思い出の中


今日の夜は、なかなか眠りに付けなかった。
暗くおんぼろの部屋の中で一人、毛布に包まっていたスピカはなんだか胸騒ぎがして寝付けなかった。

「なんだか怖くて寝れないよ。」

人形に話しかけると、ニコッと笑って机に置いてあった飴を一粒持ってきてくれた。
まるで優しいお母さんみたいで涙がでた。

「ありがとう。」

またニコッと笑う。
笑い顔は、シャムにそっくりで惚れ惚れする。

「君は、誰かに似ている筈なんだけど、思い出したくないなぁ」

貰った飴をコロッと口に含むと安心した。

「おいしい…」

そうして、気付いた時にはもう朝で、何時もと同じに薄暗かった。
隣で寝っていた人形の寝顔を見て、始めて誰に似ているか解った気がした。

さぁ、シャムを起こしてこようかな…