『…やっとついた…』


あれから、動こうとしない綱手を無理やり引っ張って、記憶をさかのぼり歩いた。
空には昨日よりきれいな星たちがきらめいている。
綱手と観賞に浸りたかったが、そういうわけにもいかない。
後ろには疲れた顔の綱手がいる。


((最愛の人ってだれだろう…。
私って、綱手様の弟子なくせに、なにもしらない…))


私が綱手様の過去を知っていたなら、もっと状況は変わっていたかもしれない。
そんな話はしたこともなかったし、気になったこともなかった。
もっとも、昔の話になると、綱手も話をしたくないようなふいんきだったのだけれど。


「おぉ…遅かったのぉ…」

『!!…自来也様…』


ぼんやりと照らす提灯が並ぶ、夜の商店街。
そこに足を踏み入れた途端、自来也の声が聞こえた。
顔をあげてみると、大好きなあの笑顔。
助かった、そう思った。


「二人して悲しそうな顔だのぉ」

『…』


振り返る。
綱手は地面に視線を落としていて、声など聞こえていないようだった。
自来也の視線が綱手をぐっさりと貫く。
何かを探る様な視線だった。


『…』
((どうか…自来也様、
感づいて…))


あと頼れるのは自来也様しかいない。
綱手様の親友の自来也様なら止められるかもしれない。
それは淡い期待で、けれどこれしかほかに道がない。


「綱手、久しぶりに飲みに行かんか?
…姫は今日泊まる宿を見つけてこい」

「…」

『はい!』


意味ありげに自来也はうなずいた。
もしかしたら、自来也はもうとっくに気づいているのかもしれない。
まかせろ、そう、いっている気がした。


『自来也様、綱手様をお願いします』


もうこれは最後の賭けだ。
自来也にかけるしかない。
一礼する姫をみて、うんうん、とうなずく自来也。


((自来也様でも、どうにもならなかったときはどうすればいいんだろう…))


最悪の事態が頭によぎって、けれど頭を振って、追い出した。
前を行く自来也と綱手の後姿を見て、お願いしますと、祈った。
今はそれが私にできる精一杯のことだ。

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