。この短期間でもう仲良くなったの?」
「へへへ〜。まあ、ってことでクラウド!よろしくね」
話は聞いていなかった、けどクラウドがこれからの団体行動ではリーダーを務めるという風に話が進んでいたはずだ。ゲームの中では。
まあ、あたしだけのワガママでは無くレッドXIIIからも頼んだことは効果があったのだろう。
クラウドは少し悩んだみたいだったけど、あたしの要望も通った上でサッと2チームの編成は決まった。
「じゃあ…ナマエとレッドXIIIは俺と。バレットはティファとエアリスを頼む」
To be continued
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