駆け抜けるハイウェイ


「…ルーファウスって、強いのかしら?」

「んー…まぁ弱いってことは無いんじゃないかなぁ。戦える人だとは思うけど」





神羅ビルも最終局面。
あたしとティファはルーファウスと戦うクラウドの戻りを一つ下のフロアで待っていた。

ティファとの会話はもっぱらルーファウスのこと。
まあ当然と言えば当然の話だった。





「ふふ、流石の知識?」

「うーん、今回はわりとあくまであたしの主観って感じだけどね〜」

「主観?」

「あー…いや、まぁだいたい主観か。物語をどう感じてるかって事だもんね」

「ふーん…」





ルーファウスという男は強いのかどうか。

あのキリッとした目で銃向けられたら恐怖以外の何物でも無さそうだ。
いやまず銃を向けられること自体が恐怖なんだけど。

まあ変な話をすればボスと言う扱いなのだし、腕は立つを考えていいんだろうとは思う。





「とりあえず、弱くはないんじゃないかな?」

「そう…まあ私もなんとなく厄介そうとは思ったけど」

「え、そーなの?」

「なんていうのかな、雰囲気とか立ち振る舞いとか…隙がないって感じ?」

「へー。やっぱそういうのあるんだ?流石格闘家!」

「ふふっ、どうも」





ティファとそんな話をして、どれくらいだろう。
多分そんなには経っていない。数分とかそんな話だ。

しばらくすれば上の階からタッ…と誰かの足音の足音が聞こえた。
あたしとティファはハッとして上を見上げる。

待ち人来たれり。そこにはクラウドの姿があった。





「あ!クラウド!」

「クラウド!」





あたしとティファは名前を呼んだ。
するとクラウドはすぐに気が付き階段を駆け下りてきた。





「おつかれ!クラウド!」

「ルーファウスは?」

「とどめはさせなかった。面倒なことになりそうだ」





ティファがルーファウスのことを尋ねればクラウドは少し苦い顔をした。

上での戦闘、クラウドは奮闘するけれど結局ルーファウスはヘリに乗ってその場を後にしてしまう。

だからそう時間は掛からないだろうと踏んでいたわけなんだけども。
でも、あたしは戻ってきたクラウドを見て少し気になるものを見つけた。





「坊ちゃんのペットに引っ掻かれた?」

「え?」





あたしはそう言いながらクラウドの頬に手を伸ばした。
クラウドは目を丸くする。

伸ばした、と言っても触れたわけじゃない。

触れない指の先にあるのはひとつの傷だ。
あたしはそこに回復魔法を唱えた。





「ケアル」





癒しの光がクラウドの頬を包み、その傷が消えていく。
光が収まると、クラウドは頬に軽く触れ、そしてあたしを見た。





「よっし成功!うふふ、完璧!」





綺麗になった頬を見て、あたしは満足げににっこりと笑った。

でもクラウドはなんか無反応。
というか、ぼーっとしてる感じ。






「おおーい。クラウドー?大丈夫か〜?」

「え、あ、ああ…怪我、してたか?」

「うん。軽く?もう綺麗だよ。へへ、結構魔法に慣れてきた感じはあるよね〜」

「…そう、だな」





そんなに目の前に手が来たのがビックリしただろうか。
なんだかたどたどしいクラウドだが、すぐに首を振ってお礼をくれた。





「悪い。世話を掛けた」

「いいえ〜!綺麗なお顔が台無しだぞ!」

「…あんたな」





最後に一言付け足せば、クラウドは息をついたけど。
でも本当本当。このうるわしきお顔に傷を残すなんて許せませんってね。

まあなんにせよ、これで事は一段落だ。

あたしはティファに振り返り、早く脱出するよう呼びかけた。





「まあね、んじゃ、さっさと退散しちゃお!」

「ええ。そうね、行きましょう」





用は全て済んだ。
ならば今度こそさっさと脱出してしまおう。

そうしてあたしたちは出口にむかうべく駆け出した。





「普通に逃げたんじゃ追いかけられる。何か乗り物でも使おう」

「乗り物!!」





駆け出しながらの会話。
クラウドが発した乗り物という単語にあたしは多分…いや、絶対目を輝かせた。

当然、クラウドは怪訝そうな、ティファは目を丸くしてたけど。





「どうしたの、ナマエ。乗り物、嬉しいの?車とか、何の変哲もないものだと思うけど」

「うん、まあそうだけどね〜」





ティファに聞かれ、へらりと返す。
まあ確かに車にバイクに、それ自体は物珍しくもなんともないものだ。

けどね、そうだよバイクなんだよ!ハーディ=デイトナさんですよ!
クラウドのあのバイク姿を生で見れる!ってのはかなりかなりオイシイじゃないですかあ!って。





「クラウド、やっぱあんた素敵だよ。君が大将だ」

「何の話だ」





グッと親指立てたらまたクラウドには怪訝そうな顔をされた。
いやね、やっぱり何だかんだクラウドに関する事はテンションの上がり具合がこうね。

でも本当、バイクに乗るクラウドが見れるのは個人的にはかなり嬉しい。





「確か、展示でバイクとトラックがあったはずだな。俺はバイクを使って追っ手を振り払いながら行く。ティファとナマエはトラックでエアリス達を拾ってとにかく先に逃げてくれ」

「わかったわ」

「はいはーい」





大方、逃げるプランは決まった。

エアリス達はもう1階についただろうか。

エレベーターの中でも確か戦闘があり、それを退けた後は確か入り口のところでもたついてたはずだ。
神羅側が捕えたサンプルの脱走を黙って見ているわけも無いのだから。





「バレット!!」

「おーい!みんなー!」





あたしとティファはバイクを取りに行ったクラウドと一度別れ、先に階段を下りた。
1階では記憶通りエアリスたちがいて、外を見てすっかり囲まれている事に頭を悩ませているところだった。





「ティファ!ナマエ!クラウドは!?」

「いいから、こっち!」

「早く早く!」

「ええ!?どうしたんだよ?クラウドは?」

「話は後!いいから早く!」

「クラウドは心配ご無用だよ!」





バレットは何がどうなってると困惑の声を上げていたけど、今は説明の時間は省きたい。
あたしとティファが急いでくれと誘導すれば、皆はとりあえずそれに従いついて来てくれた。

真っ直ぐに向かった先は展示してあるトラックだ。

ティファは運転席に座り、すぐさまそのエンジンを掛ける。
あたしはエアリスを助手席へと押し込んだ。





「エアリス、急いで!」

「でも、ナマエは?荷台?危ないよ」

「大丈夫!バレットとレッドXIIIが盾になってくれる!」

「おい…好き勝手いってんじゃねえぞ」





二台に乗り込むバレットに睨まれた。
まあこんな冗談飛ばしてる場合じゃないね。

だってそこまで追っ手が来てるのは見えてる。

あたしはエアリスを押し込んだ助手席の扉を閉めるとトラックの荷台へと飛び乗った。
それとほぼ同時にティファはアクセルを踏み、トラックは勢いよくハイウェイへと走り出した。

そしてまた、ひとりバイクに乗ったクラウドの姿も後方に確認できた。

そしたらやっぱり、こみ上げてくるものはあった。





「うっは!バイク!クラウドかっこいい!」

「なるほどな…クラウドの奴はバイクで追っ手を蹴散らすってわけか」

「そうそう。頼もしい限りだね。ね、レッドXIII」

「…何故私に話を振るのだ。まあ…そうだな」

「んふふっ」





荷台でふたりと話しながらあたしはクラウドを見やる。

バイクに跨り、大剣を握るその姿。
本当、かなり良いよ。生で見れたそれはホント純粋に感動しかないね!

ただね、追ってはトラックにも迫ってくるからあんまり堪能出来なかったってのが正直なところだけど。

まあなんにせよ、駆け抜けていくハイウェイにどんどんと遠くなっていく神羅ビルを見る。

これで物語は1章の幕を閉じる…なんて。
でも確かに、今はそんな気分だった。



To be continued

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