コンビニに愛は売ってなくとも蕎麦は売っています、多分



どうして私の周りはこう、変わった奴というか、馬鹿というか一癖も二癖もある奴ばかりなのだろうか。
一人は世界をぶっ壊すとかなんとかほざいて、過激派攘夷志士とか騒がれていて。
一人は糖尿寸前の甘味狂いで、商売だかボランティアだかよくわからないものを鉄の町・かぶき町で営んでいて。
そしてもう一人は、奇妙な地球外生命体とともに穏健派攘夷志士として活動している、らしい。
そういえばあの血濡れた日々の中出会った奴も、アハハハハハハと四六時中笑っていてこいつ大丈夫かと思ったことがある。



もう一度、問う。
何故私の周りはこんな奴らばかりなのでしょうか、先生。



「それはぬしも一癖も二癖もある馬鹿だからだろう」



「人の心に勝手に侵入しないでくれる、ヅラ。不法侵入罪で訴えるわよ」



「大体葱ラーなどというのはぬし以外に聞いたことも見たこともない。あんなに葱を山程かけたら、蕎麦屋の主人が困るでしょうが!」



「うわあ良かったねー、希少な葱ラーの一人に出会えて。つーわけで帰ってくんない、ここあんたの家じゃないの。コンビニ。convenient store。一般のお客様のご迷惑になるでしょうが!」



大体葱というのは健康に良いのだ。栄養もあるのだ、良く知らないけれど。
兎にも角にも、この男だけには変わっているなどと言われたくない。



「詩音、俺は蕎麦が食べたいのだが」



「そちらの蕎麦なら498円になりまーす」



「友人から金を取るのか!?お母さんはそんな娘に育てた覚えはありません!」



「私だって長髪の穏健派攘夷志士を名乗るフリーターをお母さんに持った覚えはないわよ」



「大体俺は機械でつくった心無い蕎麦じゃなく手打ち希望だ」



「蕎麦屋行けや」



幸いにも、店内に客はいない。深夜のコンビニに来る物好きなどそう多くはないのだ、この江戸でも。
詩音はレジにぼうっと立っているのもつまらなくなり、店内をくるくると歩きはじめた。
シフトの交代まで、あと15分程。



「なあ詩音、」



「何?」



「蕎麦が食べたいのだが」



「こんな真夜中に蕎麦屋が開いてる訳ないでしょ」



「彼女が欲しいのだが」



「ふーん、生憎私にはあんたに紹介するような電波な友達はいないけどね」



全く、この男は。
遠回しにも程がある。



「コンビニのケーキと私の家の蕎麦でいいなら、この後付き合ってあげる」



「・・・・・・!」



「店の裏で待ってて、すぐ行くから」



丁度交代で出てきたバイト仲間に後を頼み、店の奥に引っこんだ。
さっさと着替えを済ませ、冷蔵庫から大きな箱を取り出す。



(・・・意地っ張りで遠回しなのは、私の方か)



昼間わざわざ行列のできるケーキ屋で買ったホールケーキを抱え、店を出る。
桂は詩音の手の箱に、怪訝そうな表情を浮かべた。



「それは何だ、詩音」



「別にー。ほら、早く行こう」



手を繋ぐでもなく、甘い言葉を交わすのでもなく、ただ歩幅を合わせて歩く。
恋人同士なんかじゃない、只の幼馴染みの二人にはこれが一番心地いい。



「誕生日おめでとう、小太郎」



「ああ、ありがとう」



遠回しラブゲーム


(早く降参して、すきって言ってよ!)



*************
いや、もう何か色々すみません・・・!
お祝いする気持ちは腐る程あります!
小太郎Happybirthday!だいすきだよ!(遅)





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