そんなわけで、燃えているクーがやっと来客があったことに気付いた。実は先程、ルーとクーの同級生であるエステルと、ユーリとバイト先が同じだったことで次第に交流が深まって仲良くなった年上のお姉さまであるジュディス。そして兄のアッシュの婚約者でもあり、自分達の幼馴染でもあるナタリアがやってきたのだ。勿論この広いキッチンを借りてチョコを作るために。

「わわ、ナタリアっ!!変なもの混ぜないでよぉっ!!」
「変なものとは失礼な!これは体にいいと聞きましたのよ!」
「いや、そりゃ料理に使えばいいけど……チョコには絶対にマズイよぉ〜」

何故かニンニクを取り出してチョコに混ぜようとしているナタリアを、アニスが全力で止めている。一人だけでは何をしでかすか分からないので、今はティアも見張り役となってしまった。

「あらあら、大変ね。なら、こちらはこちらで始めましょう」
「ジュディス…あまり大変そうに聞こえません……」

エステルの言葉も何のその。嘘はつけないの、と言うがジュディスならにっこりと笑って堂々と嘘を言っても普通に信じてしまいそうだ。

まあ、それはともかくとして。エステルはトリュフを。クーは初心者でも簡単に作れるものとしてガトーショコラを。本当はワンホールのチョコケーキとかにしたかったようだ。彼氏を見返してやるのだとやる気に満ちていたが、スポンジから作るのは初心者には少々難しいものがあるからとジュディスやアニスからアドバイスを受けてガトーショコラに変更されたのだ。ルー自身は医者であるジェイドが、急患が入ったりして忙しい合間につまめるようにと冷めても美味しいクッキーを選んだ。

そんな理由を話すとエステルが何故かいいなあと呟いたのだ。

「ルーはいつもラブラブな彼氏で羨ましいです…」
「え!?そ、そうかな?エステルだってフレンと仲いいじゃんか」
「そうでしょうか?今も名前を呼び捨てにしてくれません。それに向こうの方が年上なのに、いつまでも敬語なんです」

令嬢であるエステルは、父親同士が上司と部下であるフレンと恋人になったのはいいものの、親に色々と言われているのだろう真面目なフレンとのことで悩んでいる。今もまだ、遠慮してよそよそしい態度でいられるのが不満なのだ。フレンの性格を考えると、婚約でもしないと態度を改めないような気がしないでもない。

「それに素直になるって難しいです。だから、ルーが羨ましいです」

ニッコリと微笑まれても、ルー自身だって自分が素直な人間だとは思えない。まあ、いつだったかクーに、ジェイドへと向かっていくルーはご主人様を待っていた忠犬みたいだな。なんて言われてしまったけど。

「…確かに素直に想うのも想われるのも羨ましいな…」

ポツリとクーが呟いた。どこか寂しそうに、切なさそうに。どこか泣いてしまうのではないかと思うような表情で。ルーやエステル、ジュディスがじっとクーを見つめていたのに気付いて我に返ったのか。クーは慌てて声を上げる。

「べ、別にっ!ユーリがいきなり素直になったら気持ちわりぃけどな!」

そう言いながらも、やはりどこか寂しそうだ。恋人という関係になっても、ユーリのクーへの意地悪は続いているらしい。以前あまり苛めるなと怒ったのだが、彼はどこか困ったような顔で言った。ついつい可愛くてな、と。どう見てもあれは好きな子を苛める子供ですね、とジェイドは楽しげに笑っていたけど。男はそういうものだと言っていたけど、そうなのだろうか。よく分からない。クーに何て声をかけていいか分からなかったけど、ジュディスがどこか面白げに告げる。

「あら、大丈夫よ。ユーリは分かりやすいもの。だってクーに近付く者は、みんな一度は必ず牽制されているのよ」

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