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「―――それを聞いてどうする?お前、何でこんな組織を作ったんだ?モースの息子ってことは、預言の復活か?」
「僕の質問には答えてくれないのですか?」
「答える義理はねぇよ。そっちだって、答えるつもりはないだろ?」
「ははは、これは失礼。あなたを見くびっていました。ですが、先程の質問は、一つだけお答えしましょう。レジスタンスを作ったのは、預言の復活と……父の復讐ですよ!!ルーク・フォン・ファブレ!!例えレプリカだろうと、その血を許さないっ!!」

彼は、腰にある剣を抜きルークへと襲い掛かってくる。先程拾った剣で応戦するも、これはあまり持ちそうにないなと早めの決着が必要だった

キン、と金属同士がぶつかり合う音が、部屋中に響く。思ったよりも広い部屋での戦闘は、激しさを増していった

「中々やりますね。さすがは、あれのレプリカだ」
「決めつけるんじゃねぇつーの。オレがレプリカだなんて、言った覚えはねぇぞ!!」

ま、その通りだけどさ。とは、言わない。奴の言う通りだけど、今のルークはレプリカの身体ではない。ローレライに新しく作られた身体は、第七音素だけのものではないからだ

互いの息が乱れてきた頃、ルークの持っていた剣が折れてしまった

「……っ、くそっ!!」

やっぱり、急ごしらえの剣ではダメだったか。奴は勝利を確信したのか、ニヤリと口端を上げた。ルークには、まだ超振動がある。だけど、それをどうやって使う。下手をしたらこの部屋ごと吹き飛んでしまう恐れがあるのだ。あまり乱発するわけにはいかない

どうする、どうする。必死に考えるも打開策なんか生まれない

「僕の、勝ちだっ!!」

剣を大きく振り上げてくる奴に、ルークは一か八かと手に第七音素を集中させた

その時だった

「それは、どうでしょうねぇ」

聞き覚えがある声がしたかと思ったら、奴はルークの目の前から吹っ飛んだ。これは、タービュランスだ。ジェイドがよく使っていたのを何度も見たことがある

「ルーク!!無事!?」
「みゅうう、ご主人様ぁ!!」

中に、続々と仲間達が入ってくる。ジェイドだけでなく、ティアやミュウまでもがいる。ぴょこぴょこ跳ねながら、ミュウが近付いてきた

「……お前ら、どうして?」
「入口まで来ていた私達を、ミュウが呼びに来てくれたの。間に合って良かったわ、ルーク。ケガはしていない?」
「あ、あぁ、それは平気だけど……」

普通に話しかけてくるティアに、半ば呆然としながら答える。すると、騒ぎに気が付いたレジスタンスの残党達が集まってきた。勿論、まだ戦える奴も立ち上がる

「おい」
「え?」

いつの間にか隣に来ていたアッシュが、ローレライの剣を持っていた。ぶっきらぼうにそれを差し出してくるので、条件反射で受け取ってしまう

「戦えないとは言わせねぇぞ。ルーク、さっさと抜け」
「……アッシュ……?」
「話は後だ。勿論、行けるよな?」
「……当然だろ」

アッシュが、ローレライの剣を奪い返してくれていたのか。こんな穏やかな会話は初めてで、戸惑ってしまうけど。これはこれでいいのかもしれない。こんな会話をあの頃もしたかったのだ

レジスタンスと戦闘は、勿論ルーク達の圧勝であった。リーダーがモースの息子であることに全員驚いていたが、同時に納得もした。預言に固執しているところが、同じだからである

「クソッ!!何て、強さだ……っ!だが、いつか後悔しますよ。あなた方は、預言を捨てたことをいつか必ず悔やむ未来がくるでしょう!その時に動いても、もう手遅れになるのです」

あはは、と狂ったように笑う彼に、ルークは近付いた

「預言は、未来の可能性の一つ。それをどう選ぶかは、自分で決めることだ。星に定められていることが、絶対じゃない。未来は変えられるんだ。オレ達が、自分で変えなきゃ未来は変わらない。もう、預言に頼るのはやめて、自分の頭で考えろ。お前も、いい加減に預言から離れろ。そしたら、もっと世界が広く見えるようになる」

奴は、ただ黙って聞いて目を閉じた。微かにそんなのは有り得ないと呟いた気がしたが、はっきりとは聞こえなかった。意識を失った彼に、伝わったかどうかは分からなかった

「―――ルーク」

ただ彼を黙って見つめていたルークに、近付いてきたジェイドが手を振り上げた。バシンッと音が鳴ったかと思ったら、左頬に痛みが走った。殴られたのだと、時間差で気付く

「―――っ!」
「お、おい、ジェイド!?」

呆然とするルークの隣からガイが庇うように来るが、アッシュに止められていた。ジェイドの気迫に、近付いてはならないと思ったのだろう

「無茶な行動は、いい加減に止めなさい。―――少しは、私達を信じて下さい。例え姿が変わっても、貴方は貴方です。ルークの本質は、何も変わりません。だから……もう一度貴方に会えて、嬉しいですよ、ルーク」

お帰り、と言ってくれるジェイドの表情は、とても穏やかなものだった

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