「ちょっこり〜ん!それにしてもライトニングさん、お久しぶりね!」
バサバサと羽根を広げてライトとの再会を喜ぶチョコリーナ。
一方で、ライトのは、お久しぶりと言われて少し困惑しているようだった。
ライトとしては、向けられる笑顔の理由がわからないのが正直なところなのだろう。
『悪いが、会った記憶が無いんだ』
『いいえ!会ってますぅ!あっ、でもきっと覚えてないか』
チョコリーナは会っていると譲らない。
でもライトの方が覚えていないと言うことに関しては納得して引くのは早かった。
『あとね、昔ちょこっと妹さんの旅もお手伝いしたことあるわよ!』
『セラの?…ということは、ナマエもか?』
『あら!そうそう!ナマエちゃんもね!』
あたしの名前が出来てきた。
お、と小さく反応する。
チョコリーナが言っているのはヒストリアクロスでのあの旅のことだ。
確かに、あたしたちはあの旅の中で何度かチョコリーナに会っている。
不思議な事に、彼女はあたしたちと同じようにさまざまな時代に現れてはちょくちょくアイテムを売ってくれていた。
でもあれって、今考えてもやっぱり本当色々不思議だよね。
『セラやナマエの旅に付きあっただと?それが本当ならお前は普通の人間じゃないな』
ライトも違和感にすぐに気が付いた。
あたしたちがしていた旅は、ヒストリアクロスを通って様々な時代を巡るものだった。
そして勿論、時間を飛び越えるなんてことは普通じゃ絶対に出来ない。
ヒストリアクロスを通ると言うのは、いわば女神に与えられた力だから。
『その通り!あたし本当は人間じゃないの!』
すると彼女はサラッとなんだか凄い事をカミングアウトをした。
人間じゃない、とな…。
当然それを聞いたライトは顔をしかめる。
あたしは、どうだっただろう。
やっぱり…とか、そんな気持ちだったかもしれない。
まあ顔をしかめられようがなんだろうが、チョコリーナの方は大して気にしてない様子。
彼女は変わらず、ライトにニッコリ笑顔をよこした。
『でも安心して!あたしは100%貴女の味方だから』
『味方と言われても信用できないな』
『じゃあ敵って言っとく?さあ覚悟せい解放者。わが黄金のクチバシでいざ成敗してくれようぞーとか?』
『もういい。敵に回すと面倒なのはよくわかった』
相変わらずのなかなかのテンションにライトは軽くため息をついた。
信用できない、とは言ったものの、それは疑っている…というわけではなくただ単にいきなり言われても信憑性が薄いぞくらいなものだろう。
とりあえず、彼女のペースはライトにとってはほんの少し面倒くさいと。
なんだかモニター見ながらちょっと笑ってしまった。
楽しい子だよなあって。
あたしも、初めて話した時は結構圧倒されたっけな。
ひとまずここらで彼女とは別れ、ライトは残りの魂のかけらの手掛かりを探すべく再び歩き出した。
けどその時、やっぱり聞かれた。
『ナマエ、あいつがお前たちの旅を手伝ったというのは本当か?』
ライトに尋ねられれば、ホープも自然とこちらを向く。
まあ、そりゃ気になるよね。
モニターの向こうのライトには見えないだろうけど、あたしは頷いてふたりに答えた。
「うん。なんでかわかんないけど色んな時代に現れてね、アイテムとか売ってくれたの」
「つまり、時を超える力を持っていたってこと?」
「んー、そうだと思うけど。どう考えても同一人物だったと思うよ?」
ホープに聞かれ、少し記憶を辿った。
例えばユールとかも色んな時代で会ったけど、ユールに関してはそれぞれの時代で別人だろうっていう感じはあった。
ノエルに対しての反応だったりとか、会話の節々にそういうのちょくちょく感じられたしね。
だけどじゃあチョコリーナはどうかと言えば、彼女に関してはそれぞれの時代じゃなくてどの時代でも同一人物だったと思う。
『なら、お前はあいつが何者か知っているのか』
ライトに聞かれ、少し考えた。
時も越えられる。
ライトを見て久しぶりと喜ぶ。
そんなチョコリーナという人物は、一体何者であるのか。
でもそれは…あたしにもよくわからない。
ただほんの少しだけ、予想みたいなのはある。
だけどそれも確信が無いのが正直なところなのだ。
だからホープに知ってるのかって聞かれた時、なんて答えようか悩んだ。
確かに知っている。でも本当に知ってるのは名前くらい。
でも自分との再会を喜んでくれるその姿に、懐かしい面影を見た気がした。
…あの旅ではじめて会った時になんとなく、あれ…?って思った。
ただその発想は自分でもかなりぶっ飛んでると思うくらいのもの。
だけど出会うごとに、話を聞くごとに、そうなんじゃないかって確信が強くなっていく気がする。現に、今だってそうだった。
…サッズでチョコボと言えば、か。
あたしは首を横に振った。
「わからない。確証はないんだ。なによりまだ彼女の方に語る気がなさそうだから、あたしからも何か言うのやめとくよ」
それが素直な答えだった。
彼女の方も、ばれない様に隠してるってわけではなさそうだけど…。
でも今本人が言わないのであれば、あたしも余計な事は言うまい。
『ほう。だが、あらかたの予想はついていると?』
「うーん…どうだろう。でも100%味方だって言うのは、信じていいんじゃないかな。少なくともあたしは敵じゃないと思ってるよ?」
あの旅で出会ったとき、彼女はあの羽を広げてあたしに飛びついてきた。
会えて嬉しいって、全身で目一杯に言ってくれてるみたいに。
結構ビックリしたけど、あんなに喜んでくれるとちょっとこっちも嬉しくなるよね。
《私、ナマエちゃんのこと大好きなんだから!》
ぱあっと笑顔を咲かせて、そう言ってくれたのを思い出す。
…彼女は、ルシだった時の旅のことを知っていた。
そしてその時、あたしが抱えた悩みのこと…ホープがそれを受け入れてくれたことも、彼女はよく知っていた。
その事を知っているのは、あたしとホープと…。
「ねえ、ホープ。旅してる時にさ、あたしがホームシックにかかったのって覚えてる?」
「え?ホームシック?」
ちょっと聞いてみる。きょとんとされたけど。
あれは大切な思い出だ。
ホープの反応が薄いのは、やっぱり少し寂しく思う。
…まあ、別にいいんだけどね。
それはともかく、あたしが彼女の正体にそうなんじゃないかなって思ってるのは、その理由から。
それに今、彼女はライトに対しても久しぶりだと言っていた。
となると、可能性はちょっと高くなるんじゃないかな…?
あたしは小さく笑った。
「ふふ、まぁ、信じて大丈夫だと思うな。ちょっこりーんって。あたしはあのテンションも嫌いじゃないしね!」
「…私は出来れば遠慮したいがな」
「あははっ!それ言ったらいろいろ言われそう〜」
ひっどいじゃないライトニングさん!とかね。
何か想像したらもっと笑えてきた。
なんにせよ、前回の旅だって味方でいてくれた事実がある。
だから敵じゃないと言うのは本当に信じて大丈夫だって、そこは確信してる。
彼女がくれたか笑顔のかけらで魂のかけらはふたつめだ。
残りのかけらはウィルダネス以外の世界にも散らばってしまっているみたいだし、ライトは引き続きかけらを集めるべく、4つの地域を巡るのだった。
To be continued
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