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「畑中透ですー、好きなものは猫と可愛い女の子ですけど猫は性別問いません。よろしくー」

俺の番がきて適当に自己紹介をする。
遠山の自己紹介が終わってからは順調に進んでいた。
俺の席は窓際から2列目、後ろから2番目だ。
遠山の席は3列目後ろから3番目。
俺からは遠山の頬と形のいい耳がよく見える。
何故か小さくなってずっとうつむいたままの彼は、見れば見るほど小さくて細い。
遠山を観察しているうちに全員分の自己紹介が終わったようで、諸岡が黒板に何かを書き始めた。
「花係」と書かれたそれに教室内に先ほどまでとは違うざわめきが起こるのを、諸岡が手を叩いて制する。

「花壇に花を植える係をこのクラスから2名出す事になってるから、誰か挙手してくれ」

花壇の世話係なんて小学生以来ご無沙汰だ。
高2にもなって誰もやりたがらないのは分かりきった事だった。
当然誰の手も上がらない。
諸岡もあずさちゃんも困ったように眉を下げて顔を見合わせた時だった。

「遠山くんがいいと思いまーす」

教室の後方。
廊下側の男子が気だるい声で言うと、口々に同じ声があがる。
諸岡が期待に満ちた顔で遠山を見ると、コクりと小さく頷いた。

「じゃあ、もう一人だな」

満足そうに笑いながら諸岡が再び教室内を見渡すも、挙手をする奴は現れない。

「ねえ、それって何植えてもいいの?」

俺が声を上げると、遠山が身体を揺らして俺を見た。

「ん? ああ、いいぞ」
「んじゃあ俺やるー」

手を挙げてそう言うと、係が決まって上機嫌になったらしい諸岡が黒板に俺と遠山の名前を書いていく。
遠山の方を見ると、目を丸くしてじっと俺を見ていた。
ニッコリと笑ってやると顔を真っ赤にして目を伏せた後、ぎこちなく笑った。

何だかちょっぴり可愛いかもしれない。


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