静かに、崩れていくもの



「ふおう…!」





びゅんっ…!

細っこい道、下は崖。
落ちたら死にます、やばいです…みたいな状況。

そんな状況化に渦巻く風とか本当に止めてほしい。





「ナマエ、大丈夫?」

「なんとかね…と!」





よたったあたしを心配してくれたティファ。
大丈夫の意味を込めて、あたしは笑って返事をした。

竜巻の迷宮。
その奥にいるセフィロスを目指し、あたしはクラウドとティファと真っ直ぐ歩いていた。

相手はあのセフィロスなんだから、風になんか負けてられっかってんだ…!
そう意気込んで思いっきり足を踏ん張り、 また一歩、足を踏み出す。

事が起きたのは…そんな瞬間だった。





「うわあ!?」

「何これ?どうしたの!?」

「落ち着くんだ。ナマエ、ティファ」





突然、辺り一面が真っ白になった。

一体何事ですか!?
あまりにも突然で驚くあたしとティファに、クラウドの落ち着いた声が響いた。





「セフィロスが近くにいるんだ。何が起こっても不思議じゃない」





そう言われて、ちょっと納得した。

納得したら余裕が出てきて、少し落ち着いた。
深呼吸なんてしてみたら…白い光はだんだん弱まって、周りの景色が見えてきた。

でもそれは…さっきまであった竜巻の迷宮じゃない。

あたたかな雰囲気。
映ったのは、そこに在るはずの無い風景。





「…ニブルヘイム」





ティファが呟いた。

その通り、そこは以前見た田舎の小さな村。
クラウドとティファ、ふたりの故郷…ニブルヘイムの風景だった。





「え、なんでニブルヘイム…?」

「これはセフィロスが創り出した幻覚さ。俺達を混乱させようとしているんだ」

「はー…なるほど」





なんつーか、目から鱗…?
きょろきょろしてたらクラウドがそう教えてくれて、またまた納得。

クラウドは一番落ち着ていた。
自信をちゃんも持っている感じ。

不安さを感じさせる表情は無くて、純粋に良かったって思えた。





「大丈夫。幻覚だとわかっていれば何も怖くはない。さあ、このまま通り抜けよう」

「そうよね…、…あっ!」





同じように困惑してたティファも頷いて、先に進もうと話が動く。
でもティファは、村の入り口の方を見て声を上げた。

その様子に、あたしとクラウドもそっちを見ると、誰かが歩いてきた。





『さあ、行こうか』





落ち着いた声。
その外見も、嫌ってほど記憶に焼き付いてる。

銀色の髪、黒いコート。
……セフィロスだ…。

でも、何か違う。
それは…なんとなくわかった。

もしかして…これ、いつかクラウドに聞いた過去の?
そう考えれば、合点がいく気がした。

現に目の前に居るセフィロスはあたしたちに声をかけてるわけじゃないみたい。
誰かほかに、自分の後ろに向かって…。

それをじっと見つめていると、数人が歩いてきた。

やってきたのは2人の神羅兵。
そして…大きな剣を背負った若いソルジャー。





「…だれ?」





でもそのソルジャーの彼を見て、あたしはそう溢した。

だって知らない人だったから。

これが過去の出来事なら、此処に来る若いソルジャーはクラウドのはず。
だけど、そこにいたのはクラウドとは似つかない男の人。

金髪じゃなくて黒髪で。
明るそうな表情を持つ、人の良さそうな男の人だ。

…いやでもアンタ誰ですか、って話には変わりないんだけど…。





「やめて…、セフィロス」





あたしが怪訝に、じーっとその黒髪のお兄さんを凝視してるとティファの声がした。

その声は、震えてて、まるで怯えてるみたい。

疑問に思って振り向けば、ティファは首を振っていた。
…まるで、何かを拒否するかのように。





「…ティファ?」





…なんで、そんな顔してるの?
そう思ってあたしはティファに歩み寄った。

一方でクラウドは、呆れるようにその光景を見ていた。





「…くだらない」





クラウドがそう吐き捨てると、また辺りが白く包まれた。

また、今度は別の幻覚かな…?
今度は妙に落ち着いてる。一回で随分慣れたもんだ。

でもそんなあたしとは真逆で、ティファは怯えるように叫んだ。





「もうやめてっ!!!」





すると、光がまた弱まっていく。
また予想通り、現れた別の光景が見えてくる。

でも、映ったそれに…あたしは目を見開いた。





「なに、コレ…」

「…これは5年前現実にあった風景だ」





驚くあたしに、クラウドが教えてくれた。

これが…現実にあった光景…。
確かに、教えてもらった。ニブルヘイムは、火事になったって。

そう、目の前に広がっていたのは…村中に広がる炎。
真っ赤な、あまりに酷い…無惨な光景だった。





「こんなに、酷かったの…」





やっぱり、話を聞くだけじゃ…見えてこない事ってある。
こうして目の当たりにしたら、唖然とさせられた。

もう一度見せられたクラウドやティファにすれば、きっとたまったもんじゃないはず。





「ああ…、この火事は実際の光景だ。けど…きっと、あの神羅屋敷から出てくるのは俺じゃない。また、くだらない幻覚を見せようって気なんだ」





そう言われて、あたしたちは唯一炎を免れている離れの屋敷に目を向けた。

すると、門が開いた。
その門を開いた人物、それは確かにクラウドじゃなかった。





「ほら、言った通りだろ」

「うん、そだね」





変わらず呆れた様子のクラウドに、あたしは頷いた。

火事の様子に慌てて走って来たのは…また、さっきの黒髪のソルジャーさん。
…本当に、この人は誰なんだろ?





「こんなの……見たくない」





でも、ティファだけは…やっぱりそれを見て震えていた。
あたしとクラウドはそんなティファを見る。

ティファは何かを振り払う様に大きくまた、首を振った。





「クラウド……見ちゃだめよ」

「どうしたんだ、ティファ?さっきも言っただろ?幻だとわかっていれば何も怖くない」





肩をすくめ、クラウドはティファに言う。

でも、何か妙だと思った。
ティファの怯え方、ちょっとおかしい。

その時ふと…思い出した。
ティファ、今までも何度か不安そうに見える事があった。

それが…関係してる?
いや勘だけど、なんとなくそう…思った。





「ねえ、ティファ…」

「セフィロス!聞こえてるんだろ!」





あたしはティファに声をかけようとした。
でもそれは、クラウドがセフィロスに呼びかけた大きな声に遮られた。

う…、ちょっと虚しい…。
ま、まあ仕方ない…ここはちょっと我慢だ…。

…けど…ティファの肩、震えてる。
だから少しでも和らげられないかと、あたしはそっとその肩に触れた。





「お前が言いたい事はわかった!5年前、ニブルヘイム。そこに俺はいなかった。お前が言いたいのはそういう事なんだろ?」





クラウドは叫んだ。

…ニブルヘイムに、クラウドはいなかった…?

なるほど…、セフィロスが言いたいのはそういうこと…。
だからこんな幻覚を見せてるのか…。

この幻覚の意味を理解した。

でも、それが?って感じだ。
だっていなかったって…なんじゃそりゃって話でしょ。

全然わかんない。

だけど…そのクラウドの叫びに、ビクン…とティファの体が跳ねた。

…なんで?
やっぱり…全然わかんないよ…?





「理解してもらえたようだな」





その時、 低い声が響いてきた。

ビクッ!
今度はあたしの肩まで揺れた。

バッ…と目を向ければ、そこにいたのは…セフィロス。

たぶん…これは過去の、幻じゃない。





「お前が言いたい事はな。俺を混乱させたいんだろう?」





クラウドがひとつ、現れたセフィロスに近づいた。





「しかし…こんな物を見せられても俺は何とも思わない。何故なら俺は覚えている。この炎の熱さを…身体の、心の痛みを!」

「…さて、それはどうかな?」





強く言い切るクラウドを見て、セフィロスは妖しく笑う。
それが、やっぱり不気味だと思った。





「お前は人形…。心など持たない…。痛みなど感じない…。そんなお前の記憶にどれほどの意味がある?私が見せた世界が真実の過去。幻想を創り出したのは…お前だ」





お前は人形…。
それは、前に忘らるる都の祭壇で…ジェノバがクラウドに言い放った言葉だった。

やっぱり、意味は全然わかんないけど…。
人形って何さ。失礼な話。

意味のわからない事を言うな!
あたしはそうやってセフィロスを睨んでた。

もう、こんな奴に竦むもんか…そうやって決めたから。





「…クラウド…」





でも…ティファは、違った。
ティファは…不安そうにクラウドの名前を呟いていた。

…あたしは、それが一番…気がかりでならなかった。





「理解出来たかな?」

「…理解する気なんかない」





セフィロスとクラウドのやり取り。

クラウド、まだ強い目してる。
クラウドはセフィロスにひとつ問いかけた。





「が、一つ聞きたい。何故……こんな事をする?」

「クックックッ…。お前には本来の自分を取り戻して貰いたいのだ。そしていつかそうしたように黒マテリアを私に…」

「……。」

「…それにしても、失敗作だと思われたお前が一番役に立つとは…。宝条が知ったら悔しがるだろうな」

「宝条!?」





自分を睨むクラウドの視線にセフィロスは薄く笑う。
そして、あの博士の名前を口にした。





「俺と何の関係がある!」





クラウドはセフィロスに詰め寄るように怒鳴った。

そんなクラウドを見て、セフィロスは相変わらず笑みを浮かべる。
まるで、なにか楽しんでるみたい。

そしてどこか楽しそうに語りはじめた。





「お前は……そう、5年前だ。ニブルヘイムが炎の包まれたその後に宝条の手で創り出されたのだ。ジェノバ細胞の驚くべき生命力、能力と魔晄の力が創り出した人形。セフィロス・コピー・インコンプリート。ナンバリング無し。それがお前の真実」





一瞬、言葉が理解できなかった。

えっと…待って。
落ち着いて、話を整理しよう。

宝条が火事の後に創った…?
ジェノバの細胞と魔晄の力を使って…?
人形を、創った…?

それが、クラウド…?
だから、クラウドが人形…?

……なに、それ。

勝手な事ばかり言う。
あたしはギリッ…と手を握りしめた。

本当なら、掴みかかりたいくらい。

でも…その時、また…ティファの肩が大きく揺れたのが…見えた。





「クラウド…相手にしちゃだめよ…。耳を塞ぐの!目を閉じるの!」





ティファはクラウドに向かって叫んだ。
どうしたのってくらい、必死な顔して叫んでる。

クラウドはその様子にまた肩をすくめた。





「どうしたんだ、ティファ?俺は全然気にしてない。…というか、途中から聞いていなかった」

「宝条に創り出された?そんなの嘘に決まってるわ。だって、私達にはあの思い出があるじゃない!子供の頃、星が綺麗な夜…」





星の綺麗な夜…。
そういえば、ニブルヘイムに言った時…ティファが話してくれた気がする。

村にある給水塔。登ると星がよく見えるって。
そこで、クラウドにソルジャーになると聞かされたって…。


でも……なんでだろう。
クラウドに言ってるはずなのに、なんか…違う?
なんか、自分に言い聞かせてるような…そんな印象を覚えるっていうか…。

そして皮肉な事にセフィロスも…今あたしが思ったことと同じ意味を、指摘した。





「クックックッ…。…ティファよ。その言葉とは裏腹に、お前は何を脅えている?フム…お前の心をここに映し出してみようか?」





セフィロスの視線がティファに向く。
するとティファは慌てて視線をそらした。

……なんで?ティファ…?





「クックックッ……都合が悪いそうだ」





そんなティファの反応を、セフィロスは楽しむかのように笑った。





「……ティファ?セフィロスが正しいのか?」





セフィロスの視線から逃げたティファ。
そんなティファに、クラウドはゆっくり聞く。

…なんか、ほつれはじめてる…?
一瞬、漠然とそう頭に過った。





「何をそんなに恐れているんだ?俺の事なら大丈夫。俺がどんなに混乱していてもセフィロスの言葉なんて信じない。…確かに俺は自分自身がわからなくなる事がある。記憶だってあやふやな部分がたくさんあるんだ」





クラウドは、はっきりした口調でそう言葉を紡いでいく。

その時、クラウドに目があたしに向いた。
いつもの青い目。でもちょっとだけ…不安の色にも見えた気がして。

だからあたしはいつも通りに。
いつも目が合った時のように笑えば、クラウドの表情も和らいだ気がした。





「なあ、ティファ。ティファは言ってくれただろ?『クラウド、久しぶりね』って。だから俺は、ティファの幼馴染みなんだ。俺はニブルヘイムのクラウドなんだ。どんなに自分がわからなくなってもそれだけは真実だろ?」





…ちくん。

その時、一瞬…ちょっとだけ何か…。…胸の奥…?

なんだか違和感を感じて、胸に手を当てた。
でもほんの一瞬。もう何ともない。
だからまた、ふたりに視線を戻した。

クラウドは、確かめようとする。
肯定の言葉を求めて、ティファに尋ねた。





「だからティファ…そんなに脅えないでくれ」

「ち、違うの、クラウド…」





でもティファは首を縦に振らない。
出て来たのは「違う」という言葉。

クラウドはその言葉に、頭を振った。





「何が違うんだ?俺は…ティファの幼馴染みのクラウドじゃないのか?」

「そういう意味じゃない…。でも、上手く言葉に出来ない…。…クラウド、ほんの少しでいいの。時間を…時間を頂戴…」





不思議だった。
なんで早く頷かないのか、どうして未だに震えてるのか…。





「…ティファ?」

「…ナマエ……」





そっと覗きこめば、瞳は揺れてる。
怯えた目、してる。

するとまた…セフィロスの声が響いてきた。





「クラウド…、ティファを責めるな」





またどこか楽しそうな声。
むかつく…。

まるで、思い通りに進んでるって顔。





「私が説明してやろう。他人の記憶に合わせて自分の姿、声、言動を変化させるのはジェノバの能力だ。お前の中のジェノバがティファの記憶に合わせてお前を創り出した。ティファの記憶に登場する少年達…、その中にはクラウドという名の少年がいたのかもしれないな」

「クラウド…何も考えないで。お願い…」

「クックックッ……考えろ、クラウド。……クラウド?クックックッ…これは失礼。お前には名前などなかったな」





笑うセフィロス。怯えるティファ。

あたしは考えてた。
…なんで、何が起きてる…?

クラウドは、ティファの幼馴染みじゃないの?
人形だなんて、そんなわけないじゃん…。

…早く肯定して、ティファ…。

そう言いたいのに、ティファの震えた手を見てると…言えなくなる。
これ以上ティファを問い詰められないからか、真実が見えないからか…わからないけど…。

ねえ、ティファ…、どうして震えてるの…?





「黙れ……セフィロス」





絞り出すように、クラウドはセフィロスに向かって唸った。
それを見ると、セフィロスは息を吐いた。





「まだわからないのか?ならば…村からニブル山へ出発する時写真を撮ったのを覚えているか?」





そう言うと、セフィロスは自分の足元に倒れている幻影の住人のズボンから何かを抜き取った。

それは、一枚の写真。





「…見るか?なかなか良く撮れている」






差し出されたそれをクラウドは奪う様に受け取り、見た。
あたしも駆けよって、横から覗いた。

映っているのは、セフィロスとティファ…そして、あの黒髪のソルジャー。
…クラウドじゃ、無い。

でもクラウドは、大丈夫。
信じる必要は無いって、首を振った。





「ここはセフィロスが創り出した幻想の世界。この写真は偽物なんだ。真実は俺の記憶の中にある」





そして、確かめていった。
自分の中に在る、記憶を手繰り寄せて、ひとつずつ。





「…5年前、俺はニブルヘイムに帰った。魔晄炉調査が任務だった。16歳だった。村は全然変わっていなかった」





だけど、それは逆の効果…だった。





「俺は張り切っていた。何故なら、その任務はソルジャー・クラス1stになって初めての任務で……」

「…クラウド?」





急にクラウドの言葉が、止まった。

そっと声をかける。
でもクラウドは、頭を押さえはじめた。





「……ソルジャー・クラス1st?……ソルジャー?俺はいつソルジャーになったんだ?ソルジャーってどうやってなるんだ?」

「…クラウド、どうしたの…?」

「何故……思い出せない?俺は…俺は……」





クラウドの金髪が乱れる。

クラウド、今まで強気だった。
でも今、あたしの声、聞こえてる?

なんか、ぞっとした。
いてもたってもいられなくなって、不安が頭に過った。





「クラウドッ!」





脆くて、壊れそうで、崩れそうで、消えちゃいそう…。
いつかみたい。まるでそんなふうに見えて。

あたしは慌ててクラウドの肩を掴んだ。
そして強く呼びかければ、クラウドの瞳があたしを映した。





「しっかりして、クラウド!」

「…ナマエ…。俺…俺は…」





クラウドは、肩に置かれていたあたしの手を掴んで、両手でギュ…と強く握りしめた。
まるで…何かを確かめるように…強く、強く…。

あたしは、そんなクラウドをそっと見つめていた。


でもその時…また聞こえてきた。
あの恐ろしい…静かな笑い声。




「クックックッ…やはり大した問題では無かった。…邪魔になるということは取り越し苦労だったか…。クックック…」

「なに、言ってるの…。セフィロス…!」

「いいや…」





笑う。セフィロスが、笑ってる。
それに比例するように、クラウドは弱くなっていく。


ねえ、クラウド。
あたしは…あたしはどうすればいい?あたしは、何か出来る?

ねえ…あたし、今何が起きてるのか、わからないよ…。

どうして苦しそうなの?どうして壊れそうに見えるの?
…どうして貴方とティファ…震えてるの…?





「そうだ…俺にはナマエが…」

「クラウド…」





クラウドの手が強まる。
ぎゅっと掴んで、祈るように握られる。





「俺には…信じてくれる人がいる…。ナマエは、俺を信じてくれてる…。そうだよな?」

「…うん。…信じてるよ」





ちゃんと目を合わせて、頷く。
するとクラウドの表情が少し軽くなった。





「ああ…そうだ、俺は…俺はナマエが……」

「…見苦しいな、クラウド」





でもそこに、水差す声。

…怖い。
だけど、あたしは睨んだ。

すると、セフィロスはその視線に気がつく。
上がっていた口元は、更に深みを増した。

…怖い…。恐怖が、渦巻く。





「よく考えてみろ。その娘にすがったところで、お前の探す答えなど無い」

「…な、に…」

「お前は人形。それが真実だ。すがって、それを打ち消す答えがあると思うか?」

「…黙ってよ!」

「…クックック…」





負けじと睨む。
でもセフィロスは余裕で、また笑ってる。





「すがって何になる?ふっ…信じる、だと?クックックッ、曖昧だな…。クラウドよ、お前は…自分自身がわからないのだろう?自分の存在に疑問を抱いていたのだろう?」

「う、うるさ…っい」

「信じる?お前の何を?考えたところで無駄なこと。お前は人形。それが真実なのだから。そんなお前を信じるなど、何の意味も無い」

「う…あ…」

「クラウド…!」

「クックックッ…お前には何も出来ぬさ。哀れな娘よ」





ぎくん、
肩が揺れた。


本当に…その通りだった。

何も出来ない。
…あたし、何も出来ない。

ティファが震えてる。
クラウドが震えてる。

なのに、あたしは…何も、何も…。


ねえ、クラウドは…ソルジャーなんじゃないの?
ニブルヘイムの、ティファの幼馴染み。

ソルジャークラス1st・クラウド…。

人形って…なに?

そう思った、その時だった。
すっと、…手のぬくもりが消えた。

はっ、としてクラウドの顔を見て…あたしは言葉を失った。





「そうか………悩む事はなかったな、何故なら俺は…」

「…クラウド…?」





さっきまでが嘘だったみたい。

全然、震えてない。
脆く、崩れそうな顔色が消える…。


でも…、どうして…。
まだ、不安が残るの?





「行こう、ナマエ、ティファ。俺は……大丈夫だ」





大丈夫。

その言葉が、どうして…空っぽみたく聞こえるんだろう?




To be continued


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