アーロン
「重いですねえ…やっぱ」
「…だから無理だと言っただろう」
ふんぬ、と力を込めたのは大きな大きな大きな剣。
その大きさに見合ったもので、重量も相当だ。
物理での戦いはどちらかと言えば得意な方だ。
でも、私が操るのはティーダが持つよりも軽い剣。
パワーよりもスピード重視で、ある程度は魔法でもカバー出来る。
そんな私がアーロンさんの使う大剣を握ってみたのはなんとなくの興味だ。
お許しも取ったし、握ってみたはいいけれど…これは凄い。重くて全然持ちあがらない。
「よくこんなの振り降ろせますね?」
「…それが俺の得意分野だからな」
「アーロンさんの一撃、とっても重そうでいいなあって思ってたんですよ」
「お前のその腕でパワーが期待出来ると思ったのか…」
「いやまあ、だから武器を重くすれば威力上がるかなって」
「…だからと言って俺の武器を持つのは極端すぎるだろう」
「あはははっ、まあ単純にどれくらい重いのかなって興味はあったんですよ」
ぷるぷるしてるあたしを見かねて、アーロンさんは溜め息をつきながら太刀を持ってくれた。
ひょい、っと簡単に担いでしまうのだから、やっぱり凄いと思う。
うん、いや…アーロンさんと何自分を比べてんだって話ではあるのだけれど。
そんなことは言われずともわかっているさ。
「固い敵って私の武器じゃ刃が立ちませんからね。魔法で倒せない事もないけど…ルールーやユウナみたいに魔力が高いって訳でもないから温存しなくちゃならないですし」
「そのために俺がある。得意ではない敵は得意な者に任せればいい」
「それはそう、なんですけどね」
せっかく仲間と旅をしているのだ。
それぞれの得意を活かせばいいって言うのはわかってる。
でも、あたしはユウナを守るガードなんだ。
彼女の信頼に応えうる存在でありたいじゃないか。
だから、もっともっと…いくらでも貪欲に強くなりたいと思ってる。
「お前はスピードに特化している。加えて魔法も得意な方ではあるだろう」
「器用貧乏…って感じですけどね」
「…スピードも魔法も、俺は得意でない分野だ。…そういった意味では、頼りにしているのだがな」
「…え?」
ぴくり、耳が反応した。
…今、この人はあたしを頼りにしているといっただろうか?
あのアーロンさんが?
「…頼りにしているって言いました?」
「ああ」
「まじですか…?あたしを…?」
「ああ」
「アーロンさん、あたしのこと頼りにしてるんですか?」
「……何度聞いて来る」
呆れ顔をされてしまった。
流石に聞きすぎただろうか。
…いやいやでも待ってください。
あ…どうしよう。
…にやけてきたかもしれない。
「…何を笑っている。気味が悪いぞ」
「気味…、酷いですねえ」
意地が悪い人だ。
ああ、でも…聞き間違いじゃない。
今この人は言ってくれたのだ。
誰かに頼りもされていると言うのは、こんなにも嬉しいものなのか。
「御免なさい。嬉しくて」
もしかしたら、この人だから余計に…かもしれないけどね。
END
アーロンってめっちゃ強いですけど、素早い敵を攻撃した時のあのスカッ…が切ない。(笑)
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