スコール(サイレス)

「あはは、災難だったねえ…スコール」

「………。」





声を掛ければむすっと少し不機嫌そうな顔。
そんな表情を浮かべているのは我らが班長スコールだ。

彼を見て私は苦笑う。
その理由は簡単。それは私の今の言葉通り、彼が災難であるからだ。

腕を組み、むすっと何も言わない…否、言えないスコール。
彼は先程の戦闘でサイレスを喰らい、今現在沈黙の状態異常に掛かってしまっていた。





「エスナ、誰かから分けて貰って来れば良かったね」

「……。」





現在、ここにいるのは私とスコールのふたりだけだ。

何故ふたりで戦闘に赴いていたのかというと、それはこの周辺に出るモンスターの魔法をドローする為だった。。
私がドローしに行きたいと言ったら、スコールも自分もストックしたいと言い、そして現在に至ると。

任務でもないし、そう街から離れるわけでも無いしと油断したのが悪かった。
私はてっきりスコールがエスナをストックしてるものだと…恐らくスコールもその逆だったのかもしれない。 





「さてと、どうしたものかなあ」

「……。」





入ってなかったと記憶しているけど、とりあえず鞄の中に山彦草を探しながらそう呟く。

まあね、勿論当たり前だけど返事はない。
最も、スコールはもともと寡黙な人だから沈黙状態でも然程違和感ないんだけど。

これがセルフィやゼルだったら笑っちゃうんだろうけどね。





「うーん…エスナがドロー出来そうなモンスターこの辺にいたかな?」





鞄の中にやはりアイテムは無い。
となれば次の作戦。今度はドローが出来ないかと辺りを見渡してみる。

でもそれも正直この辺には居なかった気がするんだよなあ…と思う。

そんな時だった。





「………。」

「え?」





私は振り返った。
理由は簡単。とんとん、と肩を叩かれたからだ。

今この場にそんな事をする人はひとりしかいない。

振り返えると、私の肩にスコールの手が乗っていた。





「スコール…?」

「………。」

「あ、やっぱ町もどる?」





振り向いた私に彼は街の方を指差した。
聞いてみればやはり頷く。だから私も頷いた。





「うん、じゃあ戻ろっか。すぐそこだけど声出せないから気を付けて。魔法なら私に任せてね」





そうして声を掛ければ彼はまた頷いて街の方へと歩いていく。
私もその背中を駆け足で追い駆けた。

ただ、その背中を見て思うことが一つ。

なんというか…ちょっとビックリした。





「……。」





黙って歩く。口にはしない。
というか、言ったところで微妙な顔されるだけだろうし。

じゃあ何にビックリしたのか。
私はそっと、自分の肩に触れた。

…さっき、スコールに叩かれたところ。

いや、ね。
別にそう大した話じゃないのはわかってる。

たださ、スコールってこう…あまり人と関わりたがらないじゃない。
スキンシップなんて尚のこと。

声が出せないんだから、そうなれば手を使うしかないってことになるのは自然なんだけど。





「………。」





ああ、なんだか変なカンジ。
くすぐったいような。

でも嫌って言うわけじゃなくて…むしろ。

本当、変な話。
でもなんとなく、ちょっとだけ嬉しいな…なんて。

私はそんなことを思っていた。



END


スコールにしようかクラウドにしようか悩んだ話です。


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