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ジョセフと腕相撲する
2017/02/25 09:55
【ジョセフと腕相撲すること】

「ふ、ふんぬぬぬ……ッ!!!」
「ほれほれ、どうした?もうちょっとじゃぞ〜」
「どッ、どこが、もうちょっと、なんですかッ…!!」

踏ん張りながら途切れ途切れにそう言えば、ジョセフさんは悪戯っ子のように楽しげに笑う。正攻法で腕相撲をしたところで秒殺されるのがオチなので、ジョセフさんは私にハンデをくれた。ジョセフさんは利き手でない方の手を使い、私は両手で腕相撲をしている。
しかし、両手を使い全力で挑んでも、ジョセフさんの手はピクリとも動かない。それどころか、ジョセフさんは苦しげな表情一つする事なく、余裕綽々といった表情で私の様子を観察している。ハンデとは一体何だったのか。

もう諦めたいところだけれど、簡単に諦められない理由がある。何故なら、この腕相撲には罰ゲームが掛かっているからだ。これは王様の命令とは関係ない。負けた方が勝った方の言う事を一つ聞く、という罰ゲームをつけようと、腕相撲の前にジョセフさんが提案したのである。
大きなハンデを付けて貰ったので了承してしまったのだが、今となっては後悔している。この調子では勝てる気がしない。

「さて、何を罰ゲームにしようかの〜ッ?頬にキスして貰うか、ハグして貰うか、おッ、そうじゃ、明日の朝モーニングコールして貰うのも良いのう!」
「う、ううう〜ッ…!?」

ニヤニヤと笑みを浮かべながら、ジョセフさんが腕に力を籠めたのが分かり、私は思わず呻き声を上げる。こ、これはまずい!こうなれば最後の手段だ、と、私は息を吸い込んだ。

「じょ、…承太郎くんッ!!」
「えッ!?こ、こら待たんか!承太郎に助けを求めるのはずるいぞ!」
「……ジジイ。ハンデを付けても自分が勝てると分かっていて罰ゲームを付けんのもずるいと思うぜ」
「にゃにい〜ッ!?」

後ろで煙草をふかしながら見ていた承太郎くんに声をかければ、ジョセフさんが目に見えて慌て出す。「やれやれだぜ…」とお決まりの台詞を呟いた承太郎くんは、『星の白金』を出すと、私の両手に重ねるようにその手を置いた。
『星の白金』の口元がニッと弧を描いたのを見て、ジョセフさんの表情が一転して引きつる。形勢逆転だ!もう一度息を吸い込んで、私は『星の白金』と共に、手に力を籠めたのだった。



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