無事家についた俺らは、仲間入りしたカヤのお披露目も兼ねてみんなと同じ部屋で夕飯を食べた。カヤがメシ食うときはどうすんのかと見守ってたら、普通に出されたフーズと木の実を食べてた。ギャラドスって、陸上でも案外平気でいられるんだな。安心したわ。自分の分を食べたカヤは、満足げに唸ってボールに戻っていった。

荷物の最終チェックは寝る前でいっか。俺はそう思い直して食休み。雫と遊ぶスピネルを見ながら、席でぼんやりしていた。

「おら、飛沫。こりゃ俺らからの餞別だ。大事に使えよー」

目の前に座る親父が、小さな箱を滑らせてきた。片手に乗るほどの大きさで、シンプルなリボンが掛けられている。

「なにこれ。開けてい?」

包みをほどくと、出てきたのは青いポケギア。今俺が使ってるやつと違って、色んな機能が追加された最新モデルだ。



「日中雫と買いに行ってん。防水防塵機能付だから、旅するにもちょうどえぇと思うよ?」

隣のお袋も、そう言って笑っている。なるほど、サンキューな。とりあえず電源を入れて初期設定。今までのアドレス帳を赤外線で引き継いで、自分のアドレスを変えてみる。機種変のメールを一斉送信したら完了だ。

「お、カメラもついてんじゃん。…なあなぁ、一枚写真撮っていい?画質も確かめてみたいしー」

とりあえず雫を手招きすると、すぐにスピネルをかかえてやって来た。うん、後で送ってやるからそこ座れ。

いい感じに家族の配置が決まってから、シャッターを切る。俺のまっさらなデータフォルダには、一番最初にこの家族写真が保存された。





「おっし、んじゃまーいってくっから!親父たちも元気でなっ」

「たまには電話とかメールしてよね?気を付けて行ってらっしゃい!」

只今の時刻AM9:12。俺は家族に見送られながら家を出た。とりあえずは、川沿いに歩いて水道に出るか。腰のボールが揺れていたから、スピネルを外に出してやる。足元で大きく伸びをすると、楽しそうに駆け出した。

「ちょい待ちスピネル!あんましはしゃぐと転ぶからなー!?」

俺の言葉なんか聞いちゃいねーよ。スピネルは草むらに入って遊んでる。思わず苦笑いになるけど、そんなコイツも可愛いとか思う俺は既に親バカなのかもな。


焦ったようなスピネルの鳴き声に、ハッと我に返る。慌てて草むらをかき分けていくと、一触即発な感じのスピネルとコラッタがいた。大方、スピネルがコラッタに突っ込んで行ったんだろう。あーあー、コラッタ超怒ってるよ。スピネルも負けずににらみ返してるけど。


「…よっしゃ、初バトルといってみよーぜ?スピネル!」

やる気満々なスピネルを見て、俺も不敵に笑い返す。一旦足元に戻ってきたこいつと一緒に、改めてコラッタを見据えた。

「スピネル、まずは鳴き声っ」

「カゲカゲー!」

スピネルはコラッタに向かいあう。鳴き声で相手が軽くよろめいたところで一気に距離を詰めた。体当たりでダメージを負ったがまだ行けそうだ。

「スピネルそのまま!ゼロ距離からの引っ掻くだ!」

数秒の空白の後で、ゆっくり倒れていくコラッタとハイテンションで飛び跳ねているスピネルが見えた。奴らの側まで行って、思いっきり撫でてやる。

「そーだ、あんたもありがとな!お陰で楽しかったわ」

目を覚ましたコラッタにも手を差し出すと、ちょこまか擦り寄ってきた。…うん、癒しだ。初バトルも白星で飾れたし、幸先いい旅になりそうだ!俺とスピネルは、再び上機嫌で歩き出した。




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