アーロン

まずい。非常にまずい。
今あたしは顔では平静を装いながら心の中で冷や汗をだらだらかいている。

理由は右足首から響いているズキンズキンという鈍い痛みだ。

原因は先程の戦闘で魔物の攻撃を避けた際、着地に失敗したこと。

でも確かに変な捻り方したかもとは思ったけどその時はそんなに痛くなかったのに。
戦ってる最中は興奮というか、やっぱ魔物に神経がいっていたってこと?

なんだこれは…。やっべ…戦闘が終わった途端に急に痛くなってきたぞ。





「おい」

「!」





その時、低い声に呼びかけられた。
ぱっと見上げればそこにいたのは伝説のガード様、その名もアーロンさん。

サングラスで瞳はよく見えない。
でもなんかすっごい見られてるってことはよくわかった。





「…なにを真顔で突っ立っている」

「へ」





そして、そう問いかけられた。
というかむしろ怪訝そうに言われた。

え、真顔…だっただろうか。

どうやら平然を装え装えと唱えていたからか、逆に真顔になっていたらしい。
真顔で直立。そりゃなんとも怪しい。

あたしは慌てて言い訳を探した。
でもその前だった。





「足を捻ったか」

「え!?」





あたしが言い訳を口にする前に、アーロンさんが図星をついて来た。
多分びっくりで目が丸くなった。





「フッ…さっき魔物を体当たりを避けた時、少し体勢を崩していたようだからな」

「!…気づいてたんですか?はー…流石、侮れませんねえ」





結構、普通に驚いた。
だって確かにちょっとよろけたけど、そこまで大きな反応はしなかったはずだから。

ぶっちゃけ誰にも気づかれてない自信あったのに。





「よろけていた瞬間を見たからな。もしや、と思っただけだ」

「…はは、もしやでしたねえ…」

「旅行公司まではそう距離はないと思うが」

「あ、はい。ごめんなさい、一度そこで休憩取ってもらえると有り難いかも」

「元々そのつもりだ。だが…」

「?…え、うわあ?!」






アーロンさんが目の前まで歩み寄ってきた。
かと思えば、急に足が宙に浮いた。

もとい、力強く抱きかかえられた。





「ちょ、え、あ、アーロンさん!?」

「ジタバタするな」

「!!」






まるで魔物を脅すとき。
いや、まあそれより凄みはなかったけども。

でもアーロンさんにそんなこと言われればとりあえず静止せねば!とピタッと動かないように手足に力を込めた。いやむしろ硬直した。

で、改めて顧みる。
今の状況、いわゆる姫抱きというやつで。

…い、いやいやいや!!
でもでもやっぱりこれってどういう状況よ!?





「アーロンさん…!?別に歩けますけど私!?」

「悪化されたらたまらん。ユウナの旅の妨げになるぞ」

「うぐっ…」





旅の妨げ…そりゃごもっともで。
確かに動かせば悪化する可能性は大で、出来るだけおとなしくしてるのは吉だろうけど。





「…すみません」

「ああ、おとなしくしてろ」

「…ハイ」






折れた。
とりあえず、アーロンさんに負担がかからないように一度体制だけ整えた。

肩と首のあたりに手をかけて…。

うーん、なんともすんごい状況である。





「…もういっそ伝説のガード様にだっこしてもらうという状況を楽しむことにします」

「…図太いな」

「よく言われます」

「フッ…いい性格だ」



END


アーロンは結構全体的に状況は見てそう。


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