「私に何の用だ」


ぶすっと、した顔で自来也に問う。
園児が駄々をこねているような顔に、自来也は笑みがこぼれた。


「いや…久しぶりに会ったんだから、ゆっくり酒でも飲もうと思ってのぉ」

「…」


あいかわらず綱手の晴れぬ顔つきに、眉をしかめる自来也。
いつもは酒が目の前に出ると、誰よりも早く手を伸ばすのに。
…やはりおかしい。


「大蛇丸か?」

「!!!」


とたんに表情が変わる。
やはりな…。
こいつがこんなに思いつめるということは、ダンと、縄木のことだ。
そして、それを逆手にとるやつ…。
もう、大蛇丸しかいない。


「また、やつに会いに行くつもりか?」

「…おまえには関係ない」

「いや、ある。
やつがどんな取引を持ちかけてきたかは知らんがのぉ…」


そこで一息つく。
隣をちらとみると、盃に酒を入れてもてあそぶ綱手がいた。


「結論を急ぐなよ。
それと……火影たちは、乱世を治め、里を反映させるという夢に命をかけた!
それはお前にもわかるだろう?」

「……説教はそれぐらいにしろ!!」

「…」


綱手が机を容赦なく叩いて、立ち上がった。
机の上のものは、当然飛び上がって、ひっくり返る。
杯の中身が自来也の服にかかった。
しかし、そんなことにかまっているひまはなかった。
今にも店を飛び出しそうな綱手。
とりあえず、気を静めなければ。


「…まぁ、すわれ。
今日は説教をしにきたんじゃない。
姫のことだ」


少しの沈黙の後、綱手はおとなしく腰をおろした。
何事にもやる気がないように感じる。


「しばらく見ないうちに大きくなったのぉ
母親によく似て、きれいだ」

「…そうだったか、な」


青白いくらいの真っ白な肌に、深い紫の長い髪。
着物を着こなしていて、笑うとそれはとてもきれいだった。


「姫を拾ってもう9年か。
…会うたびにチャクラが普通の忍のものではなくなっていくが…
どうだ、姫の能力は?」

「……。
とにかく頭がいいよ、姫は。
医療単語なんて一日で覚えてしまったし。
なにより、三ノ宮一族の血のせいだろうけど医療忍術は桁はずれだ。
あの年であんなに医療忍術を操るやつを私は見たことがない」


ふぅ、と綱手は息をついた。
手に頭の体重をかけて、酒を一気に飲み干した。
すこし気分が乗ってきた証拠だ。


「………とにかく術の覚えが早すぎる。
もう、すべての医療忍術を使いこなせるはずだ」

「!
確か医療忍術を教え始めたのは7歳の時じゃなかったか?」

「あぁ。
10の時にはもう一人前になっていた。
3年で…だ」

「…おまえでも医療忍術をマスターするのに12年かかった。
それを…3年で…か」

「みてて恐ろしい限りさ。
本当に、医療忍術を教えてよかったのかと、不安になるくらいにね」

「……やはりあの三ノ宮一族の力は恐ろしいのぉ…。
宗家の血を引いているからなおさらか。
………大蛇丸が狙ったのも無理ない」

「…それは昔の話だ。
それに、姫はああやって、私の隣で守ってやってる。
いくら大蛇丸でも手出しは出来まいよ」

「…そうじゃのぉ……。
そうか、姫の一族は大蛇丸に……」

「それ以上は言うな」

「…」

「…」


それから二人が会話をすることはなかった。
綱手はもう酒を遠慮なしに飲んでいたし、少し落ち着きが出てきた気がする。
自来也は少し安堵して、綱手と酒を楽しんだ。
青白い月の下で、綱手の手の中が白く光っていたのも気づかずに。

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