どうも、悪の手先です

どうやらピーチ城ではパーティーが開かれているらしい。
何もこんな時に……なんてパルフェが異を唱える筈も無く、目撃者を作ってご自分の所業を世間へ大々的にアピールするんですね凄いです!
……としか思っていない。


「クッパ様、私はサポートの為に招待客を装って城へ入り込んでみます。人間なら怪しまれない筈です」

「うむ、そっちは任せたぞ」


我が主の事、きっとド派手に登場して事を成したい筈。
ピーチ姫の守りを固められた場合は自分が打って出る……と、パルフェは意気込んだ。

パルフェは少し城下町の方へ行き、周囲の人々の話にこっそり聞き耳を立てる。
すると、今から城のパーティーに行くんだと話しているキノピオを見付けた。
その者が一人で人通りの少ない道を通るのを見計らい、背後から近付く。


「(油断している相手になら失敗しない。ちょっと眠ってもらうよ)」


完全にノーガード状態のキノピオに背後から魔法を掛け、眠らせる。
倒れた体を植木の影に運び荷物入れを物色する……のだが、招待状らしき物は無い。

普通お城でパーティーなんて、招待状くらいあって然るべきではないのだろうか。
早くしなければ自分が居ないまま事が終わってしまう。


「(行くしかない。行ってみて駄目でも怪しまれる可能性は低い筈……)」


パルフェは人間。
まさかクッパ軍団の仲間だとは思われないだろう。

ピーチ城へ行くと、軽く武装したキノピオ達が入り口の門を守っていた。
止められるかと思ったが、向こうから話し掛けて来る。


「パーティーにいらしたんですね? どうぞ!」

「ザ……」

「ざ?」

「あ、いいえ! ではお邪魔します……」


危うく「ザル警備!」と叫んでしまう所だった。

まともに防御すれば立派な役割を果たしてくれそうな門は、あっけなく開かれて悪の手下を招き入れる。
あまりに簡単に事が運び、もしやこれは罠ではないかとさえ思い始めたパルフェ。

半ば混乱しながら着いたパーティー会場は、豪華絢爛の華やかさで多数の種族・人が思い思いに楽しんでいた。
そして入り口から正面の奥、小さな階段を昇った先の椅子にピーチ姫の姿。


「(居た! まずは何とかして近付かないとね……)」

「あ、あなた」

「はいっ!?」


突然、忙しそうに給仕していたキノピオに声を掛けられ、驚いて声が裏返る。
まだ何も怪しまれるような行動をしていないパルフェは恐る恐る振り返り……。


「……何でしょうか」

「来たばかりの方ですよね? こちらへどうぞ、ピーチ姫にご挨拶をお願いします」

「……」


やっぱり罠?

と、パルフェが疑い全開でかかるのも無理は無い。
どうやってピーチ姫に近付こうかと思った矢先にこれである。
ピーチ姫は何度も拐われているというのに、危機感は無いのだろうか……。

ここで断るのも怪しいので、給仕に案内されるままピーチ姫の許へ向かう。
作法も何も分からないが、このザルっぷりなら堅苦しいものは必要無さそうだ。


「ピーチ姫、初めまして。今日はこんなに楽しいパーティーを開いて下さって有難うございます」

「まあ、新しいお客さまね、初めまして。どうぞゆっくり楽しんで行ってちょうだい、不自由があったら何でも言ってね」

「はい」


これで良い。
後はどさくさに紛れて彼女から近い場所に居れば……。

その時、会場の入り口が開き、一人の男が入って来た。
そちらを見たピーチ姫の顔がぱぁっと明るくなり、思わずパルフェもそちらを見ると。
そこには厄介な人物が。


「ピーチ姫、今日は招待してくれて有難う」

「マリオ! 待ってたわ、こっちへどうぞ」


まずい。
何度もクッパを打ち倒し、何度もキノコ王国を守っているヒーローの登場だ。
彼に近付かれては、ピーチ姫を守られてしまう。


「(クッパ様、早く……!)」


パルフェが心の中で祈りにも似た懇願をした瞬間。


「ガッハッハッハッ!!」


悪役丸出しのベタな、しかしパルフェの待ち望んだ笑い声が辺りに響き渡った。



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