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「な、何だよお前!?」
「いいからさっさと答えろ。(オレだって時間がないんだぞ。ティアやガイならともかく、ジェイドに見つかったらと思ったら、身体が震えるんだっつーの)本拠地は、どこにある?」
誰が教えるかと、奴は剣を抜いた。だが、その動きはド素人も同然でルークの敵ではなかった。仕方ないと、ルークは奥義を放って奴を吹っ飛ばした。圧倒的な実力の差に、奴は震えあがってルークを見る
「怪我したくなかったら、さっさと言え」
「クソッ!!強い……っ!だが、誰が言うものか!!」
地面に伏した奴は、ルークが見つけたあの音機関と同じものを手にすると、それを地面に向かって投げる。すると白い煙が辺りを包み、周りを見えなくする
「は?何だよ、これ!?ゲホッ、ゲホッ!」
「あははは、ざまーみろ!!俺達には、これがあるんだ!じゃーな、間抜けヤロー!……ぎゃあっ!?」
煙幕を使ってまで逃げた奴は、後方から降ってきた何かに当たって再び地面に伏した。何が起きたとやっと辺りが見えるようになってから、気付く。奴に当たったのは、槍だと
(……まさか……)
あぁ、物凄く嫌な予感がする。恐る恐る飛んできた方向である、後方を振り向くとそれはそれは恐ろしい笑顔でこちらに近付いてくるジェイドがいた
「みゅう?じぇ―――」
道具袋から顔を出すミュウの口を塞ぎ、再び押し込む。ジェイドの名前を知るチーグルなんて、ミュウしかいない。頼むから何も喋るなと小声で言うも、果たして通じたかどうか。いや、そんなことよりもここから逃げなくてはと、ルークは青ざめた顔のままゆっくりと後退する
「―――本当に、ルークなのか?」
すると、すでに後ろにはガイとティアが呆然と見ながら立っていた。すでに退路を封じられていたらしい。いや、さすがと言うべきだろか
「無言、ですか。答えるつもりがないのなら、じっくりと身体に聞いてみましょうかねぇ」
いくら髪の色が変わったとはいえ、声は変わっていない。それによく顔を見られたらルークだと知られてしまう。何も喋るわけにはいかなかった
「ルーク、お願い答えて。帰ってきたの?どうして、逃げようとするの?私達に……会いたくなかったから?」
「ここのことを教えてくれたのは、おまえだよな?あの字は、間違いなくおまえのだった。なぁ、ルーク。責めているわけじゃない。俺達は、おまえが帰ってくるのをずっと待っていたんだ。ただ、おまえの口から知りたい。答えてくれ、ルーク」
ティア、ガイ。二人の切実な願いに、決断したはずの心が揺れる。そう、ジェイドからのとてつもなく伝わる圧迫感と殺気にも似たオーラがなければ、素直に喋っていたかもしれない
「……ご主人様?」
「え、ミュウ!?」
ルークを心配してか、ミュウがまた顔を出した。それに敏感に気付いたのはティアだ。ルークはとっさにあの音機関を取り出して地面に投げる。すると、やはり同じものだったのか。煙幕が辺りを包んだ。ルークは即座に逃亡する
「ゲホッ、何だ、これは!?」
ガイの戸惑った声に、ルークは内心謝罪をしながら走る。すると、顔面すれすれを通って何かが吹っ飛んできた
それが、地面に刺さる
「―――――何度も逃がすと思いますか、ルーク?」
恐ろしいくらい低いジェイドの声。そう、先程吹っ飛んできたのは槍である。あと少し顔がずれていたら確実に刺さっていただろう。怖い、と思いながらも走るしかなかった。今捕まったら何をされるか分かったもんじゃない
「戦慄の戒めよ、死霊使い(ネクロマンサー)の名の下に具現せよ。ミステックゲージ!」
「は?いきなり、秘奥義かよ!?おわっ!?」
全くもって容赦ないジェイドからの攻撃に、ルークはひたすら逃げた。が、必死過ぎて気付かなかったルークは、それなりの高さがある崖下へと落ちてしまった
「―――ってぇ!あいつ、オレを殺す気か!?」
いくら何でもいきなり秘奥義を使う奴がいるか、とルークは思った。だが、崖下に落っこちたことにより、何とか逃げられたらしい
「……何か、ここまでバレてんなら逃げなくてもいいような気がしてきた……」
今更ながら自分がここまで必死に逃げているのは何故なんだろうと、そんな疑問が出てきてしまう。だが、ティア達はともかく、ジェイドに会うのが辛いのだ。忘れたと思っていてもやはり好きなのだ。あんなに容赦なくて、鬼畜な奴のどこがいいんだと聞かれたら答えづらいけど
「ご主人様、大丈夫ですの?」
「ん?あぁ、平気平気。木に当たって落ちたから衝撃が和らいだんだろうな。地面が葉っぱだらけだったのも良かったぜ。これが石ばっかだったらゾッとするけどな」
確実に二度目の死を迎えていただろう。ルークは立ち上がり、痛いところはないかと動かす。だが、多少の打ち身はあったものの、重傷なものはない。良かったと一安心をする
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