途方に暮れる。
どうしていいかわからない。
何が何だかわからない。
全部、今の為にある言葉だと思う。
「………。」
ざざーん、という海の音。
太陽が輝いて、海の水をキラキラと照らしている。
綺麗な光景だ。とても。
だけど、あたしは途方に暮れていた。
「ここ…どこなんだよう…」
砂浜にペタン…と座り込んで溜め息をついた。
花火を眺めた綺麗な夜。
驚く事に、あれから二日という時間が経過していた。
まず、あの夜。
花火が終わって人々が去っていく中、あたしは今と同じように茫然と立ち尽くした。
『だから…ここどこなんだって…』
呟きは、光の花の光景に浸る人々のざわめきに掻き消された。
ていうか、その人々を見て絶句した。
金色、銀色の髪…。
緑に、青に…揃いも揃ってカラコンでもいれてるのですか…。
ああ、素敵、カラフルだ…。
ってココは外国か!?
っと…まあ、あたしの住んでる和の国では、なかなかお目に掛かれない色のパレード。
花火も上がってたし、仮装大会か!なにかのお祭りなのか!コスプレですか…!?
混乱しすぎて、ちょっと頭が痛かった。
だけど少し考えて、様子を見て、それは違うという結論に達する。
あの髪も瞳も、みんなみんな天然のものようだ。
それじゃ、やっぱりここは外国なのか。
どうして普通に帰り道を歩いていただけなのにいきなり外国にいるというのだ。
そもそも不法侵入だよ!!!
捕まっちゃうよ?!
…なんというか、自分でも本当に混乱の極み、としか言いようがない…。
だけど外国…という考えも、早々に消えさる事になる。
『ねえ、この間エウリーデで事故があったじゃない?』
『あー、アレね。もう落ち着いてきたんでしょ?』
えうりーで、って何処ですか。
地名が全然わからなくて、やっぱりココは外国なんじゃないのか。
そんな考えも過ることは過った。
でもあたしはわかったのだ。それが地名なのだと。
そう、目の前を歩いて行った金髪美人のお姉さんは、あたしが理解できる言語を操っていた。
「…本当、どこなの…ここ…」
あの花火の夜の事を思い出して、あたしはまた溜め息をついた。
ひとりきりで頼る人もいないあたしは、一先ずその夜、近くにあったベンチに腰掛け一夜を明かした。
これはきっと夢。
目が覚めたらきっと、あたしはいつもの自分のベットで寝ているはずだと信じながら。
だけど状況は何も変わっていなかった。
目が覚めたらまた、そのベンチの上。
途方に暮れつつ、目指したのは街。
だけど人の言葉こそわかれど、正直なにを聞いていいのかもわからない。
「此処どこですか?」なんて迷子の子供じゃあるまいし…。
それに、どうやらお金も使えないみたいだし…。
幸いにも飴やチョコレートとか、いくつかのお菓子を持っていたからなんとか食いつなぐことは出来てるけど…。
…と言いつつ、馬鹿食いするわけにもいかないからお腹は空いてる…。今にも鳴りそうだ。
そんなことを思いながらまた明かした一夜。
ここまでくれば、もう夢だとは思えない。
現実逃避する気力も打ち砕かれて、途方に暮れるしかない。
「…はーあ…」
だからあたしは砂浜に座り込んで、溜め息をついていた。
そのうちお菓子も尽きて、あたしここで死ぬんだろうか…。
いや、言葉が通じることは通じるんだから、なんとか雇って貰うとか…。
でも外国だったらあたし、確実にとっ捕まるよなあ…。
そもそも、これは完全な偏見と言えるけれど、外人さんに話しかけるのって、ちょっと勇気がいるって言うか…。
「大人しくしろ!!」
「…!」
そうやって茫然と海を見つめていると、突然後ろから大声が聞こえた。
何事だ、と慌てて振り向くと、そこら中から悲鳴も聞こえてくる。
人々の視線の先には、怪しい武装をした集団が銃を持って歩いて来ていた。
「PSICOM…!?」
「なんで急にPSICOMが!?」
さ、さいこむ…?
ふためく人々の会話の中で聞こえた単語。
さいこむって何だろう…。
もしかして、あの集団のことだろうか?
「このボーダムは今よりパージされる事が決定しました。皆さんは落ち着いて指示に従ってください!」
武装したうちのひとりが叫んだ。
ぼーだむ…、ぱーじ?
聞きなれない単語に首をひねる。
だけど、かなり深刻な状況に置かれているというのはその場の空気で理解出来た。
……今度は、なにが起こるっていうの…。
頭を抱えてうずくまる人。
泣き崩れる人。
急に絶望の中に立たされたような顔をする人達を、あたしは黙って見つめていた。
To be continued
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