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ヴァニラにキスする
2017/02/25 09:54
【ヴァニラにキスすること】


「……………………」

う……ウワァ〜〜〜めっちゃ嫌そう〜〜〜!!!手紙を見せつつ事情を説明すれば、ヴァニラさんはそれはもう渋い表情を浮かべた。私に関わりたくないのだろうけれど、DIO様からは何かあった時は協力するようお達しが出ているので、この表情なのだろう。
私だって相手を指定されていなければ、絶対にヴァニラさんは選ばない。だって怖いんだもん!!見て!!この心底嫌そうな顔!!!

手紙の内容は伝えてしまった後だけれど、命令が命令だし、ヴァニラさんはめっちゃ嫌そうだし、今回は諦めようかな…。ほろりと涙を零しそうになっていた時だった。ヴァニラさんが少し身を屈め、突然、私の方に顔を寄せる。

「ヒエッ……!?」
「…………早くしろ」

眉間に深い皺を刻んだまま、ヴァニラさんが言う。早くしろ、とは。目をパチパチ瞬かせていると、ヴァニラさんは小さく舌打ちを零し、ずいと更に顔を寄せて来た。
これはまさか、キスの話か?思わず後退りしそうになるのを堪え、代わりに、恐る恐る一歩踏み出す。

「……あ、う、…し、失礼します……」

もし協力して貰えるのなら手の甲とか指先とか、比較的差し障りのない部分にさせて貰おうかと思っていた。普通に恥ずかしいからだ。
とはいえ、ヴァニラさんはこうしてわざわざ屈んでくれている訳だし、それを無視して手を借りるのも何だか忍びない。湧き上がって来る恥ずかしさを堪え、私は意を決して、ヴァニラさんの頬に唇を軽く押し付けた。

「…………え、と、…ありがとうございました……」
「………フン」

何となく気まずい空気の中、ポン、という軽い破裂音。私が慌ててヴァニラさんの傍から離れ、手紙が消えたと分かった瞬間、ヴァニラさんは無言のままでくるりと踵を返し、さっさと廊下の奥へ歩いて行ってしまったのだった。


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