渦巻く迷宮



「すっご…い…」





大きな大きな溝。
目の前に広がるそれに、ため息にも似た声で呟いた。

ホルゾフさんに「お世話になりました!」と頭を下げたあたしたちは、寒さに耐えながらガイアの絶壁を登り、やっと…クレーターの前に辿り着く事が出来た。

…そのクレーター。
正直、息を飲むくらい…圧倒的な光景だった。

すごく大きくて、中心部の方では大きな光の渦が巻いてる。
噴き出す…ライフストリームの渦だ。




「かつて空から何かが落ちてきてここにぶつかった…。星に傷が出来たんだ。セフィロスはこの傷を治すために集まるあのエネルギーを奪ってメテオを使おうとしている。今度はこの程度の傷ではすまない…」





クラウドはじっと渦を見つめて、セフィロスのこと思い出してるみたいだった。

確かに…なんだか、びりびり伝わってくるって言うか…。
すっごいエネルギーが集まってるんだって…素人でもわかる。

そうしていると…崖の下の方で、銀色の何かがちらついた。





「あああ!あれ!!!」





ユフィが指をさして叫んだ。

集まった全員の視線。
その先にいたのは…長い銀色。

振り向いて…薄く微笑む。

いつかみたいに、また…ぞわっとした。





「セフィロースッ!!!」





見つけたその姿に、クラウドは目を光らせて彼の名を大きく叫んだ。

同時にぶわ…っ、と銀色の髪と黒いコートがなびく。
それを見て、皆が戦闘態勢を整えた。

あたしも、腰にかけたソードにそっと手を寄せておく。





「ここまでだ!」





大剣を抜いたクラウドが鋭く睨む。
すると、セフィロスはクツクツ笑って頷いた。





「そう、ここまでだ。この身体の役目はな」

「なに…!?」





この身体の役目…?

相変わらず、セフィロスの言ってる事は…意味不明。
ああ、そうだ!わけわかんないっつーの!

でも、そう気を張っても、なんか意味深で…。
ぞわぞわと、不安が沸いてくる。





「消えた!?」





意味不明な言葉を残すだけ残して、セフィロスは突然…その姿を消した。

本当に突然だった。

え、あ、あれ…?
あたしは目がおかしくなったのかと思って、こすった。

でもやっぱり、いない。





『我らの役目は、黒マテリアを主人の元へ運ぶこと』





でも、姿は無いのに…どこからか声だけが聞こえて来た。

あたしはビックリして、つい肩を跳ね上がらせた。

なに、なに…?
どこにいるの?どこから聞こえてくるの…?





「…我ら?」





クラウドは冷静に、その声に聞き返した。
すると返事は…返ってきた。





『ジェノバの細胞を持つ者たち』

「…主人は?」

『…勿論、セフィロス』





主はセフィロス。
その答えの後に、静かな笑い声が響いた。

そして…何かがクラウドを目掛けて一直線に飛んでくる。

でもクラウドは動じず、ぐっと握っていた大剣を勢いよく振りおろした。
その一撃によって、何かは飛び散るように落ちる。

…気持ち悪い、って思った。

うごめいてる…。
運搬船の時みたい…。

それは…ジェノバの体の一部だった。





「ジェノバ細胞……なるほどな。そういう訳か。ジェノバはリユニオンする、か。…この先に、本当のセフィロスが居る」





クラウドは少し考える素振りを見せると、ひとり何か理解したように頷いた。

一方で、全然納得できてないあたしは考えたままだった。

…今さっき見たセフィロスは、セフィロスじゃなかった?
ジェノバが、セフィロスに化けてた…?

じゃあいままで追いかけて来たつもりだったのも…。
エアリスの事を…刺したのも…、セフィロスは偽物だったってこと…?





「クラウド…それ」





あたしがうんうん唸ってると、ティファがクラウドの足元を指さした。

見ると、ころん…転がる黒い何か。
クラウドはそれを拾い上げた。





「黒マテリアだ…」





それは確かに、古代種の神殿の跡地で見たものと同じ。
不気味な輝きを放つ、黒マテリアだった。

う…、やっぱり何かやだ…。
それを見て、あたしはちょっと後ずさりした。

でも、これで黒マテリアはあたしたちの手元に戻ってきたわけで。
これはこれで…一安心、なのかもしれない。

けど…クラウドが持つのはちょっと危なっかしーかもだ。





「ね、ねえ、クラウド。それ誰かに預けた方がいいかも、よ?クラウドも自分で持ってるのは…不安じゃない?」

「…そうだな」





だからちょっと提案する。
そしたら、ばちっと…真っ先に目があってしまった。

お、おおう…!

あたしは慌ててブンブン首を横に振った。





「あッ…!て、提案しといて難だけど…ゴメン!あたしはパスの方向で…!あんま触りたくない…です」

「ああ…。わかってる。古代種の神殿でも嫌がってたからな」

「ははは…、よくおわかりでー…」





へへへ…、と。
なっさけない苦笑いを浮かべた。

いやね、だってさ…まあ絶対ありえないことだけど…。
もし発動とかしちゃったらコワイじゃん…!
いや、あたしなんかのエネルギーでするわけないんだけどね…!?

あたしがそんなしょーもない心配をしてると、クラウドは手渡す相手を決めたらしい。





「バレット…頼む」

「おっと!責任重大だぜ。よし、俺にに任せとけ!何があっても、ここでじっとしてるからよ」

「ああ…、誰にも渡さないでくれ」





バレットはクラウドから黒マテリアを受け取ると、そのまま懐にしまい込んだ。

…よくしまえるなあ、そんなもん。
触れてるだけで凄いけど。

珍しくバレットが輝いて見えた……気がした。





「よし…。じゃあ…俺は先に行く」





黒マテリアを預けたクラウドは、本物のセフィロスが居るのであろう先を見据えた。

でも、もう一度振り向いて、一度みんなの顔を見渡した。





「…あと、ふたりくらい一緒に来てくれ。残りの皆は…とりあえず黒マテリアを見張ってて欲しい。セフィロスの狙いはメテオ。黒マテリアがなきゃ始まらない。だからまたジェノバが襲ってくるかもしれない。様子を見て平気そうなら、また数人で追いかけて来てくれ」





その意見には、満場一致で賛成だった。

確かに…セフィロスが真っ先に狙ってくるのは黒マテリアだろう。
それなら、まずはこっちに主力を固めておいた方がいいかもしれない。

じゃあ誰が先に行くか。
そちらに話が移りかけたその時、すっと…しなやかな腕が上がった。





「クラウド…私、行きたいわ」





それはティファの手だった。
ティファは胸に手を当てて、きゅっと決意するように握りしめた。





「私もセフィロスのせいで色々…無くしたんだから。だから…私も連れていって」





ティファはどこか辛そうな顔をしていた。

…ああ、そっか。
ティファもセフィロスのせいで家族も友達も故郷も…みんな無くしたんだ。

だから神羅を恨んで、アバランチに入ってたわけだし…。
行きたいと乞うのは当然のこと…か。

ティファのそんな想いを汲み取ったクラウドも、それを了承した。





「ああ、わかった」

「ありがとう…」





ティファはほっとしたように、息を吐いた。
と、同時に決戦に向けての深呼吸も。





「じゃあ、あとは……ナマエ。背中、頼めるか?」





じゃあ残りの一人は誰にするか。
その時、あたしはクラウドと目があった。

お、ご指名だ。

まあ、もともとクラウドとは動きやすい。
だから一緒に行動することは多かったし、そのおかげでクラウドの戦闘の癖とかももっと読めるようになってきてる。

ここであたしが選ばれるのは妥当だ。

うーん、背中頼めるかって…なんかいい響きだよね。





「うん。おっけーだよ!」





だから快く引き受けて頷いた。

よしきた!出番だ!
そんなやる気を見せるように、ぱしぱし、と腕を叩いた。





「クラウド、ティファ。拙者、及ばずながら協力させていただきます!」





ぴしり、と敬礼付き。
そしたら後ろから両肩をぽん…と叩かれた。





「ふふ、頼りにしてるね」

「おう!任せといて!」





振り向いたらティファの微笑み。
あたしも合わせて「ふふふーっ」と笑ってみせた。





「ああ、頼む」

「…うん!」





すると、クラウドも。

ああ、なんか嬉しいなー。
ちょっとでも頼りにしてくれてることが…なんか嬉しい。

うん、なんとも単純だけど…うっし!頑張りますか。

でも…相手はあのセフィロスだ。
油断は禁物。…気持ち、ちゃんと切り替えないと。

自分の中でも、一回気合を入れなおした。





「ナマエ!マテリアあったら絶対あたしに届けてよね!絶対!絶対だかんね!」

「はいはい、わかったよ!ユフィこそ、届けるまでしっかりしててよ!」

「ナマエ、オイラ…頑張るから。ナマエも…」

「うん、またあとでね。レッド」





最後にぎゅっと、ユフィと手を握って。
レッドXIIIに頬ずりして。





「よし、行くぞ」





クラウドのその合図で、あたしたちは竜巻の迷宮の奥へと進んでいった。



To be continued


連れ女子2人で突っ込むな!と言いたいところですが、全員行っても空気になるのが目に見えてるので。(笑)

目つぶってくださいね。←

大丈夫。本家だってティファとユフィで突っ込めるんだから!(謎)


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