さがす心、まよう心



「メンバー……足りないね」





ハイウインドのブリッジを見渡して、ティファは呟いた。





「うん…」





その隣で…あたしは目を伏せて、小さく頷いた。


ジュノンにて、あたしたちは無事にティファとバレットを救出することに成功した。

これについては一安心。

処刑なんて悪趣味なこと考えた罰だ。
ティファはスカーレットにビンタをかましてきたと教えてくれて、それには笑わせてもらった。

でもやっぱり…ここにいる誰もが気になってるのは、…彼の事だった。





「メテオが迫ってきて、ウェポンが暴れていて…。そんな時に何をすればいいのかなんて私にはわからない……」

「ティファ…」





ティファは俯いた。
黒く長い綺麗な髪が肩から落ちていく。

あたしは掛ける言葉を探して、そんな小さな背中をじっと見つめてた。

するとそれを見かねたバレットが頭を掻いた。





「何言ってんだ、ティファ!一緒に考えようぜ!俺達が乗っちまった列車は途中下車は出来ねえぜ!いつからそんなに弱い女になったんだよ!」

「ゴメン、バレット。私もちょっとびっくり。がっかりだね…」





言う通り、なんだかティファは前より弱々しく見えた。

ティファって、明るくて活発で。
それでいて料理も出来て、家庭的で。おまけに美人でスタイル抜群!…って最後はちょっと違う…?

とにかく、出会った頃から…なんとなく憧れてたって言うか。
あたしにとってはそう言う対象だった。

だって女として、すっごく格好いいんだもん。

だけど、今はとっても弱々しい。
…ちょっと別人みたい。

…やっぱ、ティファってクラウドのこと…。

自然と、そう過った。
……だったら、あたしは…。





「元気出して!ティファ」

「…ナマエ」





がばっとティファに後ろから抱きついた。

ティファは少しだけ驚いたみたいだった。
だけど回ってきたあたしの手をぎゅっと握りしめてくれた。





「ねえ…ナマエ…きっと、会えるよね?」





そして、そう聞かれた。
あたしは少し考えて、明るく頷いた。





「うん!一緒に探そうよ!ティファ」

「…ナマエ……私、確かめたいの…」

「え?」





小さな声。

ティファは教えてくれた。
今自分が考えてる事。思ってた事。





「ちゃんと…確かめたい」

「……。」

「だから…会いたいの」

「…そっか。…そーだね。そーだよね」





一緒に旅してきたクラウドは、本当にクラウドじゃないのか。
それを確かめるために、会いたい。ティファはそう言った。

あたしは、なんの根拠も無いけど…クラウドの中は空っぽじゃないと…思ってる。思うことにした。

でもまた…ちくん、と胸が少し痛くなった気がした。





「そういえば…」

「…レッド?」





その時、レッドXIIIが何かを思い出したように顔を上げた。

ブリッジ中の視線がレッドXIIIに向く。
あたしはティファから離れて、レッドXIIIの前にしゃがんだ。





「どーかしたの?レッド」

「いや…もしかしたら、北のクレーターの奥底で地面が崩れてクラウドはそのまま…更に地中の奥深く…」

「…地中?」

「うん…。あるのはライフストリームだ。そのライフストリームが海底スレスレを通っていて時々地上に吹き出す。そんな場所があるって話を聞いた事があるんだ。もし、もしかしたらクラウドも…」

「えっ?」





確かに…地中に落ちたならその先はライフストリーム。
それに巻き込まれて…一緒に地上に吐き出されたとしたら…。

ちょっと考える。

あ…れ…?
それって…もしかして超有力な情報なんじゃない?

だから聞き返した。





「レッド。それ、どこかわかる?」

「ライフストリームに近い場所…小さな島があるらしいんだ。南の島で、時々ライフストリームがプワーッて吹き出したりするんだって。うんと小さい頃、セトに聞いたんだけど、よく覚えてないんだ……ごめんね」





自信無さ気で、申し訳なさそうなレッドXIII。
でもあたしは反対に、ニッ…と笑った。





「なーに謝ってんの。じゅーぶん…!」

「…ナマエ」





ぽんぽん、と頭を撫でる。

だって、これで0じゃなくなったもん。
充分な手掛かり。南。方角がわかっただけで、動けるよ。

だって、ここ空だもんね。
あたしはシドに呼びかけた。





「シド!お願い!」

「おう!南の島だな?」





了解だ、というように拳を上げたシドは、運転の操作を叩きこんでいる真っ最中だと言うパイロットさんの肩を軽く小突いた。
そのパイロットさんは「あわわわ、行くであります〜っ」と少し頼り無さ気にハイウインドを南にへと飛ばしてくれた。

…だ、大丈夫なのかアレ…。
ちょっと心配になったけど、傍にシドが居るからまあ大丈夫か。





「…ナマエ?」

「んー?」





そんな覚束無い舵を見ていると、傍にいたレッドXIIIに呼ばれた。
あたしはもう一度レッドXIIIに向き直って、首を傾けた。

するとレッドXIIIはあたしの頬に擦り寄ってきて、そして聞いてきた。





「…平気?」

「へ?」





いきなり何だ。
ぽんぽんと彼の毛を撫でながらきょとんと首を傾げる。





「溜め息…ついてたから」

「え」





ちょっとビックリ。

溜め息ついたのか…あたし。
ああ、まあ…なんか癖になってきてる部分もあるような気がする…。

それは…頂けないな、ナマエちゃん。
あたしはへらりと笑って謝った。





「ごめんごめん。気、余計滅入っちゃうよね」

「辛い…?」

「そりゃ…。ていうかそれは皆一緒じゃん?レッドも、クラウドのこと心配でしょ?」

「それは…そうだけど…」





最後は小さく耳打ち。
でもレッドXIIIは「うーん…」って唸ってた。





「…でも、ナマエは何か…」

「平気だって」

「…そう?」

「…うん!」





笑ってまた頭を撫でた。

もう、人間には無い勘があるのか君は。なーんか妙に鋭い子…。ああ、でもユフィにも元気ないとか言われたっけ…。

なんなんだ、こいつらは…揃いも揃って。

でも…気遣ってくれてるのはわかってる。
それは嬉しかった。





「ねえ、それよりさレッド。ちょっと変なこと聞いていい?」

「え?うん、なに?」

「あのさ…、そのXIIIのイレズミは宝条博士がやったって言ってたよね?」

「うん…そーだけど…?」





レッドXIIIにとって、嫌なこと聞いてる。
だから撫でる手に、ごめんねって意味を込めた。

でも…それで思い出した。
イレズミは、各地で見かけた黒マント達にもついてる。

黒マントは過去に宝条に何かされた人達…のはず。
レッドXIIIも然り。

イレズミがナンバーだとするなら…。





《宝条博士……。俺、ナンバー、ありません。俺、失敗作だから博士がナンバーをくれませんでした》





失敗作だから、ナンバーが無い…。
クラウドはそう言っていた。

セフィロス・コピーの…失敗作…。

でも、黒マント達の例に倣うなら…クラウドも宝条に何かされた基盤になった人間がいるはず…。
なら、1から作りだされた人形…なんて考えは消える…よね?

それがニブルヘイムのクラウドだったら…。





「ナマエ…何かわかったの?」

「…ううん。変な事聞いてごめんね」





確信も根拠も無い。だから無闇に発言するのは…なんとなく気が引ける。
あたしの足りない頭で考えた持論だからますますだ。どーも、自信に欠けるわ。
…ああ、頭良く生まれたかったなあ…ホント。

ていうか、レッドXIIIの不安煽ったら可哀想だし。

…ニブルヘイムのクラウドだって確証も無いし、あたしじゃそれを確かめる術もないしな…。

でも…自分の中ではちょっとだけ、見い出せてるような気がしてた。





「早く、見つかるといいね。ううん、見つけよう」





だから、それだけ呟いた。

見つけられたら…見つかったら…あたし、どうするのかな。

色々思うことはあるけど、でもやっぱり…会いたい。
だって…無事だって、確認したい。

空を見上げると、ハイウインドの速さで雲が流れてく。
南に向かって飛んでいく飛空挺。

…また、ちくん、とした気がした。




To be continued


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