ノエル
「目には目を、歯には歯を…か」
「つまりは混沌には混沌をっつーことだね」
逸楽の宮殿ザナドゥで手に入れたカオスクリスタル。
それをホープに渡すと、試作品として混沌の力を持った剣フツノミタマを渡してくれた。
剣と言えば勿論ノエル。
新しい剣と手にしたノエルは、使い勝手を試すようにヒュッ…と一振りして見せた。
「どう?」
「うん。結構いい感じ。混沌なんて言うから、どんなもんかと思ったけど」
「そっか。そりゃ何よりで。でも、ちょっと皮肉だね。カオスに立ち向かおうとしてるのに、こっちもカオスの力に頼るとか」
「そうかもしれないな。でも、使えるものは何でも使う。これで勝てる可能性が、少しでも増えるなら」
「…うん。そうだね」
ノエルの意志は堅い。
剣を見つめるその瞳から、その強さは感じ取れた。
「不安?」
「え?」
「意外。そんな顔するんだな」
「……意外は余計です」
「ははは、冗談。ごめん。もう…きっと終わりも目前だもんな」
「……うん」
きっともうすぐ、あたしたちはカイアスと決着をつける。
歴史を巡るこの旅の終わり…。
目指し続けた旅の終着点。
あたしはずっと、この時を望んでいた。
歴史を正しく紡ぎ、破滅の未来を食い止める。
それを信じて…前だけ見てきた。
だけど…歴史なんて、とても壮大な話だ。
そんなものを歪めてしまう事が出来るような相手…。
目の前に迫ったその事実に、少しだけ不安を覚えたのは図星だった。
「平気。守るよ」
「え?」
でもその時、目の前に居るノエルはそう言った。
手には変わらず、カオスの剣が光る。
「もう、嫌なんだ。大切な誰かを失うの」
「……ノエル」
「あんたはさ…どんな時代に流されても、いつも前を見て笑ってた。俺、結構励まされてたよ。ああ、こうやって笑える未来が欲しいって」
「…あの、結構照れるけど…また、冗談?」
「悪いけど、今度は本気。だから守る。その為なら、何でも使う。カオス、上等だ」
そう言ってノエルは剣を掲げた。
…力は、使う人によってその形をいくらでも変える。
それはまるで、人の心。
ノエルの剣には、歪みなど無かった。
END
心は女神がくれた贈り物。
人は誰しも心というカオスを持っている。
…とかなんとか、そんな描写があったので、カオスも使いようだよな、と。
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