クラウド

「クラウドはさ、好きな人っているの?」





旅の宿。
腰を下ろした椅子に体を預けると、突然そんな声を掛けられた。





「は?」





思わず漏れた間抜けな声。
いや、あまりに突拍子が無いだろうと言いたい。

問いかけてきた彼女は俺の向かいの椅子に座り、じっと俺を見ていた。





「…いきなりなんだ」

「いや?ただの興味。あと暇つぶし」

「暇つぶし…」

「で?どうなのさ」





相変わらずじっと見られる。
暇つぶしの割に逃がす気は無さそうな目だな…。

今日はかなり歩いたのだ。
その分戦闘も多かったしやっと休めると思ったのに何だか面倒くさいことになったな…。

少しうんざりした気分を覚えつつ、俺は適当に答えて話をさっさと終わらせようとした。





「…興味ないな」

「…いや、21の男がそれはどうなのよ」

「……。」





…駄目だった。返事は失敗だったらしい。
なんだかああだこうだ言われそうな雰囲気だ。

…ああ、面倒そうだ。
想像しただけでうんざりする。

もうこうなったらきっぱりと切ってしまおう。

そう思った俺はふいっと視線を外し、近くにあった冊子に手を伸ばした。





「興味ないものは興味ない」

「つまんないの」





彼女はもう聞く耳をもたない俺の面倒くさそうな態度に唇を尖らせた。
しかしそれも見ないふり。俺は冊子に目を向けたまま。

すると諦めたのか彼女も別の冊子へと手のを伸ばし、椅子に腰かけ直した。





「クラウド、格好いいのに勿体無いね」





そして、最後に聞こえたそんな言葉。
直後、ぱらりと冊子をめくる音がした。

次に聞こえたのは、「あはは!」なんていう笑い声。

俺はちらりそ冊子から視線を外す。
彼女は冊子を見てけらけらと笑っていた。





「………。」





俺は再び視線を手元の冊子へと戻す。
ただ、内容はちっとも頭に入ってはいない。

…今、心臓が変な波の打ち方をした。

いや、現在進行形だ。
どくんどくんと、妙に早く動いてる。





「………。」





突然何を言うんだ。

いや…そんな風に見てもらえていたのか?
そんな事実に驚くと同時にこみ上げるのは嬉しいという感情だ。

どくんどくん、心臓の音が鮮明に聞こえる。





「ねえ、クラウド!これ超面白いよ?」

「っ」





するとその時、また突然に話しかけられた。
今度は冊子を俺の方に広げてニッコリと笑っている。

…まるでもうさっきの話など彼方にでも忘れてしまったように。





「……。」

「クラウド?」





視線はよこしているのに、何も反応しない俺に首を傾げる彼女。

…もし。
もしも、あんたの事が気になると告げたら…あんたはどんな反応をする?

絶対に口にするつもりはない台詞。
だけど確かに頭に浮かんだそれに、俺は熱を冷ます様にゆっくり額を抑えた。



END


クラウドはこの手の話になるといつも以上に口数減るイメージ。
デートイベントそんな感じじゃないですか?

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