アーロン

「好きです、アーロンさん」





告白する。
すると思いを告げたその人は私を見てとても鬱陶しそうな顔をした。





「…お前はまたか」

「はい。またです」

「何度も言うが俺は死人だ」

「ええ。何度も聞いてます」





また。何度も。
このやり取りで、常日頃からこのやり取りが繰り返されているのは伺えるだろう。

そう。私は何度も何度も、この人に愛の告白を続けている。

そりゃもう隙あらば、飽きることなく幾度となく。





「アーロンさんこそ、そろそろ私の愛を受けいれたらどうなんですか」

「お前こそいい加減に諦めろ」

「無理でーす」





召喚士ユウナのガードとして旅をする中。

私は、伝説のガードに恋をした。

最初は、伝説のガードなんて凄い人が仲間にいるもんだと思っただけだった。
でも、旅を続けていくうちに、その気持ちは変化していく。

単純な強さに感心して。
筋が通った考え方に憧れて。

それに…すごくすごく、良い人で。

少しずつ、少しずつ。
でも気が付いたらもうどっぷり。

あたしはもう、この人のすべてに惚れこんでしまっていた。





「死人って言うのは、諦める理由にはならないですよ。それも何度も言ってますけど」





座ってるアーロンさんの隣に私も腰を下ろしながら、言う。

初めて告白した時、死人だって教えてもらった。

誰にも言っていなかった秘密。
それを口にして、真摯に向き合って答えてくれた。

お前はバラさないだろうって、そこにはそんな信頼も含まれていて。

そんなこと言われたら、むしろ余計に好きになっちゃったよねって話だ。





「十分諦める理由、断る理由になるだろう」

「そうですか?私が死ぬ時までアーロンさんがスピラに留まってくれたらよろしい話かと」

「…お前な」





あ、呆れ顔された。

死人は異界へ。
まあそりゃそうだ。

それがこの世の摂理だろう。

でも。





「別に悪さしようってわけじゃないし。私が生きている間、傍にいてくださいってだけの話ですよ」

「だけではないだろう…」





アーロンさんは案外、堅物だ。
最初は全然そんな風には思わなかったけど、知っていくうちに真面目な人だよなって思うようになった。

そんなところも、素敵な部分なんだけど。





「ねえ、アーロンさん」





そっ…と赤い衣に触れる。
ちらりと視線を寄越す、アーロンさん。





「死人は未練があるから留まるんですよね」

「…それがなんだ」





死人は、死に切れぬ想いを抱えている。
だからこの場に留まり、彷徨う。

それならば…。

衣から、そっと…大きな手に手を重ねる。





「つまり、私がアーロンさんの未練になってしまえばいいわけですよね」





にこーっと微笑んで言う。
すると、アーロンさんは頭を抱えた。





「…恐ろしい女だな」

「ふふふ、アーロンさんが諦めた方が絶対早いですってー!」

「……。」





ああ、無言。
そんな様子に私はまた笑う。

でも、アーロンさんも、小さくフッと笑ってた。



END


これ書きたくて始めたシリーズかもしれない。


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