奇奇怪怪 | ナノ
てるてるぼうず


「やぁ、こんにちは」
 照々坊主が話しかけてきた。
「はい、こんにちは」
「今日は雨ですね」
「そうですね」
 間。
「あれ」
 僕は首を傾げた。
「雨が降ってますよ、照々坊主さん」
「いいえ、私は市村です」
「雨が降ってますよ、市村さん」

 空を見上げる。
 止みそうにない。
「お父さん、お父さん」
 駆けて来る、赤い服の小さな女の子。
「雨がふってるよ」
 父を見上げる、黒い瞳。
 両手で持った大ぶりの鋏。
「娘さんですか」
 市村さんを見上げる。
「お兄ちゃん、だぁれ?」
 僕を見上げる。
「ええ、娘です」
 微笑みながら市村さん。
「葬儀屋の者です」
 薄笑いで僕。
「葬儀屋さん、葬儀屋さん」
 無邪気に娘さん。
「雨がふってるの」
「うん、そうだね」
「お父さんはね、てるてるぼうずなの」
「うん、そうだね」
「でもね、はれてないの」
「うん、そうだね」

「お父さん、お父さん」






 雨がふってるよ






「葬儀屋さん、葬儀屋さん」
「なぁに」
「“ソレ”捨てておいて」



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