「これが…ファルシ…」
扉をくぐって皆に追いつくと、そこはもう一番奥だった。
目の前には大きな機械のようなもの。
それを見上げて、ホープが呟いた。
互いに繋ぎ合った手。
あたしはそんなホープの横顔を見ながら聞いた。
「これが…そうなの?」
「はい…、…たぶん」
ホープは自信無さ気に頷いた。
これがファルシ…。
ファルシって機械なの…?
あたしは首を傾げながら、それを見上げていた。
「セラはクリスタルになった。あんたが命令した使命を果たしたんだ!だからもういいだろ!セラを元に戻してくれ!」
スノウはさっきの宣言通りファルシに希っていた。
でもファルシの方は、うんともすんとも言わない。
それを見たスノウは、膝をついた。
膝をつき、手もついて…土下座した。
「頼む!セラを助けてくれ!代わりに俺がルシになってもいい!」
懇願。
そんな言葉がぴったりだと思った。
でもやっぱり何も起こらない。
聞く耳なんか持ってないんじゃないかってくらいに。
「馬鹿野郎が!」
その時、そんな叫びと共に、カン!という刃がぶつかる音がした。
ライトニングがそれにしびれを切らしたように剣を抜いたのだ。
「ファルシが人の願いなんか聞くかッ!」
ライトニングは叫びながら剣を繰り返しファルシに振りおろした。
カンッ!カンッ!
金属同士がぶつかる音が何度も響き渡る。
「こいつのせいでパージが起きて、人間同士殺し合いだ。セラはコクーンを守れと言った。こいつを倒せってことだ!」
悲しみと怒り。
それが伝わってくるような気がした。
するとその時…今まで何も起こらなかったのに、変化があった。
「…!」
いきなり、足場が光り出したのだ。
な…なに…?
そう思っていると、ホープの手に力がこもったのを感じた。
皆もうろたえてる。
そして目の前では…ガタガタとファルシが動き出した。
何かが…開いていく。
そして、ふたつの手の様な部位と、本体が姿を現わす。
………凄く嫌な予感。
見たところ、戦闘準備完了…っていうか…。
変な汗が伝うのを背中が感じた。
感じたのは明らかに襲って来そうっていう雰囲気。
しかもファルシが操ったように部屋中が歯車を回し始めた様に動き始めた。
至るところからガタガタと音が聞こえて、あたしは茫然としてた。
「う…うっ…うわああっ…!」
「えっ…うわ!?ちょ、ホープ!?」
それを見て完全に恐れをなしてしまったらしいホープは、あたしの手を握ったまま走り出した。
茫然としてたあたしは急にグンっと引かれて、凄いビックリした。
でもそんなのお構いなしにホープはただ、がむしゃらに突っ切るように出口に向かって走っていく。
「ホープ!!」
「逃げなきゃ…っ!早く逃げるんですよ!…うわっ!?」
「あっ!」
突っ切ろうとしたホープの体は、出口につく前に何かに当たって跳ね返された。
危ない…っ!
あたしは咄嗟に手を差し出して、その体を支えた。
だけど…。
「なに…コレ…」
ホープがぶつかり、跳ね返された何か。
それは、壁だった。
さっきまで、入ってきた時は無かったはずなのに…壁が出来ていた。出口をふさぐ、壁。
つまり…逃がさないって事、か…。
あたしは振り向き、その根源にもう一度目を向けた。
「人間がファルシに勝てると思うか!?」
「セラは私に言い残した!」
「……付き合うぜ…。素人が邪魔じゃなければな!」
そこでは、ライトニング、スノウ、サッズが対峙していた。
金属音に拳、銃声が響いてくる。
ファルシは腕を倒されては再生を繰り返し、しばらく戦いは続いた。
そしてついに、決着。
「…っ!」
決着がついたと思った瞬間、急に周りが光に包まれて何も見えなくなった。
直後に感じたのは浮遊感。
目を開けると、そこはおかしな空間だった。
上も下も、よくわからない。
薄暗い中に、ぽっかり浮かぶのはクリスタルの様なもの。
「ナマエ、さん…っ!」
「…ホープっ」
そんな中でも、ホープと繋いだ手の感覚だけはあった。
他の皆も周りにいるのは見えた。
でもホープの手は、確かに感じられる唯一の頼りで…。
絶対…放すもんか…!
そう決めて、ぎゅっと握る。
ホープも同じことを思ったのか、互いに強く強く。
一方で、耳には鐘の音が響いていた。
この空間のどこかで、鐘が鳴ってる。
それを聞いていると…目の前に、大きな何かが見えた。
…ファルシ…?
心当たりはそれくらいしかない。
そいつを見つめていると、いきなりそいつがあたしたちに向かって何かを放ってきた。
「…やっ…あ!」
それは巻きつく様に、腕や足の自由を奪い、拘束される。
誰かに助けを求めようにも、それは全員。
「ナマエさんっ…!ナマエさんっ!!」
「…っホー、プ…!」
指先だけでも懸命に堪えた。
でもその努力も虚しく、ホープとも手が離れてしまう。
「…うっ…!」
そして、放してしまったことに気を取られてると、首筋に何か衝撃が走った。
何か、刻まれてる様な…そんな感覚。
それが終わると、体に自由が戻った。
でも、浮遊感も消えていって…落ちていくのが感じられる。
「………ぁ…」
だけど落ちていく恐怖はない。
物凄い睡魔に襲われたから。
眠…い…。
まぶたが重くなっていく。
その感覚には耐えられなくて、あたしはすぐに意識を手放した。
……うつろな夢に、溺れながら。
To be continued
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