白い部屋。
一言で言うなら、そんな感じ。
電子回路のような赤い空間を進み…あたしたちが辿り着いたのは、まるで聖なる雰囲気を感じる真白い場所。
もう、すぐだ。
最後の戦いは…この先にある。
そこにいる誰もが、きっとそう感じてた。
「行くぞ」
真っ直ぐ進むライトに続く。
バルトアンデルスを倒せば、きっと…すべて終わる。
そう信じて、あたしたちは最深部へと足を踏み入れた。
「…玉座」
白い部屋を抜け、踏み入れた先…そこで真っ先に見えたのは玉座だった。
あたしはそれを見て呟き、そして目を細める。
それはきっと…バルトアンデルスの玉座。
金色の歯車のようなものが回り、眩しい光が溢れてる。
あたしたちはその場所を少し高い段差の上から、見下ろすような形で見ていた。
「決戦だな」
「頼むぞ、ヒーロー」
意思を確かめるように呟いたスノウに、ライトは信頼を投げかける。
そして段差を飛び、玉座の前に降り立った。
あたしたちもすぐ、その後を追った。
「…また、クリスタル?」
降り立った拍子の衝撃を和らげるために畳んだ膝を伸ばしてゆっくと立ち上がる。
でも、そうして顔を上げた際、辺りにキラキラとクリスタルが舞っていることに気がついた。
「この光…ヲルバと同じ?」
ヴァニラがそう言いながらクリスタルに手を伸ばす。
…そういえば、此処を目指してるときにエデンでもこの光を見たけど、ヲルバ郷を色のない世界に満ちていたものも…これに似てる気がする。
「消え去る命が光となるのだ」
すると、それに答えるように聞こえてきた声。
一瞬で全員に緊張が走った。
消え去る命…この光は、人の死に関係してる?
そう知ると同時に、神経を研ぎ澄ます。
今の声は…バルトアンデルス。
その瞬間、宙にふたつの大きなクリスタルが現れた。
「ドッジ…!」
「「セラ!!」」
それを目にした瞬間、声を上げたサッズ、ライト、スノウ。
でもそれも無理はない。
現れたクリスタルは、ドッジくんとセラのものだった。
そしてその直後、どこからか飛来した鳥。
鳥はあたしたちに脇を抜け、玉座を舞う。
そして同時に…玉座の上にダイスリーが現れた。
「願いもまた、光と消える」
ダイスリーはそう言いながら、手に持つ杖をカツンと鳴らす。
するとまるで言葉通りに願いを消すかのごとく…ドッジくんのクリスタルを一瞬で粉々に砕け散らせた。
「ドッジ!!」
砕かれた我が子に、サッズが手を伸ばして絶叫する。
そして、そうなると次にどうなるか予期したスノウも叫んだ。
「よせ!!」
スノウが手を伸ばす。
でも、届かない。
ガシャンと音がする。
セラのクリスタルも、砕け散った。
「うあああああああ!!!!」
怒りに震えたスノウは、叫んでダイスリーに突撃する。
だけど虚しく、スノウの体はバリアによって逆に激しく弾き返されてしまった。
皆がそんなスノウに駆け寄る。
あたしも駆け寄った。
でも同時に、なんとなく思った。
「…違う」
ぼそっと呟くと、皆が振り向いた。
なんとなく、わかった。
コイツが考えそうな事だ。
心を揺さぶる、悪趣味な幻。
あたしは睨み、指差した。
「悪趣味。どうせ、偽者のくせに」
「フフフ…」
ダイスリーは不敵に笑う。
それを見たライトはスノウを助け起こし、そして囁いた。
「思い出せ。セラはどこにいる?」
それはアークでスノウ自身が言っていた言葉。
スノウはハッとし、それを思い出したかのようにセラの涙のクリスタルを取り出す。
そこには、いつもの輝きが変わらずにあった。
そして、その根拠を後押しするものがもうひとつ。
「…ほれ。ファルシ好みのまやかしだ」
サッズが手のひらに乗せ見せた黄色い小さな存在。
雛チョコボは元気に飛び跳ね、ピイピイと鳴いた。
まるで「大丈夫だ」って言ってるみたいに。
多分、人よりも勘が鋭いんだろう。
だからあのクリスタルが本物じゃない事をチョコボは見抜いた。
それで全員が確信した。これは、幻だ。
「ナマエさんの言う通りです。心を踏みにじる、偽りの奇跡」
ホープが言う。
するとその時、入ってきた部屋の扉が閉じられた。
それはもう逃げられないということ。でも、逃げる気もない。
全員が怯むことなく、武器を握る。
その光景にダイスリーは高笑いをあげ、そして優しげに囁いた。
「…おかえり。ルシの諸君。人と人、人と魔物、コクーンとパルス…争いは、永遠に終わらない。闘争に苦しむ世界を救うのだ。オーファンを討って、コクーンを滅ぼし…安らかな死を」
立ち上がり、招くように手を差し出す。
でも、それを跳ね除けるようにライトが言った。
「滅びは救いじゃない。コクーンは死なない。皆で誓ったんだ。守るとな!」
ヒュ…っと差し向けたデュアルウェポン。
それに合わせ、他の皆も武器を強く構えた。
揺るがない。
それは全員で、確かめ合った誓いだから。
「…壊れた道具だな。お前たちは」
ダイスリーは呆れたように息をついた。
そして宙に浮かび上がり、あたしたちを見下すように眺めてくる。
その時、あたしはダイスリーと目が合った。
「…ナマエよ。貴様は不可視世界を視たのか」
「…不可視世界?」
「…エトロの使い…。それすらわからぬか」
不可視世界…。
聞きなれない言葉だ。
眉をひそめるあたしに、ダイスリーはふっと息をつく。
するとそこに、黄色のブーメランが目の前を映った。
「…ホープ」
「…守るって決めたから」
庇うように、あたしの前に映ったブーメラン。
それは勿論ホープのものだった。
彼は言ってくれた。
あたしのことを…守りたい、と。
そう…大丈夫。
あたしは、ホープがいれば…きっと前だけ見てられる。
だからキッと…決意を固め、ダイスリーを睨んだ。
ダイスリーはそれ以上、あたしに何も言わなかった。
そして、当初の目的を下し始めた。
「延命は、苦痛しか生まない。ここで耐えても、またいつか誰かが破壊の使命を背負う。真の救いを望むなら、神を導くのだ!」
その叫びと共に、バルトアンデルスの巨体に姿を変える。
膨大なエネルギー。
それを携え、目の前に下りてきた。
はじまる。
最後の戦いが。
「行くぞ!みんな!」
ライトの叫びに皆が答える。
命、未来、希望…。
全てを賭けた戦いの火蓋が今、切って落とされた。
To be continued
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