アーロン(レイズ)
「レイズ掛けまくったら生き返ったりしないかな」
旅行公司の部屋でぐでっと椅子に沈み掌を見つめる。
そして呟いたのはそんな一言。
「…そんなわけがないだろう」
アーロンはその一言に呆れたように言葉を返してくれた。
「えー」
だらしなく崩していた姿勢から座り直してアーロンに唇を尖らせる。
するとアーロンは変わらず呆れた表情を私に向けてくれた。
「わかりきっていることだろう」
「まあ、そうなんだけど」
そう答えながらスッと少し離れた椅子に座るアーロンに手を掲げてみる。
いや唱えないけど。それは無駄だとわかっているからだ。
彼、アーロンは死人。
こうして普通に話して、触れることだって出来るけど、アーロンは生きていない。
死んだ者は生き返せない。
そんなのスピラに生きる者は嫌というほどわかってる。
レイズではどうしようもないと言う事。
「まあ、わかってるんだけどねー」
唱えなかった掌を泳がせ、指先を躍らせる。
いやわかっちゃいるのよ。
生き返せない事くらい。
でもこう普通に喋ってたりすると変な感じがするというか。
「まあ、生き返って欲しいな〜と思うからそんな事考えるわけなんだけど」
「………。」
呟いた言葉に、何を当たり前のことを…とは思う。
でもまあ、そう思うくらいには私はアーロンを大切に思ってるというか。
「…そう言ってもらえるのは、悪い気はせんがな」
「あらそ?」
するとアーロンもそう返してくれた。
此方を見てはいないけど、その口調は少し穏やかか。
貴方との別れが惜しい。
そう思い、思われるのは、幸せなことだろう。
END
ミヘン街道でアーロンにフェニ尾とか使うと「勘が鈍ったかな…」的な事を言った気がするんですけどそれってたまらんですよね。
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