クラウド

「なあ、どうして戻って来たんだ?」

「うん?」





ハイウインドの甲板部。
風に当たれるこの場所が私のいつもの定位置だ。

最後の戦いへの決意を固め、再びこの飛空艇に乗り込んだ今もそれは変わらない。

飛空艇の切る風を堪能していれば、扉が開いて声を掛けられる。
私は振り向き、声を掛けてきた彼を見て尋ね返した。





「なーに?戻ってこない方がよかった?」

「え、あ、いや…すまない、違う。でも…どうして戻って来てくれたんだって聞くのは、ちょっと、違う気がして」

「んー、まあ、そーねー」





決戦を前に、皆は自分の大切なものを確かめるために一度飛空艇を降りた。
だけど結局全員が戦うことを決めて戻ってきた。

その時、飛空艇を降りなかったクラウドは言ったのだ。ありがとうと。

でも、戻ってきたのは自分の為だと、皆はそう答えた。
だから彼はきっと、戻ってきてくれたと言うのは違う気がしたのだろう。





「…あんたには、故郷があって、帰りを迎えてくれる人がいる。前にあんたの村に行った時、それを凄く感じたんだ」

「だからこそ、でしょ。うん。私、あの村に生まれて、本当に良かったって思う。それを再確認出来た。確かめに行けってクラウドが言ってくれたおかげだね」

「そうか…」





皆が一度飛空艇を降りたのは、クラウドが自分の戦う理由を確かめてみてくれと言ったから。
だから皆、自分がなんの為に戦うのか、大切なものを確かめに行った。

あたしも故郷に戻って、それを考えた。

そう、昨夜は凄く考えた。
大切な物。

故郷を、この場所を守りたい。それを強く想ったよ。
そして同時に、クラウドのことを考えた。





「うん。でも、ま…戻ってきてくれた、で間違いでも無いのかもね」

「え…?」





彼をじっと見つめてみる。
きょとんとしたその顔を見て、私は思わず笑った。





「クラウドはもう戦う理由をちゃんと知ってるって言った。絶対に、クラウドだけは戦いに行く。私は、それも手伝いたいと思ったの。だから、戻ってきた」

「……。」





それも素直な気持ちだった。紛れもなく。
昨日の一夜で、凄くそう思った。

すると彼は、手の甲で口元を隠した。
まるで照れているような反応。

そして小さく呟いた。





「…そんなこと言われると、自惚れる」





あたしはつい吹き出した。
ああ、なんだか良い反応が見れた気がする。





「自惚れて、どうぞ?」





支えになって、一緒に戦う。
また明日も会いたいから、だから戻ってきたのだから。



END


決戦前、というか物語後半の吹っ切れたクラウドが本当に好きです。


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