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ホームセンターでしゃがみ込んで真剣に花を選ぶ虹を見ていた。
プランターに植える花は今植えてあるのと同じものがいいだろうと、もう決まって台車に乗せたのだけど広い中庭の花壇に植える花が決まらなかった。

「どうする…?」
「んー…てか、台車の花俺ら運べる?」
「あ……」

虹は全く考えていなかったらしい。
とりあえず虹をそのまま残して店員に学校に運んでもらえないか話をつけてくる事にした。

周りを見回しながらようやく店員を見つけてお願いすると快く引き受けてくれて、ついでに配達の時に金を支払う事まで了承してくれた。
俺はまた虹のところに戻って虹の隣にしゃがみ込む。
困ったように笑うあたり、まだ決まってないようだ。

辺りを見回すと、ちょうどひとつ向こうの棚に野菜と書かれているのを見つけた。

「ねぇ、野菜植えちゃダメなの?」
「え、野菜……?」
「じいちゃん先生、野菜植えてたんでしょ?」

以前虹に聞いた話を思い出してそう言うと、虹がコクリと頷く。
虹の手をひいてそこに行くと、色んな種類の苗があった。

「どうせ中庭なんかあんま人こないんだからさ、食べれるモンでも良くない?」

俺がじいちゃん先生が野菜を植えていた事すら知らなかったくらいだ。
俺らが同じ事をしたって何もおかしくないだろうと思う。

「どうせ夏休みも世話しなきゃだろ? こんくらいのご褒美なきゃやってらんねーよ」
「そう、かな?」
「諸岡も何でも植えていいっつってたしさー、ね?」

笑ってみせると、虹も釣られたのか笑って頷いてくれた。
とりあえず俺は目の前にあったミニトマトの苗を1株手に取ってみせた。
これなら小学生の時に育てた記憶があるし、大丈夫かもしれない。
それに食べてもおいしい。

「トマト…?」
「嫌い? フルーツトマトとかあるよ?」
「嫌いじゃないよ…、好き」

そっと俺からトマトの苗を受け取って、やんわり微笑む虹から目を逸らした。

(いや、トマトが好きなんだって!)

今日の俺はおかしい。
虹相手にドキドキしていつもの調子が出ない。
とりあえずミニトマトの苗を数種類台車につんで、またプランター用の花を増やした。
これだけあれば足りるだろうって店員に配達をお願いして、今日は帰る事にした。






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