バッツ

「ケアル!!」





赤い三角が並ぶ模様の入ったローブを揺らし、俺は魔法を唱える。
送った先は剣を握る一人の仲間。彼女は回復魔法で癒された腕を振るい、懸命に敵に向かっていった。

クリスタルの欠片の力で、白魔道士のジョブを試してみることにした俺。
そうして支援に回ってみると、いつも以上に仲間の動きがよく見えることに気が付いた。





「はあっ…!」





ザンッ!と見事に敵を捕らえた刃。

もう結構な付き合いになったと思う。
だけど、あいつの戦う姿をこんなにしっかりと見たのははじめてだったかもしれない。

敵を仕留めた彼女は小さく息をつく。俺はその傍へと足早に駆け寄った。





「おう、お疲れ。怪我してないか?もう一発ケアルしとくか?」

「ううん、さっきので全開。大丈夫だよ。ありがと、バッツ」

「そっか。なら良かった」





笑ってお礼をくれたから、俺も笑みを返した。

それはいつもものやり取りだ。
なにひとつ変わらない、普段通りのもの。

ああ、やっぱりこいつはこいつだと、その笑顔に実感する。
まあ…そんなの当たり前の事なんだけど。





「いやあ、しっかし男前だったな。見事な剣さばきだったぞ」

「…バッツ。覚えておこうか、女の子に男前とか使っても喜ばれないよ」

「ん?あははっ、褒めてるんだけどな?」

「もうちょっと言葉選ぼうよ、ふふっ」





笑う彼女は、さっきの気迫とは別人みたいだった。

まあ…なんというか、華麗に戦うものだなと。
戦うこいつの姿に、俺はそんな感想を抱いたのだ。

思わず見惚れた…っていうのか。

それほどまでに、綺麗に無駄なく的確に彼女は舞っていた。

思い出して、改めて実感する。
そんなことを考えれば、今のその笑顔にもさっきまでとは違う感情が湧いてきた。





「ケアル」

「…!」





俺は手をかざし、もう一度回復魔法を唱えた。
いきなり溢れた光に、こいつはちょっとビックリした顔をしていた。





「バッツ?」

「うーん、一応。念のためな!」

「あ、ありがと」





念のため。そう言ったけど、唱えたのは言葉を探したためだったのかもしれない。

でも、そうして意識してしまえばやっぱり色々考える。

ああ、どうやって話してたっけな…。
なんだかちょっと息苦しい。





「バッツ?」

「あー…と」





視線を軽く空にやって、指で頬を掻く。

だけど、そうして考えれば考えるほど顔に熱が集まっていくのを感じた。

あー、ダメだ…。
こりゃ完全に当てられてる…。

改めて見た、勇ましく、華麗に仕留めるその姿。
本当にやられてしまったのは、俺の方だったのかもしれない…。



END


バッツってケアル出来るんだよなあ…と。(何)
いやケアルに限らず何でも出来るんだけどねこの人。

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