とうらぶ公開用 | ナノ
603.

十七時を回る前に、真白がともえを車で民宿まで送り届けた。
そもそも真白と蜂須賀が出かけていたのは買い出しのためであり、買い物前に海岸に立ち寄ったところでともえ達に出会ったのだ。清磨は別荘で休ませてもらっているため、ともえ一人で民宿へ戻った。真白は夕食も別荘で一緒に取ることを提案したが、民宿に食事をお願いしていることもあり、ともえは戻ることを決めた。
民宿の駐車場に車を停め、ともえが車から降りる。真白は運転席の窓を開けた。

「部屋もたくさん余っているから、泊っていって良いのに」
「直江壮に泊まっていると伝えたので、ちゃんと泊まりたいんです。送ってくれてありがとうございます」
「そっか。明日はどうする?迎えに来られるよ」
「バスで行きます。十時までには着けるように向かいます」
「分かった。清磨は私達に任せて。お昼ご飯は一緒に食べましょ。また明日ね、ともえちゃん」
「また明日、よろしくお願いします」

真白は窓を閉めると、再びエンジンをかける。ともえに手を振り、車を発進させる。助手席に乗っていた蜂須賀も真白と同じようにともえに手を振った。ともえは真白の車が見えなくなるまで見送った。

もともと二人分の食事を用意していたが、別荘で真白の電話を借りて一名分に減らしてもらった。オーナー夫妻に簡単に事情を説明すると、彼らは真白達が滞在している別荘をよく知っていた。民宿だけでなく仕出し料理の注文も受けているため、何度か手配したことがあるらしい。直前キャンセルのため返金は出来ないが、今夜使わなかった食材は別のタイミグで出してくれるとのことだった。心遣いに感謝し、ともえは出されたお膳を遺さず食べた。
二十二時になる頃には、ともえは布団を敷いて部屋の明かりを落とした。今夜はとても晴れているため、カーテンの後ろから月明りが部屋に差し込んできた。すぐに目が慣れてきて、ともえは空っぽのままの部屋の半分を見つめる。清磨の分の布団は畳まれたままだ。最初に部屋に通された時は若干狭いとすら感じたのに今はとても広く感じられた。瞳を閉じると、エアコンの音と一緒に窓の外から波の音が聞こえる。ざー、ざー、と聞こえてくる波の音は、まるで雨の夜のようだと思いながらともえは目を閉じた。



翌朝、ともえは目覚まし時計より先に目を醒ました。カーテンの遮光性が低いため、部屋の中はすっかり明るくなっている。余分な現金と電源を落としたままのスマホが部屋の金庫に入ったままであることを確認して、ともえは顔を洗いに部屋の外へ出た。
オーナー夫妻がバスの時刻表と路線図を持っていたため、ともえは真白に教えてもらったバス停までの道のりを頭に入れてから出発した。この地域のバスは観光客向けではなく地域住民の生活の足となっている。そのため、朝と夕方は本数が多いが、通学・通勤時間を過ぎると一時間に一本程度になる。乗り遅れないように早めにバス停へ向かい、バスの到着を待った。
バス停から別荘までは坂道を登って五分程度だ。海よりも高い場所にあるためか、民宿周辺よりも風が爽やかで気持ちが良い。木陰を渡るようにして歩き、ともえは別荘の敷地内に入る。敷地の入り口を正面にして右が駐車場、左が広い庭だ。玄関に続く石畳を踏んだ直後、扉が開いて真白と秋田がともえを出迎えた。

「おはようございます、真白さん」
「おはよう。清磨はまだ休んでいるよ。おばあ様がともえちゃんとちょっと話したいんだって。良いかな?」
「はい」

真白のおばあ様ということは、この別荘の主だ。彼女は今、清磨が休んでいる部屋に居ると言う。ともえが緊張した面持ちで居ると、真白は「怖くないから安心して」と笑って言った。
部屋の前に着くと、真白が三回扉をノックした。穏やかな女性の声で「どうぞ」と返ってくる。ともえと真白が入室すると、清磨が眠っているベッドの傍らで着物姿の老婦人が椅子に座っていた。老婦人の膝の上には栞が挟まれた文庫本があり、ともえの顔を見ると老婦人は眼鏡を外して椅子から立ち上がった。ともえは自然と背筋が伸び、自分から挨拶をした。

「初めまして。平ともえです」
「初めまして。花蔵塔子と申します。真白と友成から話は聞いていますよ。暑かったでしょう、そちらにお掛けになって。真白、冷たい飲み物を持って来て」
「は〜い」

真白が一度その場を外し、ともえは真白の背中を見送ってから椅子に座った。
塔子が動くと、ふわりと優しいお香の匂いがすることにともえは気づいた。秋の晴れた日に香ってくる花の香りによく似ていた。八月も半ばを過ぎ、ここまで歩く道の空が済んだ水色だったことを思い出した。
口を開いたのは塔子の方からだった。

「昨夜は休めたかしら。直江壮さんにお世話になっているのよね?」
「はい。ちゃんとご飯も食べて、寝てきました」
「それなら良かった。お昼はここで食べていかれると良いわ。真白も友成も、私の歌仙もそのつもりで準備しているのよ」
「ありがとうございます」
「おばあ様、ともえちゃん。麦茶を持って来たよ」

真白が二人分のグラスを持って部屋に入ってきた。デスクの上にお盆を置いて、塔子とともえにグラスを渡す。真白は用事が終わると部屋をすぐに出て行った。塔子がグラスに口を付けたのを見て、ともえも麦茶を飲む。想像していたよりも喉が渇いており、一気にグラスの半分以上を飲み干してしまった。

「清磨の回復も順調ですよ。あと半日もすれば起きると思います」
「本当ですか!?良かった……。私一人では何も出来なかったんです。本当に、ありがとうございます!」
「それから、昨夜に薩摩国第一一一八号本丸の審神者から連絡がありました。あなたと清磨の様子について尋ねられましたので、薩摩国警備局にお伝えした内容と同じ、清磨の容態と、真白と友成が見たあなたの様子をお伝えしましたよ」

塔子の言葉を聞いて、ともえは息をするのを忘れそうになった。
清磨と自分のことを尋ねた清峰は、どんな言葉や声で塔子を話したのだろう。心配していましたか――とは到底聞けなかった。ともえが考えていることは塔子も察するところであったが、塔子はあえてそれ以上答えなかった。
ともえの視線が下げられたのを見て、塔子はひとつ思いついた。

「私の家のお話をしても良いですか」
「え?はい……。お願いします」
「私の家は審神者という職の成り立ちに関わっています。だから、どのような理由であろうと困っている刀剣男士が居れば手を差し伸べるのが我が家の大切な決まりなのです。あなたが無理矢理清磨を連れ出したのなら、昨日の時点で真白と友成があなたを薩摩国警備局員の下へ連れて行ったでしょう。でも、あなたは違った。私はこれでも五十年以上審神者をしていますからね、顔を見れば分かります」

友成と同じ薄茶色の塔子の瞳にともえが映る。この人の前では嘘は吐けない、とともえの直感が言っている。静かな部屋の中にぴりっとした緊張感が生まれる。ともえの背筋が更に伸びたのを見て、塔子はともえを真っ直ぐ見ると目を細めた。

「あなた達が何のためにここまで来たのかは私達は問いません。一般の常識であれば可笑しな話ですが、私達にとっての最優先は刀剣男士なのです。あなたを守れるのが清磨だけであるように、清磨を守れるのもあなただけなのです。どうぞご安全にね。あなた達の旅路が良いものでありますように」

塔子と話しながら、ともえは昨日の秋田との会話を思い出した。
お互いを守れるのはお互いだけ。心を受け取れるのは、その心を差し出された人だけ。
ともえは清磨を見る。清磨の顔色は昨日よりも血色が良い。あと半日もすれば起きる、という言葉が現実味を帯びる。
部屋の外から、塔子を呼ぶ声が聞こえた。扉を開けたのは太鼓鐘貞宗だった。太鼓鐘の大きな瞳がともえを見ると、彼はにこっと笑って会釈した。塔子はグラスと文庫本を持って椅子から立ち上がる。

「洋食はお好き?」
「好きです」
「歌仙が張り切って昼食を作っているの。楽しみにしていてね」

そう残すと、塔子は太鼓鐘と一緒に部屋を後にした。清磨と二人だけになりたい気持ちもあったので、塔子の気遣いがありがたかった。
窓から入ってきた風がカーテンを揺らす。ベージュ色のカーテンには布地に刺繍で柄が入っている。部屋の明かりは点いていないが、窓から差し込んでくる太陽の光だけで十分明るかった。網戸を開けているため、外に居る真白と蜂須賀の声や廊下を歩いている誰かの足音が微かに聞こえてくる。薄い膜が張ったように遠くから聞こえてくるせいで、まるでこの部屋だけが隔離されたようにも思える。
この世界にたった二人ぼっちだ――ともえはそう思った。


清磨が眠っている部屋には時計が置いてなかったが、十一時を過ぎた頃に真白がともえを呼びに来た。昼食の準備を手伝って欲しいということだったので、ともえは前のめりで頷いて真白について行く。部屋の中が暑くなってしまわないように、扉を開けて風の通り道を作ってから真白と庭へ向かった。
庭では蜂須賀と友成、友成の近侍である陸奥守を加えた三人が大きなタープテントを設置していた。からっと湿度も低く、晴天のため外で食べようという話になったのだ。テーブルは秋田と今剣が運ぶというので、ともえは人数分の椅子を運び出すのを手伝い、二十分もすれば昼食会場の準備が整った。椅子を数えたともえは、皿とシルバーをテーブルに並べている真白に尋ねた。

「塔子さんはここでは食べないんですか?」
「おばあ様は自分の部屋で食べるんだって。ああ見えてもまだまだ現役で忙しくて、慌ただしくなっちゃうから別々に食べようってことになったの。心配しないでね」

ともえはほっと胸を撫で下す。そうこうしている間に昼食が出来上がったようで、皿に綺麗に盛り付けられた料理を全員で手分けして外へ運んだ。
昼食に参加するのは、真白と蜂須賀と秋田、友成と陸奥守と今剣、そしてともえの七人だ。塔子の刀剣男士である歌仙と太鼓鐘は、塔子と一緒に昼食を取っている。
自宅兼本丸での食事は仕出し妖精が準備することが多いため、自然と和食のメニューが多かった。普段食べる料理が和食よりのためなのか、刀剣男士の舌の好みなのか、趣味で料理をする者達の得意料理の多くが和食だったことを思い出す。
目の前に並んでいる歌仙特製の昼食はレストランで出てくる料理のようだった。冷たいポタージュはガラスの器に盛られ、肉と香味野菜の焼き料理には綺麗なジュレがかかっている。魚介類を使ったサラダには複数のソースが添えられて、籠に入ったたくさんのパンはしっかり温かい。たくさんあるからね、と言って真白はともえの取り皿に山盛りに載せる。横で見ていた蜂須賀が「食べ切れなかったら言うんだよ」とともえに耳打ちした。

「おにくがとってもやわらかいです!」
「美味いのう、歌仙はまぁた腕を上げたんじゃな」
「うん、美味しい。いつもこれを食べているなんて、おばあ様が羨ましいね」
「主、秋田。ソースはどれにする?」
「私はたまねぎにする。これ、秋田と蜂須賀のバター回すね」
「僕はにんじんにします!蜂須賀さんの分のパンも取っておきますね」

目の前で繰り広げられるやり取りに、ともえは手を止めて見入ってしまう。ともえがまだ一口も食べていないことに真白が気づいた。

「苦手なものあった?」
「量が多かったのではないかな?すまないね。主は少々はしゃぎ気味で」
「うちでは真白ちゃんが一番下だからね」
「蜂須賀も友成にいさんも変な事言わないで!」

真白が顔を真っ赤にして二人に言う。ともえはスプーンを持つとポタージュから食べ始めた。真白が感想を求める顔をしていたので、ともえは「美味しいです」と答える。嬉しそうに顔を綻ばせた真白を見て、可愛い人だなとともえは思った。

「一にいさん……私のもう一人の従兄も毎年来ているんだけど、今年は来られなくて。でも食材はいつもの量を注文しちゃったんだ。余らせるのも勿体ないし、いっぱい食べてね」
「そうそう。清磨が起きた時、君に元気が無いと心配させちゃうよ」
「そんなに元気が無い顔をしていますか?」

ともえの問いに、真白と友成の二人が動きを揃えて頷いた。
朝洗顔した時はいつもと変わらないように見えたのに。確かに、清磨が倒れてから俯くことが多かったかもしれないとともえは思う。あと半日もすれば清磨は起きるのだ。清磨に心配をさせたくはない。
友成の隣で陸奥守と今剣がにかっと歯を見せて笑う。二振が口角を人差し指で上げる仕草を見せたので、ともえもそれを真似した。

「一君も来られれば良かったのにね。今年はいつもよりからっとして気持ち良いのに」
「今期は任務も続いてるし、大役を任されたって言ってたよね」
「僕が電話した時、ちょっと嬉しそうに話してたよ」
「そっかあ。あのね、一にいさんはすごいんだよ。面と向かって言うと怒られちゃうんだけど、とにかく格好良いんだよ。私もああいう人になりたい」

まるで自分のことのように、とても誇らしげに真白が話す。その様子に友成が優しい眼差しを向けていた。

「真白ちゃん、僕は?」
「友成にいさんももちろん格好いいよ」
「真白さん達はとても仲良しなんですね」
「僕達は年が離れているからね。とはいえずっと仲良しだったわけじゃない。色々あって、今があるんだよ」

友成が言う。ともえの問いに答えなかった真白は、ともえと目が合うと眉を下げて笑った。

「私は一にいさんも山城国に居て欲しかったんだけど、にいさんが自分で決めたことだから。薩摩国所属になるために難しい試験も合格して、任務もたくさん任されてる。そういう姿ってすごく格好良いよね」
「格好いいです。……私にはお父さんみたいな才能も無いし、やりたいことも分からないから将来のことは何も考えてなかったです」
「まだ高校生でしょ?いつかやりたいことが見つかったら、その時に全力で頑張れば良いんだよ」
「将来のことって、そんな感じで良いんですか?」
「良いんだよ。自分の選択に責任を取れるのは自分だけだ。納得して決めなくちゃ」
「友成にいさんの言う通り。私は審神者という道を選んだけど、自分で決めたから頑張れる」

真白は言葉を飾ることなく答えた。
――納得のできないことなら、するべきではないからね。一年と二カ月前の清磨との会話を、ともえは思い出した。
あと半日もすれば清磨は起きる。起きた時、ともえは決断をしなければならない。


真白達との昼食を終え、ともえは清磨が眠る部屋へ戻っていた。午後になったため窓からの光量が変わり、昼前よりも部屋の中は薄暗くなっていた。
ともえに出来ることは今は何も無い。ただじっと、清磨の目が覚めるのを椅子に座って待つ。
塔子はあと半日だと言ったが、起きるのがもっと遅くなったらどうしようかと考えた。明日以降、それとも一週間後、一ヵ月。清磨が起きなければ“約束”は果たされない。二人ぼっちの旅は、どこにも辿り着くことが出来ずに終わる。
早く起きて欲しい。清磨と話がしたい。ともえは清磨の事を何も知らない。何も知らずに終わるのだけは嫌だと、ともえは膝の上で拳を握っていた。
時刻が十七時に差し掛かろうとした時、清磨が身じろぎをした。布団と衣服が擦れる音を聞いたともえは勢いよく椅子から立ち上がる。身体を無理矢理揺らすのは躊躇われたため、ともえはベッドの縁に手を突いて清磨の顔を覗き込んだ。
ゆるゆると瞼が動き、薄紫色の瞳にともえが映り込む。ともえの名前を口にしようとした清磨だったが、喉が掠れて声が出なかった。ともえはそれに気づくと、蜂須賀が用意してくれたペットボトルの水とストローを手に取る。キャップを外し、ストローを入れて清磨の口に近づけた。こくこくと清磨が水を飲んでいく。清磨がストローを口から離すと、ともえはペットボトルとストローをテーブルの上に戻した。

「具合はどう?」
「けほん。大丈夫だよ。迷惑をかけてしまったね。ここはどこだい?」
「清磨を助けてくれた蜂須賀と、その審神者さんのおばあ様の別荘だよ」
「そうか……お礼を言わないとだね」
「あのね清磨。お父さん達に、私達がここに居ることを知られちゃった」

清磨が力を入れて上半身を起こす。ともえは清磨が倒れてから今までの約一日で起こった出来事を全て伝えた。清磨は相槌を打ちながらともえの話を聞き、申し訳なさそうに目を伏せた。

「ごめんね。僕のせいで悲しい想いをさせてしまった。この旅はもう終わりかな……」

残念だ。清磨がぽつりと呟いたのをともえは聞き逃さなかった。空港で過ごした夜に飲み込んでしまったことを聞くのは今しかないと思った。

「清磨。教えて欲しいことがある」
「何だい?」
「どうして本丸を出るって言ってくれたの。約束をしてくれたの」

清磨の瞳が大きく見開く。ともえは息が止まりそうになりながら続けた。

「清磨が倒れてから、真白さん達とたくさん話をした。そうしたらね、私は清磨のことを何も知らなかったんだって初めて気づいたんだ。清磨は私のそばに居てくれたのにね。だから今更遅いかもしれないけれど……清磨のことをちゃんと知りたいよ」

ともえの鼻の頭がつんと痛くなる。目が潤むのを、拳に力を入れて必死に堪えた。
今にも泣き出しそうなともえの顔を見て、清磨はしばらく逡巡する。掛布団を外し、ベッドの縁に腰かけた清磨は静かに返した。

「上手に話せないかもしれないよ」
「大丈夫」
「こいつは何を言ってるんだろうと思うかもしれないよ」
「清磨の口から、清磨の言葉で聞きたいの」
「長くなるかもしれないから夜に話しても良いかな」
「分かった。真白さん達にお礼を言ってから、宿へ戻ろう」

ともえが立ち上がり、清磨へ手を差し出す。清磨は数秒だけ迷った後、ともえの手を取って立ち上がった。
清磨が昨日着ていた洋服は、蜂須賀と秋田が綺麗に洗濯してくれていた。清磨が着替え終わり、ともえと二人で挨拶をしに行く。塔子は昼食後に出かけたそうで、直接礼を言うことは叶わなかった。真白が民宿まで送り届けることを申し出てくれたが、ともえと清磨はその心だけもらうことにした。

「本当にお世話になりました!」
「達者でのう」
「おきをつけて!」
「二人とも体調には気を付けてね」
「蜂須賀虎徹。君が居なかったら、僕もひい様ももっと大変な状況になっていたと思う。感謝してもしきれない」
「気にしないでくれ。たまたま居合わせて良かったよ」
「またいつか、遊びに来てください」

ともえちゃん、と真白が声をかける。真白は小さく畳まれたメモをともえの手に握らせた。

「もし話がしたくなったらいつでも連絡してね。ご安全に、良い旅を」
「ありがとうございます、真白さん。行ってきます」

ともえと清磨は深く頭を下げてから、真白達に背を向ける。吹いてくる風が二人の背中を優しく押していた。

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