例えばの事

例えばの事


なかなか今日は眠れなかった。
胸騒ぎがして眠れない。何時もならもうぐっすり寝ている時間。
気晴らしにふと、家の外に出ると、欠けた月がおどろおどろしくて怖かった。

「こんな時間に外に出るんじゃないよ」

急に声をかけてきたのは店の主人のシャム。
こんな時間に起きているから朝起きれないのはだれですか…。しかも、こんなに寒いのによくもまぁそんなに薄着で……

「外に出ちゃ悪い?」
「いいや、良いんだけど……。君一人だと誘拐されて売ってしまわれそうなんだが…」
「……」
「…一応、アマングなのを忘れないでほしい。」

まだこの地区では夜な夜な人身売買の業者がうろついている。アマングを見つけたら即、誘拐。こんなの常識。僕なんか見つかったら終わり。

「ゆ、誘拐されたらシャムはお荷物がなくなって気軽になるからいいんじゃないの?」
「はははっそんな事を言わないでよ…。君が居なくなったら店が何時まで経っても開かなくなってしまうよ。」
「それだけの事?」
「もちろん寂しいし、楽しくなくなってしまう」
「……」
「拾ってやったんだぞ。と言えばそこまでかもしれない。そしたら君は僕の言いなりになっただろうね。けど違うから……」
「……僕は必要?」

シャムは少し考えてから口に出した。

「君が必要なのかは解らないな。居なくても僕はずっと一人だったし…。」
「……僕はシャムが必要だ。


 



今日も僕は、何時もの様に朝から店へ出る。