プロンプト(トード)

「あら、カエルのプロンプトくんじゃあーりませんか」

「いや、もう戻ってるから…」





終わった戦闘。
パンパンと汚れを落とす様に手を叩いて一緒に戦っていた彼に振り返る。

いや、一緒に戦っていた感覚無いけど。
あたしひとりで戦ってた気がするけど。

にっこり笑ったのはひとりで戦わせやがってこの野郎って事で。

今、あたしはプロンプトとふたりで行動をしていた。
彼が写真を撮りたいというのでそれに付き合っていたのだ。
それで、まあ外だから普通にモンスターに遭遇したわけだけど、その戦闘で彼はまんまと敵の魔法にかかりカエルになってぴょんぴょこしてくれちゃってたわけだった。





「まったくもう。気を付けてよ。ここらの敵そんな強くないから良かったけどさ」

「はい…ご迷惑をお掛けしました。大変感謝してます」

「よろしいです」





文句を言えば彼も反省を見せた。
なんとかなった事だし、そこまで咎める程あたしも鬼じゃない。

だからあたしは笑ってプロンプトの肩をトントンと叩いた。
ああ、今度は普通の笑顔でね。





「でも本当気を付けてね、もうおとめのキッス無いから」

「うん。わかった」

「…どかしたの?」





そう遠出をするわけじゃないからと最低限のアイテムしか持ってきていない。
そのことをプロンプトに言えば、彼は頷いたものの何か考えているような顔をしていた。





「いやさ、おとめのキッスか〜って」

「は?」





尋ねてみれば、なんとも意味不明な言葉が返ってきた。
思わず顔をしかめてしまう。

するとプロンプトは何かを思いついたように顔をハッとさせると、まるで何か悪戯を思いつた様に楽しそうに笑って言った。





「ってことはだよ、もしカエルになってもキスしてくれたら戻るんじゃないかなって!」

「馬鹿なの?」





プロンプトにテンションは合わせない。
それを聞いたあたしはスパーンとその言葉を一刀両断した。

あたしのそんな冷めた反応を見たプロンプトは「えー!」と不満げに叫んだ。





「すっごいくだらないものを見る目だね!?」

「実際くだらないよね?」

「いやそうなんだけど…。ちょっと照れるとかそういうの期待したり…」

「照れるわけないよね?」

「…塩対応すぎて俺泣きそう」





あたしが冷めることくらい想像つきそうなものだけど。

プロンプトが写真を撮りたいと言った場所はもうすぐ近くだ。
あたしはプロンプトを放置気味にさっさと先を歩き出す。

でもその際、ふっとひとつだけ彼に会話を合わせた。





「だいたいあれ童話が元でしょ。カエルは王子様。あんた王子じゃないでしょうに…って、そうかノクトなら本当にカエルの王子様になるのか」

「え!?」





はた、と思いついた。
そうだよ、近くに本当の王子様いるし。

なんともくだらない話。
でもなんかこう、はっとしたと言うか。

童話の再現がまさに出来ることに気が付いて変な感動を覚えた。

いやだからってどうもしないけど。

でもその直後、急にグインと勢いよく肩を掴まれプロンプトに向き合わされた。





「うわっ!ちょ、プロン…」

「ちょ、ノクトならすんの!?」

「は…?」





ビックリさせるなと言おうとすれば、両肩を掴まれたまま物凄い勢いでそんなことを言われた。
頭がついていかない。あたしは思わずぽかんとした。





「…何を言ってる?」

「だってノクトならカエルの王子様になるからするって…」

「言ってないよね」





なんか物凄い飛躍してるプロンプトの頭の中。
童話通りになるって言っただけで誰もするなんて言ってない。

そう言えば、彼はどっと疲れたような顔をして肩を撫で下ろしていた。





「あ、そ、そう?なんだ〜吃驚させないでよ〜…」

「あんたが勝手に吃驚してるだけだよね」

「本当塩対応!」





うるさい男である。
そのテンション、疲れないのであろうか。

まあ、このテンションは多少なりとも作っているものなのは知っているけどね。





「プロンプト」

「うん?…え」





あたしは彼を呼んだ。
そしてくいっと胸ぐらを掴んでグイッと彼を引き寄せる。

瞳を閉じて、頬に触れたのは一瞬。

目を丸くする彼の顔をすぐ傍に、あたしは静かにこう言った。





「あたしはカエルにキスする趣味は無い。同時に、君以外にする気も無い」

「………。」





目を丸く、あたしを見つめていたプロンプト。
でもその視線は少しあたしから外れる。

照れたのであろう。
それはほんのり染まった頬から明らか。

でも、負けじと思ったのかどうかのか。
視線を逸らしたまま、彼は小さく呟いた。





「…口が良かったなあ…」

「…ふざけてんの?」

「…本当だよ〜」





なんだか情けない声。
そのまま顔を隠す様にあたしの肩に顔をうずめるプロンプト。

そして背に掌のぬくもりを感じたと思ったら、くっと抱き寄せられた。

あんまり遅くなるとグラディオやイグニスに怒られそうだけど。
まあ…それならそれでもいいか。ふたりで怒られよう。

あたしは彼の頭に手を伸ばし、ぽんぽんとその金色の髪を撫でた。



END


たぶん7以来の状態異常カエルさん。綺麗なグラで見れるのなんか感動した。(笑)


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