星の運命を賭けて



星の体内。

渦巻く青い流れの中、どういう原理か岩が螺旋状に浮かんでいる。
その岩を少しずつ飛び降りながら、目指す、更に奥。





「ナマエ」

「うん」





一番下の、一番大きな岩の足場。
そこに踏み出す直前、クラウドはまた手を差し出してくれた。

その手を重ね、クラウドの隣に足をつける。

後ろを見れば他の皆も全員、その場に足をつけていた。





「ここは…?」





クラウドが辺りを見渡した。

見る限り、ここが一番下。一番奥。
星の行き止まり。

…セフィロスは…?

あの長い銀色を探すように、あたしも辺りを見渡した。

…その時、どこからか何かの叫び声のようなものが聞こえてきた。





「あ…!」





叫びに反応して顔を上げれば、見えたのは大きな大きな怪物だった。





「ジェノバ…!?来る!」





クラウドが剣を構えて注意を払った。

怪物はジェノバだった。
約2000年前、星に衝突した災厄。

今までの旅路の中でも幾度と戦ってきたジェノバ。
だけど、今目の前に現れたこいつは、今までの何よりも圧倒的だと直感した。

いうなれば、完全体。





「ジェノバのお出ましか!やるぜ!」





先手を打ったのはこっちだった。
まず放たれたのは強い力のエネルギー砲、バレットがヘビーショットを放った。





「きっもちわるい面しやがって〜!」

「…ジェノバか。これもまた、眠らせなばならんひとつだな」





ユフィの手裏剣が舞い、ヴィンセントの銃がアシストする。





「ティファさん!行きまっせ!」

「ええ!お願い!」





よろめくジェノバ。
落下まではあと一押し。

そこでケット・シーがデブモーグリの腕でティファを押し上げて飛び上がらせる。





「はあっ!!!」

「来いッ」





ティファはジェノバの頭上から思いっきり蹴りを放った。
そのタイミングに合わせる様にレッドXIIIも高く跳ね、体当たりを喰らわせる。

ジェノバは少しずつ、その巨体を地に落としてきた。





「ナマエ!」

「任せて!」





思いっきりやれ!というシドの声援を受け、あたしはソードを構えて足を踏みこんだ。
逆サイドではシドが同じように槍を構えてる。

あたしたちは、双方のジェノバの触手狙った。

ザン!!!という音と共に、触手を断ち切る。





「クラウド!!」

「ああ!」





断ち切ったあと、あたしは振り向き彼の名前を叫んだ。

トドメはクラウド。
クラウドは大剣を構え、腕のもがれたジェノバに刃先を向ける。





「はああああッ!!!」





剣に込められたクラウドの力。

大剣がジェノバの体を貫く。
その一撃で、ジェノバは完全に崩れた。





「……!?」





でも、倒したという達成感を味わうより早く、その場に変化が起きた。

立っていられなくなったのだ。
抗う暇も無く、足場が崩れていく…。





「あっ」





そして、光。
目も開けていられないほど、眩しい眩しい光。

失った足場を前に、光の中に落ちていく。





あたし、どうなっちゃうの…?





そんな思いが浮かんだ。
でも、どうすることも出来ない。

ただ、眩さに目を閉じた。

そして出来る精一杯は、何ものない空間を手探りで仰ぐこと。
でも、何にも触れない。

誰か、いないの?みんなは?

誰か。誰か。みんな。
どこにいるの?無事なの?どこ?みんな。

誰か。誰か…。クラウド…。どこ…。

大好きな、ここに来るまでずっと繋いでいたあの手を探す。





「……クラ、ウド…」





呟いた。
その瞬間、閉じた瞳でもわかるほど、更に光が強くなった。

白い白い、偉大な…聖なる光。





「……ホー…リー…?」





自然と浮かんできたその名前。

その時、聞き覚えのある、優しい声を聞いた。





―――――頑張って、ナマエ。





柔らかい、儚い声。
ああ、この声…。


……エアリス。


よく知ってる、あの優しいエアリスの声だ。
とても懐かしくて、目の奥が少し熱くなった。

あたし、エアリスに言いたいこと…いっぱいあるんだよ。

ねえ、エアリス。
エアリスはあの神殿で、最後にあたしにこう言ってたよね。





《…大丈夫…。ナマエは自分、信じて…。自分の見てるクラウド、信じてて》





ナマエの見てるクラウド。
…あたしが見てるクラウドを信じていて。

正直ね、言われた時はよくわかんなかった。

でも、あたしね…あの時はちゃんと言えなかったけど…今なら言えるよ。
あたし、クラウドのことが好き。大好きだよ。

幻想じゃなくて、優しいクラウドが。

…エアリスは、色んな事…気付いてたのかな?





―――――ナマエ。私、ナマエのこと、大好き。





ゆっくりと心に響く、あたたかい声。





―――――だから、笑って。笑っていて。





光の中で、祈りのような…優しいもの。




―――――この先も、皆と。クラウドと一緒に。だから、未来、掴んで。





そう響いた瞬間、キン…!と何かが胸を走った。





「…ッ!?」





一気に意識を引き戻された気がした。

はっ、として目を開く。
そこには眩い光はなかった。

場所は、星の体内。
でも、何故かどこか禍々しい。





「ナマエ!」

「クラウド…」





呼ばれて顔を上げれば、探していたクラウドがいた。





「イテテテ…」

「バレット…、皆も…!」





そこにはクラウドだけじゃなく、他の皆も。

だけど、もうひとり。
先に、見えた…長い銀色。





「……っ」





長身、銀色。鋭い瞳。
捉えた直後、あたしたちはグン…という衝撃を浴び、体の自由を奪われた。

なにこれ…。
体が、麻痺してるみたいにビリビリする……!





「ウグッ…!!……セフィロスッ!!」





クラウドが呻いた。
視線の先にいるのは、間違い無く本物…。今まで追ってきた紛い物なんかじゃない。

本物の、セフィロスがいた。

セフィロスはその鋭い目で、あたしたちを射抜くように睨んでいた。





「グッ……、これが…本当のセフィロスの力だってのか!?」

「か、体が…言う事を効きやがらねえ……ウオッ!?」





バレットとシドが抵抗を見せるものの、なんの効果もない。
皆、誰ひとりとして例がいなく自由を奪われた。





「足が……後ろ足が……尻尾がちぎれそうだ!!」

「アカン……。やっぱり桁違いや……」

「あ、あたしもうダメ……かも……」





レッドXIIIにケット・シー、ユフィが弱音を溢す。
でも、そうしたくなる気持ちもよくわかった。

だって…、本当に桁違いで、圧倒的すぎたから。





「ウ……ウ……、……そこに……ある…」





でもクラウドだけは、呻きながら手を震わせてセフィロスを指さした。





「…そこに……あるんだ……」





必死に耐え、先を指す。

正確には、セフィロスじゃない。
セフィロスの奥…もっと先に見える、かすかな光。

それを見て、あたしは気がついた。

クラウドがそれをした意味。
その光が、何なのか。





「ホー…リー…?」





クラウドを見つめ聞くと、クラウドは重たく首を縦に振った。





「ナマエも…わかるのか…。ホーリーが…ホーリーがそこにある…。ホーリーが輝いてる……。エアリスの祈りが輝いてる……!」




酷く似ていた。
さっき、目を閉じた中に見えた光に。

ただ、さっきに比べて随分弱々しいけど…。

その理由はひとつだ。
セフィロスが、抑えてるから。

こいつが…邪魔してる…!





「セフィロス…!エアリスの祈り…、貴方が邪魔してるんでしょ…!」





睨んだ。

あたし、いつもセフィロスの前に立つとどこか萎縮しちゃってた。

鋭い瞳、無情な長刀、全てを見抜いている様な台詞。
どれをとっても、恐怖の対象でしか無かったから。

でも今は…負けられない。負けたくない。
そんな思いが強く燃えた。

エアリス、今だってあたしたちのこと…見ててくれてる。一緒に、いてくれてる。

今までで一番、やらなきゃって思った。





「まだ終わりじゃない…、終わりじゃないんだ!」





クラウドが叫ぶ。
セフィロスの力を振り払う様に耐え、剣に手を伸ばす。

それに感化されて、皆もお腹の底から叫びを上げた。





「エアリスだけじゃねえ…。ホーリーはアバランチの…マリンやダインの……この星の人間の祈りだ!」

「エアリスがいる…、皆がいる……。私達にはまだ出来る事がある……!私、諦めない!」

「オイラは見届ける。皆のこれから…、この星のこれから…、今ならわかるよ、じっちゃん。それがオイラの使命だ!ライフストリームを……星の命を、枯れさせはしない!」

「や…やっぱりくるんじゃなかったかも……。もう、マテリアなんか…マテリアなんか……やっぱり欲しいッ!アレもコレもみんなみんなあたしのもの!アンタなんかにやるもんか!!」

「間違いに気付くんが…ちぃ〜と遅かったんかもしれん…。それでも、まだ…まだやり直せるはずや!全部元には戻せんかもしれんけどな!一番大事なもんを守る事は出来るはずや!」

「あの時に凍りついた私の時間が、今再び動き始める…!セフィロス、今度がお前が時の狭間で眠りに就く番だ!!」

「へ……!こんな穴ぐらの底でいつまでも這いつくばっていられるかよ…。俺様はよ…俺様にはよ!まだまだ、やりてえ事があるんだよ!」





それぞれの思い、大切な想い。
叫びに乗せて、力に変える。

あたしも、両手でソードをしっかり握った。





「バレット…、マリンの服、今度あたしが選んであげる」

「…おう。任せたぜ」





そして、一つずつ…。





「ティファ…、またパンケーキ作ってね」

「もちろん。いくらでも作ってあげるわ」





自分にとっての、大切なものを…。





「レッドXIII…、コスモキャニオンって星が綺麗だよね。穴場とかあったら教えてほしいな」

「うん。オイラもナマエと見たいよ」





大切な人たちを…。





「ユフィ…、終わったらはしゃぎ倒すよ」

「あったりまえだろ!」





手放したくない、何かを…。





「ケット・シー…。占い、教えてほしいな。あと、リーブさんとしても話してみたい」

「おおきに。今度、本体で伺いますわ」





しっかりと確かめていく。





「ヴィンセント…。銃の使い方、ちゃんと教えてよね?」

「フッ…、了解した」





まだまだ、たくさんあるから…。





「シド…、ハイウインドの操縦、やっぱり気になるかも」

「おう。いつでも聞いてこい。シエラもおめーに会いたがってたぜ」





見たい明日が、たくさんあるから。





「クラウド…」

「ああ、わかってるよ。ナマエ」





だから…掴むよ。





「エアリス、見てて」





ちゃんと未来、掴むから。
そしたら思いっきり、馬鹿馬鹿しいくらい、たくさんたくさん…笑って見せるから。

だから、見てて。





「エアリスの想い…俺達の想い…。その想い伝えるために…俺達は…来た…」





クラウドがしっかりと意思を持った声で言う。

するとセフィロスは端正な表情の眉を吊り上げ、少しの怒りを滲ませる。
そして…姿を変えていった。

片方だけの、翼。
真白い羽根が宙を舞う。

それは…まるで天使みたい。





「さあ、星よ!答えを見せろ!そしてセフィロス!!すべての決着を!!」





クラウドの叫びに、全員が声を張り上げた。

それは、星の運命を賭けた戦いの、始まりの合図だった。



To be continued


リバース飛ばしていきなりセーファ(笑)


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