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形兆と手繋ぎ散歩
2017/02/25 09:57
【形兆と手を繋いで散歩すること】

心底嫌そうな表情をしている形兆さんに、胃がキリキリと痛くなるのを感じながら、「……か、帰ります…」と声を上げて帰ろうとする。しかし、それより早く、ぱしっと手首を掴まれた。ぎょっとして動きを止めている間に、手首を掴んでいた手がするっと下に下りて来て、私の左手は形兆さんの大きな手に包まれた。

「あっ、え、…け、形兆さんッ…!?」
「……早く済ませるぞ」

目を瞬く私を余所に、形兆さんは私の手を引いて、さっさと歩き出した。てっきり「俺を巻き込むんじゃあねぇ」と断られるかと思っていたので、驚きだ。
無言のまま道を歩いていると、気まずいやら恥ずかしいやらでそわそわとしてしまう。左側を歩く形兆さんと、繋いでいる手に意識が行ってしまって、どう話をすれば良いか分からない。

どうしたものかな、と悩んでいると、突然、形兆さんに繋いでいる手を引かれた。バランスを崩して転びそうになった私を、形兆さんが受け止めてくれる。

「…す、すみません…!」
「……お前、こっち側に来い」
「えッ?……は、はい…」

形兆さんがパッと私の手を離す。言われた通りに形兆さんと位置を交換し、彼の左側に立ったところで、再び手を繋がれた。
それとほぼ同時、背後からやって来た車が形兆さんの横を通る。そこで漸く、私は自分が車道側に立っていた事に気が付いた。先程形兆さんが私の手を引いたのは、この道を通ろうとしている車を後ろに見付けたからなのだろう。

何も考えずに歩いていたけれど、よくよく考えてみれば、形兆さんは歩調も私に合わせてくれている。言葉にこそ出さないけれど、色々と気遣ってくれているらしい。優しいなあ。

「……形兆さん、ありがとうございます」
「……何の事だ」

お礼を述べれば、つい、と顔を逸らされてしまう。私は密かに笑いながら、形兆さんと暫く散歩を楽しんだのだった。


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