そこへ行く為に

正式にクッパの部下となったパルフェは、彼の為に出来る事を考えていた。
そんな折 彼女に声を掛けたのは、軍団には珍しい頭脳派の魔法使い・カメック。

青いローブで足から頭までをすっぽり覆い、眼鏡をかけた彼がレンズを光らせ……たような気がして、パルフェは思わず足を止めた。


「あなたが新しく軍団に入ったパルフェですね? ……所属や仕事などはもう決まっていますか?」

「いいえ、何も……」

「ふむ……クッパ様の配下になったのなら、何かしら役立って頂かなければ」

「勿論です。クッパ様のお役に立てる事であれば何でもします。何か私に出来る事はありませんか?」


その真っ直ぐな言葉に、カメックは珍しい物を感じる。

クッパ軍団はそれなりにクッパを慕っているものの、ここまで堂々たる忠誠心を持つ者はなかなか居ない。
これは軍団に……と、いうよりクッパに多大な影響を与えるのではないだろうか。


「やる気があるのは結構ですね。あなたから魔力を感じたので声を掛けたのです」

「魔力を……?」

「配属も決まっていないなら丁度良い。ワタシの許で魔法を覚えてみませんか」


現状、パルフェがクッパの為に出来る事が無い。
やっている事は掃除や見回り等の雑用のみだし、そんな事は既に人員が割かれている。

そして軍団入りしてから数日経っており、あれからクッパとロクに会っていなかった。
魔法が使えるようになれば戦力として役に立てる。
ひょっとしたらクッパの隣に立つ機会が増えるかもしれない。


「お願いします、先生!」

「先生……悪くない響きだ」


カメックもこうして真っ直ぐ慕われるのは気分が良い。
クッパに近付く為の“手段”の時点でこんなに気分が良いのだから、“目的”であり想いの丈を向けられているクッパはさぞかし爽快だろう。

それからパルフェはカメックを師として魔法の勉強と修行を始めた。
まだ遠いクッパの隣へ行きたい一心で、みるみるうちに上達して行く。
そんな彼女を間近で見ていたカメックは、パルフェが親から酷い扱いを受けていた理由が何となく分かった。


「(人間で魔法を扱える者など滅多に居ない。パルフェは自覚の無いままに魔法を使い、超常現象のような事を起こしていたのでは……)」


パルフェの周囲で不思議な出来事が起きたり、不気味な雰囲気を漂わせたりしていたのかもしれない。
歳を追う毎に虐待が酷くなったのも、魔力が増えて行った事が関係していそうだ。

それを話してみたが、パルフェは少し暗い表情を見せただけで、すぐあっけらかんとした態度になる。


「この力があったからこそ私はクッパ様に出会えました。今となっては、持っていて良かったとしか」

「しかし、魔力が無ければ親から酷い扱いを受ける事も無かったと思いますよ」

「いいんです。こうなった以上は、何を言おうが過ぎた事じゃないですか。私にとっては、クッパ様に出会わせてくれた大事な力です」


本当に気にしていなさそうなので、カメックはそれ以上何も言わなかった。
気にしていない……と、言うよりは、クッパに出会えた嬉しさの方が勝っているといった所だろうか。

それに、クッパ軍団でパルフェに酷い扱いをする者など一人も居ない。
多少、超常現象が起きても不気味な雰囲気を漂わせても、そんなの慣れたものだろう。
きちんと魔法の勉強をすれば、無意識に魔法を使ってしまう事も無くなる筈だ。

パルフェの素性を聞いた時、カメックは彼女を憐れに思い世話を焼こうとしていた。
元々そんなつもりだったのに、予想外に真っ直ぐな性根を見せられて慕われた事により、パルフェが彼お気に入りの弟子となるまで大した時間は掛かっていない。


「先生、今日も宜しくお願いします!」

「ええ、頑張りましょう」


クッパの隣に並ぶ事を目指し、パルフェは今日も魔法の修行に励んだ。



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