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「で? アンタ逃げてきたわけだ?」

軽快なゲームの音だけが鳴る部屋でベットに臥せったままだった俺に薫が呆れたように言った。

「告白したんだか分かんないわね」
「うっせーなぁ、俺だって分かんないっての」

勢いよく身体を起こして薫を睨みつけるように言えば、薫は気にした風もなくゲームに夢中になっている。

虹にキスをした昼休み。
固まって動かない虹を残して逃げてしまった。
ついでに放課後も係の仕事なんかそっちのけで帰ってきてしまったのだ。

「怖かったんだよ」

拒絶されるのが、怖かった。
あのキレイな顔が不快に歪むところなんか見たくない。

「まぁ…虹くんも怖いだろうねぇ。万年発情男にキスされたとあっちゃあ。係も一緒とか、アタシなら学校辞めるね」
「そこまで言う!?」
「てかさぁ、逃げてくるって何なの? 係の仕事までほっぽらかして。普通にしてれば良かったでしょう」

嫌われたくないんなら、と続けた薫に何も言い返せなかった。
嫌われたとしても自業自得だ。
男にキスされて嬉しいわけない。
その上、自分から言い出した係まで逃げた。

溜め息を吐きながら枕に顔を埋めると、薫がゲームを止めて俺の隣に座った。
背中を撫でられながら、何だか泣きたくなった。

「謝ってきなよ、まずはそれからだよ」

薫の言葉にゆっくりとベットから立ち上がって、部屋を出る。

ベットに放り出した携帯が光っているのも知らずに。





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