「つーか、ここってどの辺なんだ?」
「―――それをお前が知る必要はない」
「は?誰―――」

背後から知らない声が聞こえてきて、振り向こうとしたら頭に衝撃が走る。殴られたのだと気付くのが遅かった。遠のいていく意識の中、立っていた男がフッと笑う

「奴らの弱点を入手した。これで、我々レジスタンスの勝利は決定だ!!」

あははと高笑いするレジスタンスと、自分を呼ぶミュウの声を最後にルークは気を失った。頼む、ミュウ逃げろ。そう言葉にしたいのに声が出ない。意識を失ったルークをレジスタンスはミュウと共に連れ去るのだった


身体に強い衝撃が走り、痛みで目が覚めた。自分を呼ぶミュウが、泣きながら喜んでいた。ここはどこだと辺りを見渡すと、誰かが自分を見下ろしているのに気付いた

「目が覚めたか?ここは、我々レジスタンスの本拠地だ。お前はあの死霊使い(ネクロマンサー)の弱点みたいだからな。お前を餌に、あいつらをおびきだしてやる」

大人しくしていろ長生きしたいならな、と言い残して奴は出て行った。埃っぽく、あまり使われていない物置みたいな部屋で、ルークは両手両足を、ミュウは手を縛られていた

「ミュウ、無事か?悪い、油断した」
「大丈夫ですの。ミュウよりも、ご主人様の方が怪我をしているですの!ぼく、治癒術持ってないから治してあげれないですの……ごめんなさいですの」
「知ってるっつーの。つーか、んなことで謝るんじゃねって。ここは……人が通れるような出入口は一つだけだな。あれは……オレ通れねーだろうし」

見上げてみると小さな通気口があった。ミュウなら通れるだろうが、ルークは絶対に無理だ。どんなに頑張っても頭も入らないだろう

「ご主人様、ミュウなら通れるですの!あそこを出て、助けてもらえるようにお願いしてくるですの!」
「いや、そりゃお前なら入れるだろうけど……あの中何があるか分からないんだぜ?」
「大丈夫ですの!ミュウ、昔より火が吹けるですの。ご主人様のお役に立つですの!!」

目をキラキラ輝かせながら言うミュウに、ルークは渋々頷いた。もぞもぞと動く小さなミュウの手に縛られたロープを口で解き、自分のも時間をかかったが解いてもらった。火を吹けば早いかもしれないが、熱いのは嫌だし、何より騒動でドアの前にいるだろう見張りに気付かれたくはない

「ミュウ、敵に見つかったらすぐに逃げろよ」
「はいですの。ぼく、頑張るですの」

ミュウはやる気満々で通気口へと入っていった。あの自信満々なやる気はどこから来るのだろうか。いや、今はそんなことよりも自分も出来ることをしなくてはいけない。ミュウ一人に任せるわけにはいかないのだ

剣を奪われたらいしが、この部屋にはまだ使えそうな剣が落ちている。それを拾い、ドアへと近付いていく。なるべく騒動を起こさないようにするには、誰かが入ってきてくれればいいのだけど

「―――おい、メシ……」

そう思っていると、いきなりドアが開いて入ってきた男と間近で目が合う。仕方がないと入ってきた男が口を開ける前に、鞘で気絶させた。ごめんな、と内心謝罪をしながら、部屋を出て行く

ここがどこだかさっぱり分からないが、とりあえず進んでいくと大きな扉があった。中に入ると、そこには、大量にあるルークや仲間達の資料と、見覚えがある顔が写っていた。その写真を手にすると、やはり間違いないと確信する

「これ……モース?じゃあ、隣に写っている青年は誰だ……?」

モースと親しげに写っている青年は、何だかモースと似ているような気がした。まさか、と写真をマジマジと見つめる。レジスタンスのリーダーは、正体を誰も知らない。メンバーからは誰一人として口にしなく、目撃者も証拠もなくてその存在を掴むことが出来ていないと聞いた

「―――よく、写っているでしょ?それ、僕の父さんなんですよ」

背後から、聞こえた声。振り向くと、写真の青年が少し大人になって目の前にいた。口元は笑っているが、目は笑っていない。不気味な表情からは、何を考えているかさっぱり読めない

「初めまして、と言った方がいいですかね。何故人質がここにいるか分かりませんが、大人しくしていてもらえませんか?あなたは、ジェイド少将、ナタリア殿下、その他の英雄達のお知り合いなのでしょう?あなたを必死に追いかけて、こう呼んでいたらしいじゃないですか。―――ルーク、と」
「…………」
「おかしいですね、ルーク子爵はすでに帰ってきたことが先日世界に発表されました。ナタリア殿下と再度婚約を決めて、バチカルの城に住まわれている。そう、当然燃えるような紅い髪と、翠色の瞳を持って……」

彼の問いには、一切答えない。ルークがただ黙っていることを、気に障ったのか。彼はムッとした顔で近付いてきた

「あなたは、誰ですか?ルーク・フォン・ファブレのレプリカ、でしょうか?」

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