ミスリルマイン



「はー!チョコボっていいよね!最高だよね!いつか自分でも育ててみたいよね!」





カームからまた二手に分かれて旅を再開したあたしたち。

ミドガルズオルムとか言うでっかいモンスターっがいる沼地を越えるために乗ったチョコボ。
現在、その愛らしいお姿の余韻にあたしは完全にメロメロになっていた。





「チョコボ寄せのマテリアか…。結構値が張ったな」

「いいじゃん!いいじゃん!それあればいつでもチョコボに会えるじゃん!」

「…随分気に入ったんだな」

「うん!ねえ、クラウド!いつかチョコボファームでチョコぼう借りて育てようよ!」

「自分の小遣いで借りてくれ」

「ええ!!?」





チョコボ寄せのマテリア購入の痛手に財布を睨むクラウド。

主婦か…、この人は主婦なのか…!お金に細かい…!

…まあ、旅をする以上資金は大切にしなければならないのだろうけどね…。
武器や防具にマテリアにポーション。揃えなければならないものは多い。

現にあのクラウドの話の後、カームでも装備を揃えた。
あたしは念願のショッピングにはしゃぎまくってたけど、クラウドは超真剣だったし。

まあ、あたしの腕にも真新しいバングルが光ってる。
必要なものは交渉すれば買ってくれるし…。

うん…しっかりしてるのはいいことだよね。
いいねいいね!惚れ直すよ!はっはっはー!!





「チョコボや資金の話も良いが…、それどころではなさそうだぞ」

「え?」





あたしが頭の中で大騒ぎしている最中、ひとつのしっかりした声がした。
それは少し先を歩いていたレッドXIIIのもの。





「な…」





彼が顔で示した先。
それを見上げた瞬間、空気は一変した。





「…セフィロスが…やったのか…」

「うそ…」





クラウドの呟きに唖然とした。

あたしたちの目の前にあったもの…それは、ミドガルズオルムの無残な姿。
巨大な蛇が巨木によって串刺しにされている。





「怖るべき力…だな」





見つけたレッドXIIIも圧倒されてるみたいだった。

本当…圧倒的な力だと思う。
思わず背筋が冷たく凍ったような錯覚を感じた。





「大丈夫か?」

「…え?」





茫然と串刺しになったミドガルズオルムを見上げていると、クラウドにそう聞かれた。

大丈夫か、か…。
あたしは頷き、素直に今思った事をクラウドに伝えた。





「あ…うん。ちょっと、ビックリしたかな…。流石、世界的な名声は伊達じゃないっていうか」

「…怖くないか?」





これが今、自分の追ってる相手なのか。
そう考えたら、途方もなく思えて、恐怖も少なからず感じた。

でも、クラウドがそう心配してくれたことが、ちょっと嬉しくて。

首を横に振った。





「うん、ビックリしたけど平気。ありがと、クラウド」

「そうか。でも、…無理はしないでくれ」

「はーい!」





でも、これがセフィロスの仕業ならセフィロスはここを通ったはず。
これが正しい道。ちゃんと追いかけられてるってことだ。

あたしたちは、先に続くミスリルマインと呼ばれる洞窟にへと足を踏み入れた。





「わあー!薄暗いねー!」

「ナマエ…なんで急に嬉しそうなんだ」

「はじめての洞窟だから」

「…前向きだよな、あんた」





踏み入れてからは一変。
るんるーん、と鼻歌まじりにご機嫌になった。

クラウドが微妙な顔してたけど、気にしません。

だって洞窟初体験だよ?なんかわくわくするじゃない?
こう冒険心くすぐられるっていうかね。

…なんて、そう言うのも本音だけど。

クラウドがいてくれるだけで個人的には元気100倍だから、あたし。
単純と言われれば否定しませんけど。ていうか出来ないけど!

とにかく、意気揚々と進んだ。
特に厄介なモンスターもいないし、苦戦を強いられることも何事も無く至って順調。

でも、出口も目前に控えた辺りで…起きました。





「ちょっと待った!」





出口の光が見えて、駆け出そうとしたら…男の声に突然呼び止められた。

足を止めて振り向く。
そして、そこにいた人物にあたしは目を開いた。





「ああ!あんた!」





ぴっしーん!と指さしたのはグラサン強面スキンヘッド。

彼には見覚えがあった。

うん!超見覚えあるね!その強面!
だってめっさコワイもんね!
街ですれ違ったら道譲っちゃいそうだよね!





「俺が誰だかわかるか?」

「タークスだろ?」





彼にクラウドが答えた。

そう。
彼は確か神羅ビルでのエレベーターで追いつめてきた人だ。

いやあ…あの状況のあの強面はかなり迫力あった。
でもあの時は敵陣だったから。今はそこまで怖くない。





「知っているのなら話は早い…。俺達タークスの仕事を説明するのは難しい…」

「人攫いだろ」

「悪意に満ちた言い方をするとそうなる…」

「あ。否定しないんだ」

「しかし今はそれだけではない…」

「と、言うとー?」

「……………。」





続きを促すと彼は黙ってしまった。

……え、何?どうしたの?
なんかちょっと不安になってクラウドを見てみると、クラウドも黙った彼に困惑してるっぽい。レッドXIIIも然り。

本当にどうしたんだろう…?





「先輩!」





両者どうしようか…と悩んでいると、別の方から女の子の声が聞こえてきた。

反射的に目を向けると、そこにいたのは金髪の女の子。

彼女も、身を包んでいるのはスーツだった。

…てことはこの子もタークス?
ていうか今、センパイって言ったか。

とりあえず、はじめての顔だった。





「ルード先輩!喋るの苦手なんだから無理しないで下さい」

「…イリーナ、頼む」





彼女の名前はイリーナと言うらしい。





「私、タークスの新人のイリーナ」





ちなみに強面さんはルードって言うらしい。
…初めて知ったな。

ていうか喋るの苦手って…!
さっき黙り込んだのはそういうことだったのか…。

それを聞いたら、強面なのになんだか急にちょっとカワイく見えた気がした。





「はー、口下手だったんだねー」

「ああ、そうみたいだな」


「ちょっとアンタたち!人が名乗ってるんだから聞きなさいよ!」





ルードについてクラウドと話しているとイリーナに怒られた。

…ああ、そういえばご丁寧に彼女は自己紹介をしてくれていた。
今のでなんか第一印象的にこう、この子もカワイイイメージがついた気がする。





「まったく!レノさんがあんた達にやられてタークスは人手不足。…お陰で私、タークスになれたんだけどね…」





レノが負傷で人手不足。

聞いて思い出したのは七番街の柱での出来事だった。
ああ、バレットの弾、腕に命中してたもんな。

だけどあの爆発は…ひっくり返しても良い思い出とは思えない。
よって、あまり思い出したくはない…かな。





「ま、それはともかく私達の任務はセフィロスの行方を突き止める事。それから、あんた達の邪魔をする事。あ、逆だったか。私達の邪魔してるのはあんた達だもんね」

「…イリーナ。喋りすぎだぞ」





するとまた別の声。
落ち着いてる、そんな印象。

視線を向ければ今度は、肩にかかるくらいの長さの黒髪の男がいた。





「ツォンさん!?」

「我々の任務、彼らに教えてやる必要はない」

「すいません…ツォンさん」





イリーナにツォンと呼ばれたその男は、エレベーターでルードと一緒に追いつめてきた奴だった。

…いやいや、ヘリの上でエアリスを叩いた男だ。
よくも女の子に手を上げたな…。

暴力反対!女の子は大切に!
このスローガンをあいつには是非とも叩きつけてやりたい。

そんな思いで睨みつけてやった。
別に向こう気にしてなさげだったけど。ふん!





「お前達には、別の任務を与えてあった筈だ。行け。定時連絡を欠かすなよ」

「あっ!そうでした!それでは、私とルード先輩はジュノンの港へ向かったセフィロスを追いかけます!」

「…イリーナ。私の言葉の意味がわからなかったようだな」

「あっ!」





ぽろっと、口を滑らせたイリーナにツォンが頭を抱えてた。

…うーーん。

イリーナ、天然なのか…。
カワイイと感じた第一印象、大当たりだったかもしれない。





「…ナマエと言う娘はいるか?」

「おう…?」





そんな風に思っていると、急に口下手のはずのルードがあたしの名前を口にした。

いきなりでつい反応してしまった。
おかげでクラウドに「馬鹿」と小突かれた。…ふ、不覚…。

でもバレたもんは仕方ない。
なんでタークスがあたしを探してるのかは知らないけど、話を聞くしかない。





「ナマエに何の用だ」





低い声でクラウドが言った。
ルードを睨み、庇う様に前に出てくれながら。

…きゅーん。
やっば、結果オーライ!…とか思ってごめんなさい、クラウド!





「…レノから伝言だ」





ルードは言った。
でも発せられたその名前につい顔をしかめてしまった。

レノって…。
あいつ、あたしに何の用だよ。赤髪スーツめ。

あたしが怪訝を抱いていることを知ってか知らずか、ルードは続けた。





「怪我が治ったら新しい武器を見せてやる。惚れるなよ、と…だそうだ」

「……はい?」





きょとん。

伝えられたその言葉に、純粋にその言葉がピッタリの顔をしたと思う。

……なんだろう。
あの人は馬鹿なのか?

なんだその伝言…。まったくもって意味不明。

暇人なんだろうな…きっと。うん。
暇人で解決。





「あっそ、って言っといて」

「……わかった」





特に興味もなく、適当に言うとルードは了解してイリーナと去って行った。
うーん…。なんか律儀だな、ルード。

まあふたりが去ったことで、残るはひとり…。





「さて…エアリスは一緒ではないのか?」

「エアリスに何の用さ!」





エアリスのことを聞いてきたツォンに思わず喧嘩腰になった。

いや、そりゃなるっしょ。
また攫う気!?って話だもん。





「…エアリスは別行動をとっている」





そんなあたしとは対照的にクラウドは落ち着いていた。

それを聞くと、ツォンは静かに目を伏せた。





「そうか…。よろしく伝えておいてくれ」





そして…それだけ。
それだけ言うと、ツォンも去って行った。

……え、あ…それだけなんだ。

…ちょっと拍子抜け。
まあ、危害を加えるつもりが無いならいいけどさ。





「…ジュノンか」





タークスが去った後、クラウドが考えるように呟いた。
それは、さっきイリーナが口を滑らせた地名だ。





「あの娘がセフィロスが向かった、と言っていたな」

「うん。言ってたね」





レッドXIIIと頷く。

クラウドはカームでバレットから受け取ったPHSを取り出した。





「バレット達にも知らせておくか」

「じゃあ次はジュノン?合流する?」

「ああ」

「やった!」





次はジュノン。
しかも皆と合流できる。

決まった行き先を目指し、あたしたちもミスリルマインを後にした。



To be continued


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