ホープ(ダル)

「……すみ…ません…」

「なんのなんの」





背中から弱々しい謝罪の声が聞こえた。
それは本当にすぐ近く。

私は気にする必要はないと首を横に振った。
そして背負い直す様に腕を動かして位置を整える。

すると、ぐったりとした頭が私の肩の上にうずまった。





「それにしても災難だったねえ。ごめんね、私ヒーラー向いてないしさ」

「…いえ…」





相変わらず弱々しいこの声の主はホープだ。
彼は今、先ほど戦ったモンスターからダルの魔法を受けてしまいぐったりとした虚脱状態になってしまっていた。

これ、結構きついんだよねえ。
エスナでも使えばすぐに解除は出来るものの、掛けられてしまった当の本人はとても魔法を唱えられるほどの気力は無い。
ふたりで食材を集めに来ていたから、他にエスナが唱えられる者も無し。

掛かったのが私だったらホープがすぐ直せたんだけどね。

まあそんなことをあーだこーだ言っても仕方ない。
戻ってライトかヴァニラあたりにさっさとエスナを唱えて貰おう。

そんなこんなで私はホープを背負い、ベースキャンプへと歩いていた。





「…情け…ない、です…」

「気にすんなよ〜。平気平気〜」





ぐったりしながら、さっきからずっと申し訳なさそうにしているホープ。
具合悪いんだから無理に喋る事も無いのに。

困った時はお互い様さ〜。
そんな感じで私は足を進めていく。

するとホープはまた小さな声で「いや…」と呟いた。





「だって…貴女に…背負われるなんて…」

「んー?いいじゃん、別に〜。それともなにか?私の背中はご不満かい少年」

「……好きな人に…こんなの……格好…わるい…」

「ほ、ホープクン?」





なんか変な台詞が聞こえた。
いや、変じゃないけど、…いや変だよね?

耳を疑った私は彼に聞き返した。





「ホープくん?君、自分が何喋ってるかわかってます?」

「……。」

「……。」

「……。」

「……落ちてるし」





謎の台詞を残し、私の背中ですっかり意識を手放しているホープ。
いや怠いんだから寝るのは良いんだけど…いや、これちょっと。





「…マジか」





好きな人。
聞こえた台詞を頭で繰り返す。

なんだかぶわっと体が熱くなった。





「…いきなり何を申すかね、この子は」





相変わらず返事はない。
多分この調子だと自分が何を言ったのかもわかって無さそうな気がする。

言い逃げとは卑怯なり。
でも、私は見逃してあげる程優しくないぞ。





「さーて、なんて問いただすかなあ」





起きた君に何て言おう。
それを考え、私は思わず頬を緩ませる。

ああ、なんだか凄くワクワクしてる。

耳元で聞こえた声。
そして背中にある体温を感じながら、私はあたたかい気持ちでグラン=パルスを歩いた。



END


ダルはぶっちゃけ掛かると面倒っていうか13は死活問題だからやーめーてー。


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